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大胆



「「「「おーー‼︎」」」」



晩御飯は初芽の聞いていた通り、黄金色の出汁の入った鍋が一人一人の前に置かれた



多種の野菜に、白い筋が見た目を引き立てるお肉。キノコに白い魚の切り身と盛り沢山なラインナップだ



そして刺身にホカホカの白米……旅館のご飯として最高だ



そしてトランプによって決まった席順に全員座った。由布子さんが湊の隣に。初芽は前に座り蘭さんは斜めの位置に座った



それと布団での寝る位置だが、蘭さんがババ抜きで対戦して見事勝利を飾った



「じゃあ由布子さん。いただきますする前に、皆んなに一言頂戴!」

「ええっ⁉︎」



皆からの期待の眼差しが由布子さんに向けられた



「あ……うぅ……そ、その……か、乾杯っ‼︎」



由布子さんはコップも持っていない手を掲げた



「「「乾杯ー!」」」



全員由布子さんに合わせて、コップを持たずに手を上に掲げたのだった



♢ ♢ ♢



「美味いな。これ」



料理を純粋に楽しむ湊。その横で3人は火花を散らしていた



と、ここで仕掛けたのは初芽だ



初芽は米粒を一粒摘み、そのまま湊のほっぺに向けて投げつけた



そして見事に湊のほっぺに付いた



隣に座っていた蘭さんは、(いくら米粒とはいえ、あのスピードで付いた米になぜ気づかないの⁉︎)なんて考えていそうな顔をしていた



だが、初芽はそれをも考慮していた。初芽は米粒を投げる前に、米をこねて柔らかくしていたのだ



悪知恵だけでいえば智将と称えられてもおかしくないだろう

そして初芽は立ち上がり、湊の方へ近づきながら



「湊さん。ほっぺに米粒が付いてますよ」



そう言いながら、初芽は湊のほっぺについた米を取ろうと手を伸ばした



「いたただだ⁉︎」



だが伸ばした指を蘭さんが箸で挟んで動きを止めた



そしてそのまま逆の手で米粒を取り、自分の口に放り込んだ



「あ、ありがとうございます……」

「……別に」



蘭さんは初芽の拘束を解き、料理を食べ始めた



「ら、蘭?」

「なによ?」

「今湊さんの頬についた米食べたの理解してる?」

「してるわ。バカにしないでちょうだい」



黙々と食べ進める蘭さん。その光景に部屋中が沈黙していた



……だが、蘭さんは顔を真っ赤にして倒れた



「……やっぱり恥ずかしかったんじゃん」

「……うるさい」



クールに決めたつもりが、結局格好のつかない形になってしまった



蘭さんの阻止により、初芽の作戦は失敗(どころか蘭さんの評価を上げる始末)に終わった



だが初芽が仕掛けたことにより、行動を起こした時の免罪符を手に入れた2人。談笑しながら食事を楽しんでいるものの、やはり3人の間に火花は飛び散ったままのように見える



そしてまたも1人、仕掛けようとしている人物が……



「……あ」



蘭さんは机の下に箸を落としてしまった



「み、湊さん?そ、そっちに転がってしまったので、取ってくれます?」



ツンツンしてしまわなかった代わりに、頑張って作った笑顔が引き攣っていた。やはりまだ距離を詰めるのは難しいみたいだ



「……見当たらないけど」

「足元辺りにありませんか?」



湊は机の下を覗いて蘭さんの箸を探している



……だが、実は箸は蘭さんが持っている。転がったというのはウソだ



そして下を覗いている湊の隙をついて、自分の箸と湊の箸を素早く交換した



「「「なっ⁉︎」」」



あまりに素早い動きで、初芽達は蘭の妨害が出来なかった



「ないな」

「じ、じゃあ……私の方辺りとかに」



湊は蘭さんの方を向いた。そしてその視界には……蘭さんの膝上ぐらいの長さのスカートから下着が見えていた



「な、ないですね」



湊は素早く目線を逸らし、通常の体制に戻った



もちろん下着を見せたのは故意。冬場なのに丈の短いスカートを履いてきたのはこれが狙い。この一つの行動で湊の箸を手に入れる。そして下着を偶然を装って見せつけることに成功した



代償として、顔を真っ赤に染めることになるわけだが



「あっ!こ、こんなところにあ、ありましたわ!お騒がせしましたわ」



そして偶然見つけたかのように、さっき交換した湊の箸を出し、あたかも自分の落とした箸のように湊に見せた



「よ、良かったね」

「え、ええ……」



そして湊もちょっと顔を赤くした状態でご飯を食べすすめた



湊がご飯を口に運ぶ度に蘭さんはドキドキし、初芽は爪をガリガリと噛んでいた



そして蘭さんも……湊の箸で食材を口に運ーー



ガブっ‼︎



ーーぶ前に、初芽が横取りをする形で蘭の箸にかぶりついた



「あー‼︎」

「刺身うまっ!」



結果的に湊の箸に最初に口をつけたのは、初芽となった



「初芽ー‼︎あなたよくも……‼︎」

「そんなに刺身が食べたかったのー?じゃあ私の刺身2枚あげるから許して?」

「……これは戦争案件ですわ。帰ったらあなたのタンスの左下に眠ってるしゃしーー」

「わ!わー‼︎なんでタンスの中身知ってんのよ⁉︎」



すごい焦りようだ。私も中身は知らない……が、帰ったらこっそり見てやろう。何か脅しのネタに使えるかもしれない



「ふふふ……あれを意地でもあなたの目の前で燃やして差し上げますわ‼︎」

「や、やめよ?ほらっ。代わりにアレ以外にもっと()()()()()()()()()があるからさ……それで手を打ってくれない?」

「……中身を見てから判断しますわ」



話の内容から察した。おそらく湊のことを隠し撮りした写真があるのだろう



結果的に蘭さんは半分勝利。そして初芽は大勝となった



♢ ♢ ♢



残り仕掛けていない人は由布子さんのみとなった。だが他3人は楽観ムードだった



大人しい性格の由布子さんがみんなの前で……ましてや湊に対して大胆な行動を起こすはずがない



そして私もその1人だ



……だからこそ



「み、湊さん……あ、あーん……」



由布子さんは自分の箸を使って、湊にあーんをしていることに、私でさえも驚きを隠せないでいた



「ゆ、由布子さん?こ、これは……」

「い、嫌……ですか?」

「嫌というわけではないんだけど……」



他の2人は由布子さんの行動に驚きすぎて、固まってしまっていた。あの表情があんぐりというのだろう



「……た、食べなきゃダメか?」

「た、食べて頂けないと困ります……」

「そ、そう……じゃあ……」



湊は照れながらも口に運んだ



「……美味しい」

「そ、そそそそそれは……よよよかったです‼︎」



お互いに顔を赤くし、そしてお互いに目を逸らした



♢ ♢ ♢



そしてその後は特に何もないまま終了。結果的に最後に由布子さんにごっそり持っていかれた感じになった



「湊さん。私達温泉に入ってきますね」

「おう」

「あ!覗かないでくださいね?」

「どうやって覗くんだよ……てか俺もう入ったし……」



蘭さんと初芽は温泉に入る為着替えなどが入った袋を出した



「由布子さん?早く準備しないと置いてくよ?」

「あ……わ、私は後で入りますから。先に3人でどうぞ……」



2人は由布子さんの両腕をガシッと掴んだ



「由布子さん?湊さんと2人きりになろうったってそうはいきませんわよ?」

「ち、違っ!そんなつもりじゃなくて……」

「そうそう……さっきの行動の件に関しても色々聞かせてもらわないといけないし!」

「あ、あれは私だけじゃなーー」

「よーし蘭!このまま由布子さんを引っ張ってくよー」

「了解ー」



2人からガッチリと掴まれ、逃げることが出来ない由布子さん



「ほ、本当に違くて!は、裸見られたくないんです!」

「はいはい。そういうことにしておくわ。ワガママボディさん」

「そ、その呼び方はやめてくださいー‼︎」

「というか私は見たから今更だし」



由布子さんは悲鳴をあげながら、無理矢理温泉へと連行された

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