質問とペナルティとキャビアと
「じゃあ由布子ちゃん。質問続けるね?」
「は、はい」
一時的に止まっていた質問タイムを再開させた
蘭さんは由布子さんを見る目が明らかに尊敬している人を崇める目をしていた
「好きな食べ物は?」
「ぐ、グラタンです」
「好きな飲み物は?」
「飲み物……飲み物……りんごジュースです」
「好きな番組は?」
「テレビは高校卒業してから見てないです」
「好きな俳優は?」
「えっと……テレビ見てないので分からないです」
湊に関係のない質問を繰り返す初芽。さっきも言った通り、まずは蘭さんに由布子さんのことを少しでも理解させる為だろう
「次の質問ね。湊さんのどこが好き?」
「全部です。……あ」
初芽はガッツポーズを出した。対照に由布子さんは恥ずかしさからか、顔を伏せて隠してしまった
「いやー。普通なら答えないと思って罠を仕掛けて良かったわ」
「……ひどいです」
「普通の質問を連続でした後、不意な質問を避けられなかったね。私の戦略勝ち!」
「うぅ……」
今回ばかりは妹に「でかした!」と褒めてあげたい
「にしても全部って……すごい惚れてるんだね」
「んんっ……んんっ‼︎あーそうですよ!すごい惚れてるんです‼︎悪いですか⁉︎」
何かが吹っ切れたように叫ぶ由布子さん。こんな由布子さんの姿を見たのは初めてだ
由布子さんは恥ずかしさに耐えきれず、顔を押さえてソファーに突っ伏してしまった
「……もう何も答えません。変えてください」
「まだ質問残ってたんだけど……まあいいか。じゃあ次は蘭ね」
「やっぱり私もやるのね……」
「当たり前でしょ?由布子さん1人だけ喋らせるなんて可哀想だと思わないの?」
「はぁ……まあいいわ。やらなきゃ居候させてもらってる件で色々とチラつかされそうだし」
「よくわかってんじゃーん!」
今は初芽の手のひらの上に、蘭さんは立っている。
少しでもつつかれれば落ちる……そんな不安定な状況だ
実質初芽に弱味を握られてるようなもの。よりにもよって厄介な人間に……
「それじゃあ始めるね。好きな食べ物は?」
「これは共通で聞くのね。そうね……キャビアかしら」
「キャビ……これまた高級な食材を……」
「え?キャビアって高級なの?」
「そうだった……良いとこのお嬢様だった……」
キャビアが高級食材という認識がない蘭さん。もしかしたら一般家庭における、納豆の位置に蘭さんのキャビアはいるのかもしれない
「……じゃあ次!好きな飲み物は?」
「ブラックアイボリーですわ」
「ぶ、ブラックアイ?なに?」
「ウチでよく淹れてもらえるコーヒーですわ」
「へー。そんなコーヒーあるんだ。知らなかった」
と、ここで突っ伏していた由布子さんが初芽さんの肩をちょんちょんと刺激し、初芽の意識を自身へと向けた
「……どうしたの?」
由布子さんは黙って、初芽に携帯画面を見せた
「ああ……わざわざブラックアイボリーのこと調べたのね。値段が……えっ?100gで50,000円?」
大体コーヒー豆の100gの相場は300円だ。おおよそ166倍近く値段が高くなっている
「……そんなの日常的に飲んでたのに、よくウチのパックのコーヒーを美味しい美味しいって飲んでたな……」
「え?美味しいよ?スッキリしてて」
「……高級の味に慣れすぎて、安物食べたら全部同じ食べ物に感じるような舌にならなくてよかったね」
「そうなったらもう舌を病院で診てもらうしかないですわね」
100g50,000円のコーヒー……飲んでみたかったなぁ……
……あ、私苦いのダメなんだった
「じゃあ次!モデルの収入は?」
「それは教えられませんわ」
「じゃあ高校の頃のお小遣いの値段!」
「お金は貰ってませんわ。黒いカードを渡されたぐらいですわ」
「ぐらいって……それで全部解決するじゃん……」
改めて次元の違う場所にいると感じさせられた話だ。湊が蘭さんと結婚したら、お金遣い荒くなるのかな?働かなくて良いじゃん。ってなって仕事辞めたりしないかな?
蘭さんと結婚したら、湊がダメ男になる可能性も十分にありえそうだ
「じゃあ最後に、湊さんのことはどう思ってる?」
「好きですわ。すごく好き」
曇りなき目でそう発言をした蘭さん。ぜひその素直さを湊の前でも維持してもらいたいものだ
「本当に〜?いつも湊さんに冷たく当たってるらしいじゃない」
蘭さんのツンデレは確かに強烈。第三者から見れば、確かに冷たくあしらっており、好きだと言われても到底信じられるものじゃない
「……まあそうね。態度は冷たいと思う」
「ほら!」
「でもそれは……その……は、恥ずかしくなってつい……」
顔を赤らめる蘭さん
「はーん。そういうこと。要するに照れ隠しなんだ」
「う、うん……」
初芽はちゃんと理解してくれたようだ
「て、照れ隠しって……はぁ。理由は分かったけど湊さんが可哀想だから」
「うっ……そ、そうよね。反省してるわ」
反省もしてるだろうし、実際家では超絶落ち込んでいる蘭さん。いつか克服して、普通の態度で湊と接することが出来る日が来ることを私は祈っている
「とりあえず蘭は反省するってことで!質問終了!解散!」
ここで初芽からの唐突な解散宣言が出された
「急すぎない?」
「だって当初の目的は達成したしー?あとは帰ってもいいし、ここで時間いっぱいまで歌ってもいいよ?お金は私が持つからさ。ちなみに私はもう帰るつもりだから」
「逃すわけないわよね」
少しトーンの低い声で逃がさない宣言をした蘭さんは、出入り口の扉の前で仁王立ちした
「な、何してるの?」
「私達には散々質問したんだから、次は初芽の番じゃん」
「いや、私の番は私のプログラムの中に入ってないから」
「アクシデントってのはいついかなる時も起こりうるものよ?初芽のプログラムにアクシデントが起きたせいで、今から質問することになったから」
「起きたというか起こされてるよね」
「わ、私も!初芽さんにはき、聞きたいことがあります!」
「由布子さんまで⁉︎」
2人に出入り口を固められ、逃げられない初芽。これが本当の袋のネズミってことなんだろうなぁ
「だああっ‼︎もう!どんとこいやぁ‼︎」
この後1時間ほどみっちり質問攻めに逢った初芽だった




