270話 がんばった報酬は
最後に大乱闘を繰り広げて、領主の屋敷を半壊させるという事態になってしまった。
当然、すぐに憲兵と騎士が駆けつけてきた。
幸いというべきか、ユスティーナを知る人がいて、話はスムーズに進んだ。
竜の王女の証言。
そして、竜の卵を始めとする不正の証拠。
言い逃れできるような状況ではなくて、領主は逮捕された。
どうなるか、詳細は不明だけど……
この街は、より良い方向へ変わっていくだろう。
そして、事情聴取などを終えた俺とユスティーナは……
「本当に、本当にありがとうございましたっ!!!」
孤児院に移動したところで、レイラさんがものすごい勢いで頭を下げてきた。
領主の不正が明らかになったことで、孤児院の現状を多くの人が知ることに。
まだ新しい領主は決まっていないが、孤児院の現状改善は確約された状態で、建物の補修や子供たちの教育などの手配が進んでいるという。
食料は即日で手配されて、もうひもじい思いをすることはないとか。
「お二人がいなければ、この孤児院はどうなっていたか……いえ、それだけではありません。この街そのものが、最悪、潰れていたかもしれませんし……何度お礼を重ねても足りません。本当にありがとうございます」
想像以上に感謝された。
そこまで頭を下げなくても……と思うのだけど、レイラさんは止めない。
むしろ、もっと深く頭を下げてしまう。
そこまで気にしないでほしいのだけど……
「アルト、アルト」
困っていると、ユスティーナがそっと耳打ちをしてくる。
「こういうのは、素直にどういたしまして、って感謝を受け取っておいた方がいいよ?」
「しかし、ここまで感謝されることをしたわけじゃあ……」
「過小評価癖は、たまに再発するよねえ……」
やれやれとため息をこぼすユスティーナ。
それから、びしっと俺の鼻先に指を突きつけてきた。
「アルト! レイラや子供たちを見て」
言われるまま視線を移す。
レイラさんは、相変わらず頭を下げている。
子供たちも彼女を真似て、頭を下げている。
そこまでされてしまうと、妙な感じになってしまうのだけど……
ただ、よくよく見てみればそれだけじゃない。
レイラさんは笑顔だった。
これから先、孤児院をきちんと運営していける目処が立ち、喜んでいた。
子供たちも笑顔だった。
孤児院の運営など、深いところはわからないだろうが……
レイラさんが喜んでいるので、それが自分のことのようにうれしいのだろう。
「この笑顔が、ボクたちががんばって得た報酬なんだよ? それを否定するようなことを言っちゃうの?」
「……そっか」
ユスティーナの言う通りだ。
気にしないでと、レイラさん達の感謝の念を否定することをしたらいけない。
笑顔という報酬をしっかりと受け取り……
そして、どういたしまして、と言えばいい。
ただそれだけのこと。
感謝されるとか、なかなかなかった経験だから、ついつい戸惑ってしまった。
当たり前の対応を思い出させてくれたユスティーナには感謝だ。
「レイラさん」
「はい」
「えっと……どういたしまして」
手を差し出して、
「はい、ありがとうございます!」
レイラさんは、もう一度、晴れやかな笑みを浮かべて、俺と握手を交わすのだった。
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