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265話 追い詰められた悪人のとる行動はただ一つ

 妙な茶番が挟まれたものの、ユスティーナの正体を知った領主は、だらだらと大量の汗を流しつつ土下座する。

 そんな主を見て、執事やメイドさんたちも追随した。


 唯一、ベヒーモスだけはその場でじっとしていたが……

 まあ、こちらの言葉も事情もわからないから、当たり前の反応ではある。


「国が助けなくちゃならないはずの孤児院への援助を一方的に打ち切り、私腹を肥やして……さらに、竜の卵の違法取り引き。これらについて、申し開きは?」

「う、ぐぐぐ……」


 領主の顔色が青くなり……

 今度は白くなって、最後は食べ物を喉に詰まらせたような感じで赤くなる。


 領主もその立場故、どこかでユスティーナのことを見たことがあるのだろう。

 偽物だ、と言うことができず、かといって正直に罪を認めることもできず、唸るだけ。


 もしかしたら、領主がユスティーナのことを本当に知らず、誰だ? という間の抜けた展開になるのでは? という懸念もあったが……

 まあ、それはそれで問題はない。


 竜族の王女を騙るなんて、不敬中の不敬。

 謀反ととられても仕方ないような大犯罪だ。


 普通に考えて、そんなバカなことはしない。

 名乗った時点で、ほぼほぼ、本物と考えるべきだろう。


「さあ、自らの罪を認めて、おとなしく投降してもらうよ!」

「ぐぅ……!」


 領主が青くなる。

 ついでに、レイラさんも青くなる。


 レイラさんは聡い人だから、薄々、ユスティーナが普通の人でないことは察していただろう。

 たぶん、どこかの貴族の令嬢と考えていたのではないか?


 しかし、蓋を開けてみれば竜。

 しかも王女。

 驚かないはずもなく、言葉も出ない様子で、パクパクと口を開け閉めしていた。


 そして、ユスティーナはというと……


「……ふへ」


 これ以上ないほどのタイミングで正体を明かして、悪を追い詰める。

 その快感に酔っている様子で、ニマニマとしていた。


 今は、そんなことをしている場合じゃないだろうに……

 やれやれとため息がこぼれる。


「それで」


 ユスティーナに任せていたら話が進みそうにないので、代わりに俺が話を進める。


「あなたの罪は明白だ。証拠もある」

「ぐっ……」

「おとなしく投降してもらえるか?」

「……」


 領主はうつむいて、


「……くっ、くくく、ははははは!!!」


 高笑いを響かせた。


 バッと、勢いよく顔をあげる。

 その表情は狂気に満ちていた。


「このようなところで終わってたまるものか! たとえ投降したとしても、そこで終わり……同じ終わりならば、最後の最後まで足掻いてやる! 私は、このようなところで終わるような者ではないのだ!!!」


 領主は背後に控える執事やメイド、ベヒーモスに声をかける。


「こいつは王女の名を騙る大罪人だ! 誰一人、生かして返すな! 正義は我等にありっ!!!」


 一部のメイドや執事達は、そんなことを言われても……というような感じで戸惑い、動かない。

 一連のやりとりを見て、ユスティーナが本物の竜の王女であることに気づいたのだろう。


 そんな彼女と戦えば、逆に大罪人になってしまう。

 下手なことはできず、動けないでいた。


 ただ、動く者もいた。

 おそらく、領主と同じように、かなりのところまで犯罪に手を染めている、同種なのだろう。

 今更、おとなしく投降しても、その後の裁判で極刑が待ち受けている。

 ならば、一か八かに賭けて戦う方がいいと考えたのだろう。


「ふふーん、抵抗するなら容赦しないよ! ボクとアルトの愛の力、見せてあげるっ」

「さりげなく、俺も組み込まれているな」

「ダメ?」

「いや。それくらい自然に考えてもらっていることは、うれしいな」


 愛の力、という部分を否定することなく……

 俺とユスティーナは並んで、レイラさんを背中にかばい、戦闘態勢をとる。


「いけぇ! 殺せ、皆殺しだぁ!!!」


 領主が泡を飛ばすような勢いで叫んで、戦端が開かれた。

引っ越しの影響で、少し作業が追いつかず……

金曜日の更新はお休みさせていただきます。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[良い点] この時のレイラさんの姿、よく脳内予想してるんですよね。 イメージは水戸黄門の身分を明かした時の民達の姿ですけど。それにシスター服着てるバージョンです。
[一言] 次回の成敗シーン、 BGMは菊池俊輔氏ですかね?
[気になる点] もしも、この場に五大貴族の二人である。 テオドールとアレクシアがいたら、ユスティーナと同じく名乗っていたでしょうね。 悪徳領主「な、五大貴族の方まで!?」と言いそうですね。 [一言]…
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