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あの時が聞こえる  作者: end&
本編
40/42

現代:再会、そして初めまして

 二人の警官に連れて行かれる里音さんと目が合う。


 声をかけたかった。


 二人で話した時間が、たった数時間程度だったとしても、他人とは思えなかった。

 だが、その一歩が踏み出せない。

 ふと、彼女がこちらに気が付き、少し驚いたような表情を浮かべ、やがて苦笑を浮かべる。


 ――かっこ悪いところ、見せちゃったね。


 そんな感じの笑み。

 なぜだろう。

 これで事件は解決した。それと同時に、犯人に抱いていた怒りの感情が氷解していく。

 確かに、斎藤寿々菜に対する行為は犯罪だ。

 だけど私は被害者ではないし、ましてや被害者とは何の面識もない。


 十七年前、私の目の前で理世さんを階段から突き落とした。その瞬間を見ているのにも関わらず、怒れなかった。怒りが込み上げてこなかった。

 始めは自分に対する罪悪感が勝っていた。

 それも、時と共に少しずつほぐれて、薄まっていった。

 純粋に恨めないのは、過去の彼女との関係があるから?


 そうじゃない。


 理世さんのピアノが素直なのに対して、里音さんのピアノは少し不安定で、暗闇を手さぐりで進むような危うさがあった。

 決して下手ではない。伝わって来たのは不安と焦り。決してつかめない蜃気楼を追いかけて走り続けているような、そんな気がした。


 根っからの悪人だとは思えない。

 才能に目を奪われ、道を踏み外してしまっただけ。

 藤田里音がしたことは許されることではない。だけど、誰だって道を踏み外す可能性はある。


 才能と一緒。

 望む望まざる関係なく、誰でも犯罪者になる可能性は十分にあるのだ。


「一件落着、なのかな」


 カーディガンのポケットに手を入れたまま、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきた理世さんが呟く。

 高校生時代とほとんど変わらない。変わった点と言ったら、髪型がアシメショートに変わったくらいだろうか。

 それと、ピアノを辞めて今は――


「高校の、あの時に一度会ってるけど、出会いのやり直しだね」


 二度目の初対面。

 あの時はピアノに惚れて追いかけた。

 だけど今は歌声に惚れて追いかけた。

 そしてやっと出会えた。


「優穂から、あなたのことは聞いてる。旧姓飯塚、今は成田君花さん」

「初めまして、深澤理世さん。それともUMAと呼べばいいですか?」


 決して人前に姿を現さなかった人。

 でも、たぶん彼女のピアノを聞いたことのある人は気づいたはず。

 やっと見つけた。やっと会えた。


「本当に、未確認生物みたいですね」


 自然と笑みがこぼれた。


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