突然、全てが虚しくなってきた
急に虚しくなってきた。何もかもが無意味に思えてきた。突然、街中の電気が消えて、停電になってしまったみたいに。
これまで気を張って生きてきたのに、突然、緊張の糸が切れてしまった。漆黒の闇の中で、ピンッと張られたピアノ線の上を渡り歩いていたのに、いきなり全てが切れて、闇の中に放り出されてしまったみたいに。
何もかもが徒労に終わってしまうのではないだろうか?それ以前に、成功とは一体、何なのだろうか?全ての行動も、全ての情報も無意味・無価値。たとえば、この能力を極限まで極めて、この世にあるモノもないモノも何もかも全て描けるようになったとして、そこに意味があるだろうか?何もかもを描けるというコトは、何も描かないのと同じなのでは?
そのような考えが頭を一杯にする。
だが、しかし…と僕は思い直す。
何もかもを否定して、否定し尽くして、それでもたった1つだけ否定できないモノがあったとしたら。たった1つだけ否定しきれずに残したとしたら。それは、最高の力になるのではないだろうか?全ての意見・外部要因・外の世界の情報、それらを完全にシャットダウンして、自らの世界のみを肯定するコトができたとしたら、それは無敵の能力。もはや、誰にも倒されるコトはない。攻撃されるコトすらない。史上最強の能力となり得るのではないだろうか?
たった1つの願いだけを残して、それ以外全てを捨てるコトができたならば…
そうして、そのたった1つの願いを“最高の作品をこの世界に残す能力”とできたならば?それは、僕自身が“作家の神”となるのと同義なのではないだろうか?




