僕は走り続ける
頭の中で、僕は走り続けている。
どこに向って?
わからない。わからないけれども、どこかへ向ってひたすら走り続けている。
誰かを追い抜く。知らないおじさんだ。もう1人、追い抜く。これは女子校生。逆に、今度は誰かに追い抜かれる。追い抜いたり、追い抜かれたり。その繰り返し。
走りながら、僕は考える。“ここに、何か意味があるのだろうか?”と。意味なんてないのかも知れない。あるいは、走るという行為そのものに意味があるのだろうか?
わからない。わからないけれども、走り続ける。止まれば、2度と走り始められないような気がするから。
きっと、小説も同じなのだろう。
誰かと競争する書き方もある。そうでない書き方もある。
読者を想定して、その読者に喜ばれたり、怒られたり、応援されたり、非難されたり、指摘されたり、無視されたりしながら書き続ける。そうして、自分が望んだような評価がもらえれば嬉しくなるし、そうでない反応が返ってくれば、落ち込んだり、やる気をなくしたりして、最悪の場合、小説を書くのを諦めてしまう。
あるいは、最初から読者など存在しないかのように書き続ける書き方もある。この方法は、自分との戦い。周りの評価が一切、気にならなくなる代わりに、それを力に代えることもできなくなってしまう。
もしくは、その両方か。自分の世界を極めつつも、人の評価も気にする。この場合は、得てして中途半端になりがち。どっちつかずのまま終わってしまう可能性も高い。
いずれにしても、僕は走り続ける。
それしか、術を知らないのだから。他に生きる方法を知らない。正確には、全く知らないわけではないのだけど、他の方法はどれも上手くいかなかった。だから、走り続ける。ただ、ひたすらに。何に向って走っているのか、一体、誰と競争しているのかもわからないままに…




