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後日談

完結です。




 とある 大広間では、大きな椅子に座る 青年と数人の軍服や女官服に身を包んだ 若者と年老いた 貴族達が、テーブルを囲んで 何かを話し合っていた。

そこへ 若い騎士達が、雪崩込んでくる。


「お前達………礼儀を弁えるべきではないかツ!

これだから 平民上がりは………ツ!」


小太りな貴族の1人が、呆れたように 騎士達に怒鳴った。

けれど 青年は、それを 手で制す。


「ご報告いたしますツ!

先程 王が、あの女に討たれました。

女も、その後を追って………」


その報告に 室内は、ざわめき出す。

特に 貴族達は、感激しているらしい。


「これで………やっと 国が、平和になりますな?」

「本当ですのう?

まさか あれ程にまで 暴走するとは、思いませんでした」


だが 若者達は、険しい顔だ。


「そうか………あの2人は………。

兄は、抵抗したのか?」


青年は、悲しげな表情を浮かべていた。


「いえ………まるで あの女性を待っていたかのように 王座に腰を下ろしておられました。

短剣が、投げられました時も 逃げることもなく………」


その話に 青年は、黙り込んだ。


「陛下………あの2人の遺体は、どう致しましょうか。

今は、別室に安置しておりますが………」


その声に 青年は、その場にいる 皆を見た。

室内は、一瞬にして 静寂に包まれる。


「国葬だ。

異論は、聞くつもりない。

国を挙げて 2人の冥福を祈る」


その発言に 貴族達は、再び ざわめき出す。


「な………何を言われるのですか?!

あの男は、国を荒らした………張本人ですぞ?

しかも あの女も………元を正せば………」


その声に 青年は、その発言をした 太った貴族を睨む。


元を正せば(・・・・・) あの2人の運命を狂わせたのは、僕の存在だ」


その声色は、悲壮が 篭っている。


「平穏な生活を送るはずだったのに 僕の存在を呪いから守る為 無理やり………。

万が一 支える者と出会っては、全てが台無しになってしまうから 兄と深い関わりを持つ者は、全て 存在を消された。

呪いの効果が、長く 兄を蝕み 僕の存在を察知する余裕もないように」


青年の言葉に 皆は、何も答えない。


「僕は、ずっと 何も知らなかった。

みんな 何も教えてもくれなかったじゃないかツ!

そして 成人する年齢になって  聞かされたのが、僕の出生だった!

最初は、兄のことを悪く聞かされたけれど 真実は、違っている」

「ですが………あの方の所業のせいで 民は、苦しんだのですぞ?

王たるものは、民の為 尽力を注がなければなりませんのに………」


「兄が、行った (まつりごと)は、全て 重鎮の貴族達が、前もって 話し合った事を、最終決定を下しているだけだったのでしょう?

それなのに 全ての行いを 兄が元凶だと決め付けるのは、間違っているツ!

全て 話は、聞いているのだから」


その言葉に 逃げるようにして この青年の元に集った 貴族達は、震え上がった。


「兄の名を使って 相当な金を使い込んでいたらしいじゃないか。

しかも 後宮の女性達は、ほとんど アナタ方の妾だった と 伺っていますよ?

王の名を使って 無理やり 後宮に連れてきたのでしょう?

全員 国庫の金を使っていたそうですし」


それを聞いて 貴族達は、目を大きく見開き 青年の臣下達は、遠巻きに 呆れ果てている。

皆の視線に 彼らは、肩を竦めてしまっているようだ。

最初は、身代わりの王の監視役だった。

だが 少しだけ 少しだけと思っているうちに 欲が、芽生えてしまったのだろう。

この事は、内情に知るに当たって 兄の側近として 近くにいた 者達から聞いていたのだ。


「では、決まりだね?

兄上達は、国葬する。

勿論 全ての事実も、民に伝えるつもりだ」


それに対して 貴族達は、反論の声を上げようとするも 青年や他の者達の睨みに 黙り込む。


「民には、真実を知る 権利がある。

偽りではなく 事実をだ。

それに 兄の所業の中には、民の為に尽力したこともあるのだから………」


願うように 呟くと 年の近い 側近達は、頷いてくれる。

そんな彼らの反応を見て 青年は、嬉しそうに 微笑んだ。


「じゃあ 話は、これで終わりだね?

僕は、兄上に最後の別れをしたい。

まぁ 僕も、一度も会ったことがなかったんだけど。

みんなが、知らせてくれることで 近くにいたように感じていただけでね?」


青年微笑んでいると  また 部屋の中に 1人の騎士が、雪崩れ込んできた。

もう 誰も、最初のように 怒鳴り散らす貴族は、いない。

けれど 彼は、顔を真っ青にさせてしまっているようだ。


「た………たい……………大変ですツ!

お………王とじょ………女性の……………い……遺体が…突然 ………消えました……ツ!」


その叫び声に 皆は、驚きを隠せない。

まるで 煙のように 消えてしまうことなど ありえない事なのだから。

けれど その後 捜索をしたにも拘らず 2人の姿を発見することは、出来なかった。



「一体 どうなっているんだ?

なぜ………2人が…………」


戸惑いを隠せない 青年に 側近達も、顔を見合わせるばかりだ。

貴族達は、何かの呪いだと 騒ぎ始め 逃げるように 他国へと亡命していったそうだ。

結局は、そんな話を誰も受け入れず この国を裏切った 制裁として 処刑されたらしい。

同盟国には、事前に 全てを語っていたことが、それに繋がったのだろう。


その後 国の王には、青年が就いた。

王は、全ての事実を 包み隠すことなく 民に知らせたそうだ。

人々は、それを聞き 驚きを隠せなかったらしい。

それもそうだろう。

けれど 若い王の深い悲しむ姿を見て 共に その2人の冥福を祈る。

たとえ 2人の身体が、消えてしまっても その魂は、どこかの世界に存在しているんだから………。


青年王は、時が経ち 伴侶を迎えた。

その女性は、まだ 少女のように幼く 平民の出だったが それは それは 国のことに尽力を注いだらしい。

彼女は、生まれた時から 青年と結ばれることが、義務付けられていたかのように 生涯 王を支え続けたそうだ。



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