シーズン2第10話:ぶつかり合う本音と、涙の理由
いつもお読みいただき、たくさんの応援をありがとうございます!
第10話では、引っ直そうとする瞬を引き止め、宮乃が自分の心に隠していた本当の想いをぶつけるシーンを描きます。
許せない気持ちと、それ以上に溢れ出る切なさが交錯する緊迫の展開をお楽しみください。
「――ふざけないでよ……!」
宮乃の震える声が、夕暮れの静まり返った住宅街に鋭く突き刺さった。
荷物をまとめ、この街から逃げるように消え去ろうとしている瞬の姿を見据えながら、宮乃の瞳からとめどなく涙が溢れ出た。
「何が『安心してくれ』よ……! 勝手にいなくなって、勝手にすべてを背負い込んで……そんなの、何の解決にもならないじゃない……!」
瞬は動揺したように目を大きく見開き、わずかに一歩後ずさった。
「……だけど、俺がここにいたら、お前はいつまでもあの事故を思い出して苦しむだろ。俺の顔を見るのも嫌だって、お前自身が言ったんだ……」
「そうよ……! 最初は、本当にそう思った!」
宮乃は両手をぎゅっと握りしめ、震えながらも一歩、また一歩と瞬に歩み寄った。
「あなたのおじいちゃんがしたことは許せないし、健太くんが帰ってこない現実も変わらない。あなたを見るたびに、あの日の怖さや絶望が蘇ってくるのも本当よ……!」
その言葉を聞いた瞬の顔が、さらに深く苦痛に歪んだ。
「……だったら、どうして来たんだよ……。俺を責めに来たのか……?」
「違う……っ!」
宮乃は首を激しく横に振り、声を張り上げた。
「責めに来たんじゃない……! あなたが私に謝るために、どれだけボロボロになりながら一人で耐えてきたかも、あの夜の土下座も、お母さんから受け取ったベビー服も……全部、分かっちゃったからだよ……!」
夕暮れの冷たい風が、二人の間を吹き抜けていく。
瞬は息を呑み、信じられないものを見るような目で宮乃を見つめた。
「私はあなたに、自分の苦しみを全部ぶつけて、突き放して……それでスッとしたかったわけじゃないのに……! なのに、あなたは自分が悪者になって、この街から逃げようとしてる……そんなの、ずるいじゃない……!」
「ずるい……?」
「そうよ! 私を一人ぼっちにして、あなたまでいなくなったら、私は……私は誰にこのやり場のない気持ちをぶつければいいのよ……!」
そこまで叫んだ瞬間、宮乃の足から力が抜け、その場に崩れ落ちそうになった。
瞬は反射的に駆け寄り、宮乃の腕をしっかりと支え起こした。
間近で見た宮乃の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだったが、その瞳には、もはや最初の頃のような凍てつくような拒絶の色はなく、剥き出しの哀しみと、どうしようもない切なさが満ちていた。
「宮乃……お前……」
瞬の大きな手が、宮乃の腕を支えながら微かに震えていた。
その手の温もりが、あの日の恐怖を少しだけ和らげ、同時に、失われた時間の重みを痛いほど思い出させる。
許すことはできない。
だけど、もう二度と引き裂かれたくない。
矛盾に満ちた二つの感情のなかで、宮乃は瞬の胸に額をそっと預け、声を殺してただ泣きじゃくることしかできなかった。
夕闇がゆっくりと街を包み込む中、二人の長い影がアスファルトの地面に重なり合っていた。
第10話をお読みいただきありがとうございました。
「逃げないで」と、自分の本当の気持ちを初めて瞬にぶつけた宮乃。
憎しみと切なさが入り混じる中で、二人の関係は大きな転換点を迎えます。
物語はいよいよ後半戦へ。次回、第11話もお楽しみに!




