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第十話「蟹と蜘蛛と女の子。」

<ケイブクラブ(Lv10)を倒しました。>

<経験値(51)を取得しました。>


「…。」


<ケイブクラブ(Lv9)を倒しました。>

<経験値(39)を取得しました。>


「…。」


<ケイブクラブ(Lv10)を倒しました。>

<経験値(51)を取得しました。>


<ケイブクラブ(Lv11)を倒しました。>

<経験値(67)を取得しました。>


「…。」


<ノイン・レーゲンシュラインのレベルが上がりました。6→7>

<スキルポイント(1)を取得しました。>


<拳闘士のクラスレベルが上がりました。6→7>

<クラス専用ポイント(1)を取得しました。>


<聖職者のクラスレベルが上がりました。6→7>

<クラス専用ポイント(1)を取得しました。>


「あ、レベル上がった。」


……ていうか、ここ。


「蟹しかいない。」


どれだけ歩いても、蟹、蟹、蟹…。

レベルアップのうれしさも半減している気がする。


道中でようやく違うモンスターに会えたと思ったら、それも『クリスタルクラブ』という蟹だった。

岩の代わりにクリスタルで擬態したレアな個体。

能力値や取得できる経験値はほとんど変わらないが、ドロップアイテムが違う。


『ケイブクラブ』は『洞蟹のハサミ』という食材と『洞蟹鋼』という素材を落とす。

設定では、この『洞蟹鋼』というのを口から分泌して岩を自分の殻に固定するらしい。背負う岩が大きい方がモテるとか。

鍛冶で武器やら防具やらに加工できるので、何か考えてみてもいいかもしれない。


『クリスタルクラブ』のほうは各種宝石を落とす。レアドロップだが。

宝石は装備に埋め込むことで、追加効果や、能力のボーナスを得られるものだ。

入手方法が限られているので、ゲームでは非常に高値で取引されていた。


残念ながらさっきの戦闘では落ちなかったが、また見つけたら積極的に狩っていきたい。


「さ、あと3レベル。やるかぁ。」


というわけで無心の蟹狩りを再開。

9体倒したところでレベルが上がって『8』になった。

レベルが上がると取得経験値は若干下がる。

さらに15体倒すと『9』に。


「はぁ…はぁ……しんどっ…。」


たぶん500発近くは殴ってる。さすがに疲れた。

それに、階層内のモンスターの数も減ってきたし。


今のレベルが9。

つまり、レベル8~9のモンスターから得られる経験値は減ってしまう。

ここのレベル帯を考えると効率は随分落ちるだろう。


「今日は潮時か。」


無理に欲張らず明日にしよう。

そう思い、来た道を引き返そうとしたとき。


ガシャン……ガシャン…ガシャンガシャンガシャンッ!


洞窟の奥から何やら耳障りな音が聞こえてくる。

音のなる方をじっと見ていると、水晶にぼんやりと照らされた洞窟の奥から、人型の何かがこちらに向かって走ってきている。


ボロボロの重装鎧。荒ぶる頭髪。

顔はよく見えない。


「モンスターか!?」


俺は走ってくる影に身構えた。

スケルトンの上位種にあんな鎧を着ていたやつがいた。

何て名前だったか。かなりの強敵だ。


そんなことを考えてる間にも徐々に近づいてくる。


ついにその顔が見えて……俺は少しがっかりした。

あれはモンスターではない。ただの走るおっさんだ。


「はぁっ!はぁっ!」


ガンッ!!!


すれ違う時に肩がぶつかったが、こちらを見もせずに走り去っていった。

完全に錯乱している。


「……なんだったんだ?」


たぶん何かから逃げているんだろうが、あの姿、どこかで見覚えが……。


「あ。」


そういえば、蟹を狩ってる途中に冒険者が通るのを見た。

遠目だったが、たしかあんな鎧を着ていた。

でも、その時は二人組だったような。


「まさか。」


嫌な予感がして洞窟の先へと進む。

何もなければそれでよかったんだが。


「ギィィイイイイ!」


「はぁっ!!」


これまた重装鎧の冒険者が一人で交戦しているのが見えた。

手に持つ剣は折れているし、鎧もあちこち装甲が剥がれかけていて、動くたびに激しく暴れている。あれを交戦と言っていいものか。


声からして女の子らしい。後ろ姿しか見えないが、随分とタッパがある。


さっきの二人組に間違いなさそうだ。

どちらも重装鎧という不思議な構成だからよく覚えている。


つまりあのおっさんは仲間を見捨てて逃げたってことか。まったく嫌なものを見てしまった。

女の子は折れた剣で何とか攻撃をいなしているものの、すでに限界が近い様子。


対する相手は。



==========================


マインスパイダー

種別:罠糸(びんし)類・穴蛛(けっしゅ)属


Lv:13

HP:35.6/51

MP:22/22


状態異常:

なし


==========================



洞窟に住む蜘蛛型モンスター。『マインスパイダー』だ。

それが、1、2、3、4……まあ、いっぱいだ。


レベルが13。おまけにこの階層では一度も見なかったモンスター。

下の階層からついてきた?そんなことが起こるのか?少なくともゲームの中でそんなことは起きなかった。いや、特殊な条件下でそういったことが起こるのは知っているが、もしあれが起きていたとしたらこんな規模ではないはず。


大量のモンスターによって今頃圧死していてもおかしくない。


「まあ、そんなこと言ってる場合じゃないか。」


ついに女の子が地面へへたり込む。

剣が地面に転がり、カラカラと音を立てた。


勝利を確信した『マインスパイダー』の牙が襲い掛かる。

女の子も覚悟を決めたのか、肩をすくませている。


「…攻撃力上昇。」


だが、その牙が彼女に届くことはない。


ブンッ…!!!


洞窟内に鈍い打撃音がこだまする。


「ギ…ギギ……。」


俺の拳を受けた『マインスパイダー』は易々と吹き飛ばされ、そのまま動かなくなった。


<マインスパイダー(Lv13)を倒しました。>

<経験値(65)を取得しました。>


「えっ…?」


「大丈夫ですか、加勢しますよ。」


「…だれ!?」


誰って、この状況ではじめに出るのがそれなのかと少し笑いそうになる。


「自己紹介は後にしましょう。立てますか?」


「は、はい!」


随分と元気のいい子だ。

見た感じまだ動けそうだし、安心した。


「ギィ…。」


カタカタと独特な音を立てて『マインスパイダー』が近づいてくる。

ただ、まあ、正直言ってこいつらは敵ではない。


同レベルの『ジェネラル・マシュリン』は上位個体だが、こいつらはただの雑魚Mob。

その強さなど当然比べ物にならない。


速度と攻撃力は高いが、防御力が低い。二、三発も殴れば倒せる。


ただし――一つだけ厄介な技がある。

爪に麻痺魔法を乗せる『パララクロー』だ。


「もう負けませんよ!はぁっ……きゃっ!あばばばばばばば。」


喰らうとああなる。気を付けよう。


「…おっと!」


痺れて地面を跳ねている女の子を眺めていたら『マインスパイダー』が飛び掛かってきた。

爪の先が黄色く輝いている。

俺は左足を大きく下げてそれを躱すと、丸見えになった蜘蛛の腹に一撃を叩き込む。


「ギェッ!!」


叫びともつかないような奇怪な音を漏らして、『マインスパイダー』が吹き飛んでいく。

『ケイブクラブ』なんかよりずっと効率的で程よい緊張感もある相手だ。


戦闘とはこうでなくちゃいけない。


「さあ、来い!」


飛び掛かってくる蜘蛛を殴り、女の子を狙う蜘蛛も殴り、ひたすら殴って殴ってたまに蹴る。

ものの数分で『マインスパイダー』の群れがあらかた煙と残骸の山になる。

女の子の麻痺も解けたようだ。


<マインスパイダー(Lv14)を倒しました。>

<経験値(87)を取得しました。>


<ノイン・レーゲンシュラインのレベルが上がりました。9→10>

<スキルポイント(1)を取得しました。>


<拳闘士のクラスレベルが上がりました。9→10>

<クラス専用ポイント(1)を取得しました。>


<聖職者のクラスレベルが上がりました。9→10>

<クラス専用ポイント(1)を取得しました。>


ついにレベルが!!


ザシュ。


「ザシュ…?」


あ、ログに気を取られt...。


「あばばばばばば。」


「だ、大丈夫ですかー!!!!」


最悪だ。『パララクロー』を喰らった。

倒れこむ直前。女の子が『マインスパイダー』に切りかかるのが見える。


そして、ログがいくつか流れた。

彼女が残った『マインスパイダー』を倒してくれたのだろう。

数に押されていただけで、十分戦える実力は備えていたらしい。


いや、しかし、これは……酷い感覚だ。

水中の中にいるかのように視界や音がぼやける。


「うっ。」


あれ、なんか体が持ち上げられた気がする。

もしかして女の子が担いでくれてる?


運搬方法は少し雑だが、ダンジョンの中に放置はされないようで安心した。


身体も動かないので、今は彼女に任せることにする。

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