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追放者アッシュの始末録 ~最強の執行官、最低ランクの冒険者に扮して闇を狩る~  作者: りさき


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第6話 グレイシャル支部長との邂逅

 翌日の早朝、オレはギルドの依頼がオープンになる前にその門を叩く。


「は、はいー! 少々お待ちくださいね」


 戸惑いを隠せない声が建物内から聞こえる。まさかこんな早朝に冒険者が来るとは思っていなかったのだろう。


 それにしても……古い建物だな。崩れかけた石造り、苔の生えた壁面。

 門戸近くの壁をこんこんと叩いてみる。パラパラと石が欠けた。マジか……。


 間もなく扉が開いた。隙間からひょっこり職員が顔を出す。


「あのぅ……」


 おお、なんたるミニサイズ。顔や体格だけを見れば10歳程度に見えるが、思わず目が言ってしまうほどに胸部の肉づきがいい。世の中とはわからないな。

 ともあれ、ミニサイズの彼女の眉尻は下がっていた。こんな早朝に何の用事が? と顔に書いてある。


「ギルドマスターに話がある。今いるか?」

「ちなみにどのようなご用件で?」

「『クラウンギルドからの手土産だ』と伝えてくれ」

「……! しょ、少々お待ちください!」


 ミニ職員の態度が露骨に変わったな。王都に位置する『クラウンギルド』の名におののいたのか、あらかじめ来客があると伝えられていたのか。

 ミニ職員は一分もせずに戻ってきた。今度は扉を丁寧にあけて出迎えてくれる。


「た、大変お待たせいたしましたっ! お部屋までご案内いたします!」


 過度な緊張に襲われているらしい。右手と右足が同時にでている職員。指摘して笑い合うような間柄でもないので放置しておく。

 通された部屋には、すでにひとりの男が座っていた。


「やぁ」


 ワインレッドのジャケットを着こなすふくよかな男。ゆで卵のような面長のうえには、気持ち程度のモヒカンが添えられている。目の下のクマとたるみがすごいな。


「グレイだ。職業は」

「【追放者】だろ? それくらいは調べとる。なめるな」


 ギルドマスター室に緊張が走る。いきなりケンカ腰で来られるとは。

 男はジャケットのポケットに手を突っ込み、革のケースを取り出す。中から一枚名刺を抜き取り、人差し指と中指に挟んで手首をスナップさせた。


 名刺が突風でも吹いたように爆発的に加速する。

 不可思議な軌道を描く長方形の紙はタテにヨコに回転しながら――オレの右目を切り裂く軌道で接近してきた。


 かわすことは別に難しくない。だがタイミングがわずかに遅れたこともあり、少々不格好な避けかたになるだろう。

 それは……少なくとも今この男の前でさらしていい醜態しゅうたいではない。


 《燃焼》。

 心の中で唱えて右手を振り払う。襲来してきた名刺はオレの手に触れた瞬間、消し炭と化した。


「ほう、魔法も使いこなすときたか。うわさたがわぬ実力を持っているようだな、追放者」

「ありがたく受け取っておく。だがいきなり攻撃するのはやめてくれ――」


 と一歩を踏み出そうとした次の瞬間、頭上で破裂音が炸裂さくれつした。

 進めようと思っていた足で床を蹴り上げ、バックステップで距離をとる。


 全身黒づくめの人間がオレとギルドマスターの間に立ちふさがっていた。

 その両手には、ショートソードが対をなして構えられている。


 視線で上を確認すると天井が割れていた。まったく派手な登場だな。

 黒づくめの人間が接近しショートソードを振り回す。それに対処しながら、


「どういうつもりだ。オレは依頼を受けに来ただけなんだが」

「わかっている。だが私はお前に依頼をしていいのかを迷っているんだ。クラウンギルドからの派遣だとはいえ、その実力がハッタリである可能性も捨てきれないだろう?」


 要するに力試し。品定めをしたらしい。


「なら逆に聞くが」


 ショートソードがオレの眼前を横切る。

 数瞬生まれた隙。オレは拳を握りこんで踏み込む。


 うち放った拳が黒づくめの人間の腹にもろにめり込んだ。時間をかけて更にねじ込む。

 ショートソードが甲高い音を立てて床に転がる。直後、どさりと黒づくめの人間も倒れて動かなくなる。


「あんたはオレを値踏みできる力を持っているんだろうな」

侮辱ぶじょくだな。私はグレイシャル支部のギルドマスターだぞ」

「それは肩書きにすぎない。出世をするために必要な力は純粋な能力以外にも様々な要因が関係してくるからな」


 オレは今まで引き受けた依頼の数々を思い出していた。

 潜入したパーティーでは必ず犠牲になる冒険者がいる。周りのメンバーはこぞって彼らを追放したがるが、オレにしてみればナンセンスでしかない。なぜなら追放したい側もまた、大差ない程度の能力しか持っていないからだ。

 仮に差があったとしても、パーティーという枠組みの中での話でしかない。


「能力も才能も持っている人間はたくさんいる。問題は活かしきれない側にあることが多い。――あんたはどうなんだ、ギルドマスター」


 《燃焼》を応用させ、炎の剣を出現させる。とりあえず100本くらいでいいか。

 それら剣先をギルドマスターに差し向けた。


 眼光がぶつかり合う。目をらさずにいると、ギルドマスターはふっと笑って両手をあげた。


「降参だ。お前の勝ちでいい、追放者。依頼について話そうか」


 おとなしくすべての炎剣を納める。

 オレは勧められるまま、ギルドマスターの前のソファに腰を下ろした。

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