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太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜  作者: 日孁
第1章~純白の支配者~
9/86

8,竜の目覚め

 前回のシリアスな展開からだいぶ戻しました。

 ─ルビアス……─


 次の瞬間、体の中になにかが流れ込んできた。

 温かい……

 初めての感覚だけど、違和感はない。それどころか、とても心地がいい。


 ─何億年も待った甲斐があった。アレン……私の相棒(グラディア)よ─


「おい、アレン?」


 僕は立ち上がり、ゆっくりとカーバンクルの方へ近づいてく。

 今まで動けなかったことが嘘みたいに……

 その光景を見た村長の咄嗟に呼びかけに、僕は頷いて答えた。

 手を翳し、未知のエネルギーをカーバンクルへ流し込む。

 やり方を教わったわけじゃない。

 でも、何故か感覚で分かった。

 みるみる傷がふさがりっていく。

 カーバンクルは最初から最後まで、不思議そうにこちらを見ていた。


「よし、これで大丈夫だ。もう傷は全部塞がったはず。」

(……お前は何者なんだ?)


 静かに成り行きを見ていたカーバンクルが思念を送ってきた。今回は殺意的なものは無かった。その代わり、警戒しているみたい。

 何って、ただの無力の凡人です。

 今はなにか出来てるけど……


(何故、我を助けた?)


 こう落ち着いて見るとカーバンクルは表情豊かだ。先程の怒っていた様子とは違い今は怪訝な顔を浮かべている。とても分かりやすい。


「何故って……助けたいと思ったから。それ以外の理由はないよ。」

(そうか、理解できんな。)

「ひどくね!?」

(人間のことなど分からん。我らの宝を奪い、並びに我を殺そうとする。すると今度は我を助ける。理解出来る方がおかしい。)


 確かに、向こう側からしたら意味不明だよな。

 その顔になるのもわかる。

 そして、ずっと気になっていたワードがまた出てきた。


「宝って一体なんの事?それを奪ったって?」

(宝とは、我らの子たちのこと。そやつらが攫ったのだ……!)


 カーバンクルがプルプルと震えている。

 口調は穏やかだが、威圧を放ちブランドンとジョンから視線を外さない。

 会話はしてくれているが今にも飛び掛りそうな勢いだ。


 それにしてもブランドンとジョンが……?


「嘘だろ?」

(偽る必要がどこにある? 紛うことなき真実だ。)

「だったら……ごめん。」

(何故お前が謝る!?)

「だって僕の友達、仲間がしでかしたことだ。だったら、僕にも関係ある。仲間が迷惑をかけたんだ。謝るのは当然のことだろ?」

(そうか……それでは、我らの宝を返してもらうぞ。)


 やっぱり理解はしていないみたいで、そんなものかと納得したみたいだ。


「少し待っててくれ。今話し合ってくる。」

(……頼んだ。)


 未だに惚けている村長と長老は置いておいて、今にも過呼吸を起こしかねない二人を見る。

 空気を読んでか、カーバンクルは威圧を弛めてくれた。

 二人の震えが少しづつ収まってきた。


「なぁ、二人とも」

「へっ?」「ア、アレン……?」


 頃合いを見て、二人に声をかける。

 恐怖で僕がいることにも気づいていなかったらしく、凄く驚いた顔をされた。


「カーバンクルの子供を、攫ったのか?」

「なんと!」「それは本当か?!」


 若い二人ではなく、老いた二人が食いついた。

 守護神たるカーバンクルの子を攫うヤバさは僕にもわかる。

 だからこそ、信じられないんだろう。


「いや待ってくれ! 何の話だ?」


 だが本命の二人はよくわかってない様子。


(とぼけるでない!)

「カーバンクルさんはそこで休んでて欲しい。ちゃんと話すから。」

(……)


 威圧は緩んでいるものの、カーバンクルの勢いに二人が怯えてしまっては会話ができない。


「本当に知らないのか?」

「あ、あぁ! 嘘じゃない!」


 んー。

 これ、本当かどうかわかんないな。

 攫う理由も無いし、二人のことは信用したいけど。

 なにか嘘か見抜く方法……

 あっ、あるじゃん。

 今までは使えなかった魔法。

 今なら使えると思う!

 そんな気がする。


「えーい!」


 今までのことが嘘だったように狙っていた魔法が発動した。

 長老とタマがやっている人の心を読む魔法だ。

 ……ムズいなコレ。


「アレン……魔法じゃと? 儂は教えておらぬはずじゃが」


 ずっと僕のことを観察していた長老が口を開いた。

 やっべ、本人いるの忘れてたぜ!

 もうバレちゃったし……話すか。


「……魔法はタマに教えて貰ったんだ」

「タマとは?」


 説明めんD!

 タマはタマだ!

 そんなんもわからんのか!


 ……はい、すみません。


「タマはこの村を代々見守ってきた魔法猫。昔餌付けしたら懐いて」

「餌付け……? ふむ、にしても魔法猫とな?」

(魔法猫だと! 彼等がいるのか!?)


 今度はカーバンクルが異常に反応してきた。

 次から次になによ……


(す、すまん。それで、どうだったのだ?)

「嘘はついていないと思う。初めてだから微妙だけど……」

(そんな馬鹿な!? では誰が攫ったと言うのだ!)

「さすがにそこまでは分からない。そもそも、この二人が攫ったのを見たってこと?」

(いや、匂いだ。)

「え?」

(我らは人間とは関わらない。だから、我らの同胞の匂いがついている時点で、そいつらが攫ったのが分かる。)

「そんな匂いするか?」

(人間の嗅覚ではわからんだろう。)

「でも……違うっぽいぞ?」

(しかし、匂いは確実にしている。)


 おかしいな……

 このままではカーバンクルは僕も嘘をついてると思うんじゃないかな。


「あ、あの」

「ん?」


 悩んでいるとジョンから声をかけられた。心当たりがあるらしい。深呼吸して、ゆっくりと話してくれた。


「カーバンクルの子供かは分からないけど、変わった獣が昨日じゃれついてきたよ?」

(ナン……ダト!?)

「ナン……ダト!?」


 ナン……ダト!?


 カーバンクルの額に冷や汗のようなものが見える。まずいと思っているのだろうか。だが、今の証言を参考にするなら少し聞かなけれならない。

 俯くカーバンクルの顔を覗き込んでじっと目を見つめる。

 カーバンクルは居心地悪そうにそっと目を背ける。


「へいへーい。カーバンクルさんよォ。もしやおたくの方から仕掛けてきて、まさかそれをなすり付けようって魂胆かい? どーなってんだー!」

(いや、違うのだ!)

「なにが?」

(攫われたのは事実なのだ。だから、急いてしまって匂いから二人のことだと……)


 ほーん。

 まぁ仕方なくもあるか。

 攫われているのが本当なら焦りもするわな。

 そこで匂いの付着しているお二人と出逢えば、まぁ間違いないと思っちゃうな。

 違ってたけど。


「ともかく、二人は白だったってことだな! いやぁ、良かった良かった。一件落着!」

(なにもよくないわ!!!)


 大きくツッコミが入った。けれど、二人の無実は証明されたし、僕たちに出来そうなことはこれ以上特にない。


「まぁカーバンクルさんはそうだな。まぁまた探してということで、じゃ!」

(ちょっ! おま……!)


 踵を返し、皆の無事を喜ぼうとしたが、すぐに焦るカーバンクルに呼び止められる。


「ん? なに? まだなにかあるのかね?」

(……助けてくれるのではなかったのか?)

「え? なんのはなし?」

(いや、助けたいとかどうこうって……)

「あぁ、聞いてたの? やっべ! 恥ず! どこから!? 全部!?」

(い、いや、途中から何故か聞こえなくなってしまったが……)


 あっ、そうなの。

 途中から聞こえなくか……

 思い当たる節はある。その妨害をしたであろう張本人と会ってみたいな。


 あっ、ルビアス?


 ─なに?─


 お、繋がった。

 今どこ?


 ─あなたと共にいる─


 いやそうじゃなくて……


 ─分かっている。でも本当のこと─


 つまり?


 ─今、あなたと私はひとつになっている─


 物理的に?


 ─正確には精神が─


 オー。

 マジカ。


 ─マジダ─


 離れることできる?


 ─どうして?─


 お前の姿を見てみたい。


 ─分かった─


「おわっ!」


 なんか離れた!

 なにこれ!?

 いやルビアスなんだけど……

 あっでも、よく分からないエネルギーはちょっと残ってる。

 ありがたい。


「どうしたのじゃ?」

(今、妨害していたのは何故だ。)


 あっ、やっぱ妨害してくれてたんだ。

 長老とカーバンクルは気づいたらしく、キョロキョロと周りを確認していた。だがもちろん、そんな近くにいるわけではないので見つかるはずはない。


「なんでもない……わけではないけど」


 ルビアス。

 みんなもつれて行っていいか?


 ─構わない─


 おっけ。

 ……ありがとな。

 色々と。


 ─どういたしまして─


 じゃあ行くか。

 あの祠の場所に。


「みんな、ついてきてくれ」

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