転生者TKH⑧
ブランデュルフル、危険度5の巨狼の魔物。
大きな群れを率いる、ウルフルのリーダー個体だ。そしてもちろん、その強さは危険度2のウルフルやスライムなどとは一線を画す……
「皆さん……私が時間をかせぎます。その間にできるだけ遠くへ逃げてください」
「先生!」
「そんな、いくらなんでも無茶ですわ!」
「いいから行きなさい。私の調査が不十分でした。まさかこんな所に危険度5の魔物が出るなんて……さあ、はやく!すぐに追いつきますよ」
およそ20mはあろうその巨体の主は、俺たちの会話を気にすることなくいつでも飛びかからんとしている。
そして、ウルフルも逃げ場を無くすように俺たちの周りを囲い始めた。
「はぁぁあ!我!風の精霊、水の精霊との魂の契約により!」
逃げるのを躊躇している俺たちを無視して、先生が詠唱を始めてしまった。
こうなったらもう、俺たちに止めることは出来ない。
もしも止めたら、全員揃ってお陀仏だろう。
それだけの力量差が俺たちとこいつにはある。
危険度5、それは騎士や冒険者がいるはずの街でさえ半壊にしてしまえるような化け物だ。
ただの学生の俺たちが戦っていい良い相手じゃ、ない。
「くそっ……先生、先に行って、待ってます!だから、どうかご無事で」
「……先生、またあとで!」
俺とハルトの言葉に、先生はただ優しく笑って、頷いた。
格闘する先生達を背に、ハルトと連携してウルフル包囲網を突き抜けていk……て、あれ?
クズヤは?
「大いなる、星霊の力を行使する……!奥義!天ノ……」
「ふふ、先生。ここは僕に任せてよ。やぁっと大物が来たんだからさ!」
振り返ると先生の詠唱を制止して、ブランデュルフルと対峙するクズヤの姿が……!?
「ちょ、おい!あいつなにやって!?」
「るんだ!?」
今はハルトの変な返しにツッコミを入れる余裕はない。
急いでまた逆戻りしていく。
いや、ほんとに何してんだよあいつ!
いくら転生者だからってあんなのに勝てるわ、け……?
来るまでにそんな時間はかかっていないはずだ。
というか、10秒もないぐらい。
それを目の前の光景が否定しているようだった。
無傷でドヤ顔のクズヤと、無傷だけど怯えた表情で驚きで声が出ない先生、そして
「はい、お手〜」
飼い慣らされたようなブランデュルフルの姿だった。
……え?どういう?
「あ、えーと、アルトくん?その子はどうしたのかなぁ?」
念の為、聞いたところでなんにもならないのは分かっているけれど、一応聞いてみる。
「さっきの子だよ?ほら、危険度5を従えるってまさにチートじゃん!やりたかったんだよ!」
「あ、あはは。そーですか」
いや、自分で言っといてなんだが、そーですか。じゃねーだろ!
やりたかったってなんだ?
あ、なるほどなるほど。だからクズヤは強いのと戦いたかったのか。そこは理解した。
理解したけど納得はしてないけどな?
で、まずどうやってこんなのを手懐けたんだよ。
「これが……異能力の力ですか」
「ん、ああ。そういう事か」
ハルトの発言でこれも理解はした。
『統率王』か。
どんなものでも操ることが出来る力……確かにチートだ。
改めて異能力、俺たち転生者の恐ろしさを実感した。
クズヤも、昨日の今日でもう使えるようになっているなんてな。
俺でさえこんな調子なんだから現地人の先生には更によく分からないようで、
「ええ、え、えっ、えと、?これは?」
「ね、先生。僕の力ってすごいでしょ!だから龍相手でも良かったんだって!」
恐ろしいものを見るような目で、先生はクズヤを見ている。
分かる。気持ちはすごく分かる。
「そうだ!これからはこの子と一緒に暮らすから父上にも言っておかないと」
いや、いやこいつと住むの?
でかいし、危険度5だし、みんな怖がっちゃうよ?
「な、な?え?」
先生、俺も無理だと思う。
「アルト、それは無理ですわ」
ナイスだハルト。俺と先生の言葉を代弁してくれてありがとう。
「すぐにギリュアリュに行くのですから。連れていくのならともかく、一緒は無理ですわよ?」
ちげーだろ!そこじゃねーだろ!
言いたいのに、言えない!
まさか、クズヤが俺を操って?
なわけないだろうけど、この言ったらもっと恐ろしい目に会いそうだから言えないな。
これが恐怖政治か。なるほど、『統率王』。
─帰城後─
「……アルト。こいつはなんだ?」
「飼ってもいいよね?」
父上頼む、いつもみたいに甘やかすな。
ダメと言ってくれ。
「ダメ?」
やめろクズヤ!
お前、前世合わせたらおじさんだからな?
可愛いポーズとか恥ずかしげもなくするな。
こっちが恥ずかしい。
というか、それやられたら父上ほぼ負け確だな。
「わかった……ちゃんと世話するんだぞ。途中で投げ出すことは許さん」
「ありがとう!父上!」
あー、終わった。
だと思った。
10話分投稿し終わる前に多忙期だー!
すみません……また不定期投稿になります……
申し訳ございません。。゜( ゜இωஇ゜)゜。




