70,ロマンで語れ
「ではそういうことで」
「おう。ありが……ん?ちょ、ちょっと待てそこの坊主!」
クドタークさんとの話も終わり、店から出ようとした時に呼び止められた。
「いや、悪ぃ。焦って坊主なんて言っちまった」
「あ、いや気にしてないので大丈夫ですよ」
「そうか」
「それで、なにか?」
「あ、ああ! それだ! それ!」
「これ?」
クドタークさんが僕の腰、剣を指さす。
彼が言う"それ"とは、僕の剣『輝』の事らしい。
「なんで、剣に名前がついてるんだ!?」
「え、武器って名前ぐらいあるんじゃ?」
「いや、そうだけどそうじゃねぇんだ! 名前は確かにあるが、鑑定眼で見える名前なんて初めて見たぞ! それ、どこで買った!?」
「え、あ、えーと」
「クドタークさん。この剣は彼の父親の形見と言うだけで、彼自身もよく分かっていないんです」
あまりの勢いに少し怖気付いてしまった可哀想〜な僕を、やはりタマが助けてくれた。
しかも言ってることはあながち間違いじゃないしね。
でも、古代語を見られたのはまずいかも。
知らなければなんとも思わないのかな?
「そ、そうか。すまねえ。アレンつったか。ちょっと近くで見せてもらってもいいか?」
「……構いませんけど」
彼はがっつくように、隅々まで観察している。
「この魔力の流れ、動きは……まさか《星霊の雫》か? だが星霊の雫なんてもん一体どこで……いやしかし……」
ずっとブツブツと独り言を言っている。
「あのー」
「ッ!? おっと、少し自分の世界に入ってたみたいだな」
少しというかなんというか。
「なあ、出来ればでいいんだが、その剣を少しの間貸してくれねぇか……? 会ったばかりのやつに形見を貸すって変な話だが」
「えーと、それは……」
貸す?
『輝』を?
形見かどうかって言ったら別にそうじゃないけどさ。
大洞窟ではお世話になったし。
というか、こんな危険な代物を初対面の人にあげてもいいのか、と。
「お礼の金も払うし、1日金貨2枚でどうだ? 先払いで今でもいいが」
お金は特に要らない……というか分からないしなー。
やっぱここは断わ……
─私はいいと思う─
本気か?
─この男は信用できる─
根拠は?
─私がそう思ったから─
……わかった
─ついでにあの蜘蛛女から貰った石も渡して─
あれを?
なんで?
─魔力操作を高める石なんて、剣に組み込まない選択肢ある?─
なるほど!
ないな!
「分かりました」
「ほ、ほんとか!?」
「おい!アレン!大丈夫なのか!?」
「うん、大丈夫。それで、これも……」
懐に入れておいた紅玉を手渡す。
受け取ったクドタークさんは鑑定眼で調べているけど、どうやら分からないらしい。
「こいつぁ……?」
「ルビーです」
「!!!!!?」
……固まった。
「ここここ、こんなもの俺に渡してどどどどうすすすするんだだだあああ?」
言わない方が良かった。
そうだ。たしかに貴重とは言ってた。
しかも【王種】が言う貴重だもんな……
しくじった〜!
「え、えーと。ひとまず落ち着いてくださいね」
「おおおおちつついいてるぞおお」
あ、なんだ。
「じゃあ。えーと、お金は要らないので代わりに、この剣に嵌め込んで貰いたいんですが」
「は?」
「は?」
「は?」
「は?」
「は?」
な、なんで?
みんなの視線が痛い!
「……これを嵌め込む、か」
「ソウデス」
「ふふふ、この星霊の雫でできたかなり変わった剣に紅玉を!?」
「ハイ!」
「いいなぁ!ロマンじゃねぇか!!そんなことなら任せておけ!最高の出来に仕上げてやるからよ!」
この人、話が通じる!
なんていい人なんだ!
気難しいだなんてとんでもない!
「よろしくお願いします!」
「おう!調べる作業に1ヶ月、嵌め込むのには10日と言ったところだな。定期的に見に来てくれ!」
「了解!」
「えーと、それで代わりの剣がいるよな」
そう言った クドタークさんは店の奥、恐らく作業場に入っていき、戻ってきた彼は二振りの大剣を持っていた。
あ、いや普通だ。
本人が小さいから剣がやたら大きく見える。
「俺の渾身のひと振りと、師匠から頂いたひと振りだ」
クドタークさんがその師匠から貰った剣を鞘から抜いて見せる。
変わった剣だな。
両刃じゃなくて片刃だし、後ろに反ってる。
「……刀か」
「そうだ。この綺麗な波紋を見ろ!いつ見ても見蕩れちまう……」
「たしかに、凄い綺麗ね」
うん。芸術的な模様だ。
あまりの美しさに目を奪われる。
でもなぁ。
「だが、アレンには使えないな。刀の振り方は、流石に教わってないだろ?」
「うん!そもそも刀自体初めて聞いた!」
「だよな」
「じゃあこっち、だな」
クドタークさんからもう片方を受け取る。
試しに、鞘からは抜かず構えてみる。
!?
「嘘だろ……こんなに?」
「どうした!?」
「こんなにしっくりくる剣があるなんて……思いもしなかった!」
いや、急に静かになられても困るんだけど……
「ガハハハハ!そうか!気に入ったか!」
このなんとも言えない空気を破ってくれたのはクドタークさんの大きな笑い声だった。
やっぱいい人!
「そうだ。せっかくだし、これからお世話にもなるんだ。なにか欲しいものあれば言ってくれ!金は取らねぇ!」
よ!太っ腹〜!
「私は基本武器は使わないから大丈夫ね」
「私もです!」
「……俺も既にこれがあるからな」
「そうだなぁ。俺も武器はあるし、鎧は俺の戦い方と相性悪いしなぁ」
「そうか」
ありゃ。
なんかクドタークさんが可哀想だ……
「おっ、じゃあオレいいか?」
「いいぞ!なにがいい!?」
ラウルがいた!
あと、スリンフィアは……どーなんだろ?
そもそも出来れば戦闘に参加させたくはないし。
「えーと、オレはどの武器でも大丈夫なんだが、選べるなら戦斧を使うんだよな。だからかっこいい戦斧を!と思ったが……やっぱどの武器でも対応できるように鎧の方がいいな」
「鎧だな?待ってろ!」




