54,創世の堕天妖精
「やっぱでけー」
「さ、中入るわよ」
「お、おう」
毎回驚いてちゃだめだな。慣れないと。
アンナと一緒に中に入る。やっぱ中も広い!
おっと。慣れる慣れる慣れる。
中に入ると昨日の僕のように、幻影で試験をしている様子が映し出されているのが目に入った。
やっているのは金髪の……なんだろうあれは……眼鏡?
レンズが黒いけど見えるのかな? 比較的若い人だ。
戦ってる相手は……おわ!?
創世の堕天妖精!?
危険度6の魔物だ。こんなのまで生け捕りにしてるのかここ!!?
創世の堕天妖精はどう説明すればいいか、とりあえず虹色に発光している。半透明で硬く、そして柔らかい矛盾の外皮を持つ。ブヨブヨしているけど貫けないみたいな。頭部?から繰り出される無数の触手は重たく、速く、そしてしなり、鉄などいとも容易く貫く。また、宙に浮いている為に移動速度もそれなりだ。他にも、頭部内にあるコア部分から石を溶かすほどの高熱線を放ったり、逆に周囲一帯を凍らすほどの冷気も放つ。あと、捕食形態とかいう通常時よりも1段階上の形態もある、だったかな。
まさかこんなところで見られるとは、というか危険度6って……てことはこれはA級試験かな? ラウルとかこんなのやったのか? スーパークリオネは危険度6の中で最も危険度7に近いらしいけど。
まあね、僕もやれなくはないだろうけどさ。危険度5までしかやった事ないから少し不安。
にしても、あの金髪と変な眼鏡の人やるなあ。一切攻撃を受けない。それでいて逆に攻め際がわかっている。鋭く速い触手の連打を回避しつつ魔法で牽制。怯んだところで剣の間合いまで一気に詰め寄り、一撃を食らわしてバックステップで距離をとる。お、また1本触手切った。
なかなか参考になるな~。でも、この戦いよりも僕に視線が集まっているのは何故だろうか。
「兄貴!」
「兄貴頑張ってくれでやす!」
応援されてる。いいなー。
スーがいたら僕も応援してもらえたかなー。
そんな中、特に興味を示さない者が1人、アンナだ。
「ほら、早く来なさい。急がないと他のやつに取られるわ」
「分かったよ」
もっと見たかったな。
受付に行くとララさんがいた。顔見知りがいると安心するね。でもあの試験はララさんじゃなくていいのかな。S+からって言ってもあれは……
え? アホそうな男たち? 今は見かけない。
さ、そんなことよりララに依頼について聞いてみるか。
「あの、ララさん。依頼受けたいんですけど」
「アレン、あそこの掲示板にある程度は貼ってあるから、そこから選んで持ってくるのよ」
「え、そうなのか? ララさんごめんなさい」
「いえいえ、かしこまりました。お2人はどういったものをお探しで?」
しっかりと対応してくれるらしい。
優しいねー。忙しいはずなのに。
真面目と言うべきか?
「そうね。ヘビィ大洞窟に大勢で潜るのだけど、とりあえず魔物討伐がいいかしら、採取系でも悪くは無いけど目利きが出来そうなのが誰も……いや1人しか居ないから。実力は全員それなりだから結構深くまで潜るつもりよ」
「では魔物討伐、A級以下までを探してきます」
「あ、ルドルフっていうS+級もいるわ」
「あらあら」
ララがこちらを見る。なんで。
「かしこまりました。それではSS級未満までで探してきます。ただし、出来る限り失敗はなさらないように。申し訳ありませんが、責任全ては流石にカバーしきれませんので」
「もちろんよ」
よく分からないが大丈夫らしい。
少し経ってからララさんが数百枚程度の紙の束を持ってきた。
あれ全部が依頼? わぁお。
というかララさんが優秀すぎる件。
「お持ち致しました。こちらがヘビィ大洞窟での依頼、もしくはヘビィ大洞窟で出現する魔物の素材納品の依頼です。全部受けるのもご自由ですが、出来る限り依頼完了が可能な範囲でお願いします」
「ええ」
「それでは選び終えましたらまた呼んでいただくか、あちらのカウンターまで」
そう言葉を残してララさんは別の作業に行ってしまった。やっぱ忙しそうだ。人も増えてきたし。
「にしても多いわね」
「だね。掲示板もかなりでかくて色々あるけど、これもっとあるんじゃないか? こん中から選んでくとか……考えただけで疲れるな」
「ええ、まあこれも冒険者としての大事なことよ」
─数分後─
「……アレンにアンナ」
「うわっ!?」「きゃっ!?」
「……驚かせて……済まない」
夢中で、というか必死で依頼内容を確認して取捨選択していたところに突然話しかけられて驚いてしまった。
相手は、
「ルドルフか、どうした?」
「……俺たち……依頼を受けようとな」
「俺たち?」
首を傾げていると入口付近から声が上がった。
「ちょ、ルドルフ! ほんとに、早いってば!」
ぜえぜえと息を切らして近づいてくるのは昨日ルドルフと一緒にいた龍人族の子だ。
「あら? この子達は?」
「……昨日言ってたやつだ」
「ああ、貴方がアレン君か! そして貴方が、アンナさんね!」
「え、ええ」
アンナが勢いに圧倒されている! なんてことだ!
「あ、ごめんなさい。私はジャスミン・リーパ、龍人族と人族のハーフよ! ランクはB+。ちなみに、空間魔法をこの歳で使えるの! ほんっと私って天才! あ、片親が龍人族だから勘違いされるけど、まだ16歳なのよ?」
「ス、スゲー」
「でしょでしょ? もうこのまま大魔女様超えちゃう?みたいな?」
圧倒されているのはアンナだけではなかった!
というかよく一緒にいるはずのルドルフですら怯んでいる! 僕らに勝ち目はないのだろうか!
でも、最後の台詞はアンナの前で言っちゃうのは。
「う、うそ。空間魔法……この歳で? どうしよう。私の立場が……え?」
あ、それどころじゃなさそうだね。




