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太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜  作者: 日孁
第1章~純白の支配者~
19/86

一方その頃タマは……

「……なあ。本当にこいつなのか?」


 タマが椅子に縛られた一人の少女を見据えながらそう尋ねた。


「あぁ。こいつが俺たちの依頼主だ。こう見えても高位の魔女だからな。今は静かにしているとはいえ、気をつけろよ。」

「ほぉーん。忠告ありがとな。」


 少女がキッと金髪グラサンを睨みつける。

 しかし声を出すことはしない。

 いや、出来ないのだ。

 少女はタマと自分の実力差をはっきりと理解しているから。

 先程、金髪グラサンが説明したようにこの少女は高位の魔女だ。そのため強い。が、だからこそタマの中に流れるエネルギーの量と、その質を目の当たりにしたことで言葉を失っているのだ。


「まぁこいつが黒幕ってんなら、俺の仕事はここで終わりだな。」


 タマがしみじみとした様子でそう言った。


「3ヶ月もただ歩いただけだったな」

「あんな辺境からこんな都会まで、3ヶ月で来れたのは早い方だぞ?」

「そうなのか。まぁ何はともあれ、これでお前達とはお別れだな」

「……あぁ、なんか寂しくなってくるな」

「タマの旦那ァ……!」

「もっと一緒に居たいでやすー!」


 四人はこの3ヶ月の内に、仲が深まっていた。

 タマと金グラは兄弟分として、タマと二人のスキンヘッドは親子分の関係として。アレン以外の人と関わったことの無かったタマからすれば大切な縁となった。

 だから、寂しそうにしている三人がとても可愛く感じてしまう。

 だが、帰らないわけにもいかない。

 この依頼は王種たるルイフからであり、タマにはそれを達成させる義務があるのだから。

 だからタマは一言、


「今まで世話んなったな。」


 そう言って、少女を連れて去って行った。



 ───────────────────


「ほんとに行っちまったな。」

「はい……」「でやす……」


 スキンヘッド二人がまたべそをかく。


「ったく、メソメソすんじゃねぇ! それでもお前らはタマの子分か!」


 金グラが二人の頭に拳骨を食らわせながら怒鳴る。


「いいか。もう俺たちは後戻りしねぇ。これからは善き冒険者として、大勢の人助けをやっていくぞ!」

「は、はい!」「で、でやす!」


 後に3人は冒険者ギルドに登録し、数多くの人々を救い名を馳せていくことになるが、それはまた別のお話。



 ───────────────────


 私はアンナ、一応高位の魔女よ。

 でも、そんな私が今は縛られてどこかに連れていかれている。

 相手は高身長で結構イケメンの男の人。

 それは置いておいて、この男おかしいわ。

 私は魔人族、しかもごく稀に存在する鑑定眼と呼ばれる能力を持っているの。

 魔人族ってのは魔物と人族を足して2で割ったような見た目で、実際に祖先は魔物とも言われているわ。

 つまり、数ある人種の中でも魔力(マター)を多めに持っている方なの。

 それなのに、よ。

 それなのにこの男はその私を明らかに上回る量と質の魔力を持っているわけ。

 私の鑑定眼で確認したから間違いない!

 恐らく、エルフよりも上じゃないかしら?

 だから私は抵抗なんてしなかった。

 したって無意味なことぐらい分かるから。


「ふむ、もうここらでいいかな。」


 彼がそう言って指を鳴らす。

 すると、彼の姿がみるみる縮んで……


「ね……こ?」


 小さな茶トラの猫になった。


 待って、ちょーっと待って!

 え? なんで猫?

 魔物なの!?

 魔物って人化出来たっけ!?


「ん? 猫だが、なにか問題かな? ともかく、お前どうしてあんなことしたんだ?」


 色々と頭を抱え込みたくなった私に、猫が聞いてきた。


 問題大有りよ!

 あぁ頭がおかしくなったのかもしれない。

 でも、ふふ。

 なんで……ねぇ。

 この猫は勘違いをしている。

 きっとこいつはカーバンクルを攫うように仕向けた黒幕が私だって思い込んでいるんでしょう。

 いいえ、そう思わせているんだもの。

 あの男達と勘違いしていた。

 だから本当の黒幕であるあの方には辿り着けない。

 所詮、私もあの人にとっての捨て駒。

 こうやって勘違いしてもらっていた方がありがたいわー。


「お前、やっぱ黒幕じゃないのか。」

「は?」


 え!?

 こいつなんでその事を!?

 なにか私そんな素振りした?

 いいえ有り得ない。

 一番にそうしないよう意識していたし、口にしたことも無い。

 じゃああの男達が?

 いやそれも無いわ。

 そんな話をした事ないし、それにこいつは今気づいたようだった。

 一体、どうして?

 いや待って、私が考えた瞬間に気づいたようだったわね。

 ということはこの猫は、人の心を読むことが出来る?

 ええ、それが一番有り得るわね。

 噂だと魔法を極めた者は相手の心さえも読めると聞くし、こいつに出来ても不思議ではないわね……

 だとすると今も覗かれている可能性がある。

 つまり、あまり重要なことは考えない方が良さそうだわ。


「凄いなお前、今のだけで分かったか。正解だぞ。」


 ……なんでわざわざ正解を教えてくれたのかしら?

 いや、これは罠かもしれない。

 もしかしたら更に心の奥の奥まで読めるけど、そう思われないようにするために?


「……いや、別にそんなことできないけど。」


 全く何を企んでいるのかしら。

 分からないわね。


「わー! もうめんどっちいな!」

「え、ちょっと!」


 猫が魔法を使って?私を浮かせた。

 どうやらこのまま運ぶらしい。


「とりあえずお前を連れていく! 話はあとだ!」


 どこに連れてかれるのだろう……

 私は生きて帰れるのだろうか?

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