10,王種からの説明②
昨日の分…
一日に3話ってだいぶキツイですね(笑)
(いやぁ、恐ろしいですね。)
「全くもって。」
(今言ったように私がここの守り神であったから、これが理由の一つです。そして、もう一つは。)
今の理由だけでも十分、この場にルイフがいる説明にはなっているのだろうが、まだあるらしい。
ルビアスが尻目に欠伸をしたのが見えた。
なにも気にしないでいいのが羨ましい。
(私は普段、この村にはいません。それが数ヶ月前、竜様が目覚めた気配を察知しました。一体何事かと思い、急ぎ戻ってきたのです。私もこの祠の存在は聞いたことしか無かったので、まさかとは思ったのですが。)
欠伸をするルビアスを見ながらルイフはそう言った。
ルイフの説明に長老が続ける。
「そう。そして、この前にこやつらが行方不明になった晩じゃ。あの時、ルイフ様に呼ばれて、その話をしていたのじゃよ」
ブランドンとジョンが行方不明になり、僕とスーで探しに行った時だ。確かにあの時、違和感はあった。
突然の威圧感もルイフが放っていたのだとすれば辻褄が合う。
「そうだったのか。あの時、長老の顔が青ざめていたから一体何事なのかと思ってたんだよ」
「突然の事だったからな。俺も聞いた時に焦ったさ」
(理由はまだあります。)
ルイフは今度はカーバンクルの方に向き直った。
(カテュラ、あなた達カーバンクルにも関わることです。)
(まさか……!)
(そう。あなたが探していた、カーバンクルの子供を攫った犯人。その方を消しにいくためです。)
怖!
【王種】が襲ってくるとか、怖すぎだろ!
「同情するぜ犯人……」
(同情しないでください。)(同情するなよ。)
「あい」
同時に突っ込まれてしまった。
(それで、どうなったのですか?)
(ええ。無事に救い出しましたよ。ただ……)
(ただ?)
(捕まえることは出来ませんでした。目的も、黒幕が誰がかもわからずじまいです……)
(……そうですか。ですが、救い出してくださったこと、心より感謝申し上げます。)
(いえ、これぐらいのこと。)
(そうは言っても、我らにはどうすることも出来なかったでしょう。ルイフ様の御力添えがあってこそです。)
(それならば良かったです。今後はより警戒してください。)
(はい。)
王種ですら尻尾を掴めない誘拐犯。
ただものでは無いな。
つまり、その犯人たちを捕まえてこいと言うことですね?
了解! ルビアス行くぞ!
─アレン、まだ話終わってない─
えー。
でも絶対言うでしょー。
それなら早いうちにいって終わらせた方が良くない?
ルビアスが蹲り、片目をほんの少し開けて僕のことを引き止める。動く気はありませんってことだろう。
(私がアレン様にそんなお手数をおかけすることはありません。)
「え? 違うの?」
(行きたいのですか?)
「いや、絶対嫌だ」
ルイフが軽く心の中を読んできたのは置いておいて、返事は絶対にNOだ。
だってそいつ、どう考えても強いでしょ。
(ですよね。)
「うん。」
(正直、私からお伝えすることはもうありません。アレン様から聞きたいことがあれば、答えられる範囲の受け答えはしますが。)
「あぁそう? じゃあまず、なんで僕がルビアスに選ばれた?」
他にも候補ならあったはず、だって強さだったらリアなんかの方がよっぽどあるし。
(それは私には分かりません。竜様にしか。)
全員の視線が今にも寝ようとしているルビアスに集まる。
しかし、そんな状況を気にしないルビアスがまた大きな欠伸をした。
─アレン、君は魔力、聖気ともに皆無だった。だから、私との適性が良かったんだ─
なんか知りたくない情報だなー。
つまり?
─君は自分の魔力等がないわりに、その器が大きい。そこに私のエネルギーを注いだ─
(ふむ、何も持たないのがかえって良かったのですね。)
「そこ、強調しないでください。」
よく分からんが、普通はコップ1杯満杯に水が入ってるから注いでも零れちゃうけど、僕は容量バケツのくせに水が1滴も入ってないからどぶどぶと入れれちゃうと。
そういうことかね?
─そう─
(先程アレン様がカテュラに治療したのは聖術の方ですね。そして《竜力纏》を使っておいででした。)
「あれが聖術かぁ。えっと竜力纏?」
(相棒となる竜とひとつになり、力を借用する技です。)
「ほう。なにやら難しそうだね」
(ええ難しいです。普通は直ぐに出来ませんよ。)
なんとなく言ったけど、実際難易度は高かったらしい。
マジか。すごいことしてたのか。
やったな!
(失敗すれば、精神が戻れなくなりますけど。)
マジか。やばいことしてたのか。
あっぶね!
「ちなみに他にも理由ってあるの?」
─もちろん。けれど、あとは感覚的なもの。運命なんだよ─
「そうか。まあ、そのうちその理由も分かるか!」
(竜様、それで……)
─竜と呼ぶな。ルビアスと呼べ─
ルビアスが歯をむき出して威嚇する。
ちょっと怖い。
(失礼しました。ルビアス様、それで何が起こるのです?)
「ん? 何か起こるの?」
ふとタマの言葉を思い出す。
あぁとんでもない災禍、ね。
忘れてた……死ぬかもしれないやつだ……
─知らない─
知らないの?
─そう、知らない─
そっか
(やはりそうですか。)
「知ってたんかい!」
(いや、もしかしたらと……エイディンになる竜様方は、各々本能でそうすべきと判断して行われるそうで。そこに なにが や どうして は含まれません。勘です。)
確かに何億年もの間、起きたことの無いほどの災禍があるとしたら……知りたくもなるか。
(他に聞きたいことはありますか?)
「んーと、じゃあ過去に竜に選ばれた者達ってどんなふうなの? 詳しく知らないからさ。」
それを聞けば何らかのヒントが得られるかもしれない。これから起こるだろう災禍について。
(そうですね。では、竜に選ばれた者達について話しましょう。)
「頼む」
(ご存知の通り、竜というのは生物を超越した存在です。我ら王種と同じ【神格種】に分類されていますが、実際は竜の方が格上になります。そもそも、王種は竜によって生み出されたのですから当然です。彼らは何かが起こりうる未来を予感し、エイディンとなり相棒を待ちます。そして、相棒に選ばれた者は、ほぼ不老不死の存在となります。)
ん? なんて?
「不老不死……?」
(そして、竜との繋がりが強ければ強いほど、調和率は上がっていき、その存在は世の理から外れたものとなっていきます。)
「とばすな! 不老不死とかめっちゃ重要だろ! それで、世の理から外れるってなんだ!」
どーなってんだー! こんちくしょう!
(え? あぁ、ほぼ不老不死ですよ? ほぼです。)
「いや、ほぼって言ってもねぇ。」
不死の象徴とされる吸血鬼族は存在するらしい。彼らは太陽に焼かれたら消滅するが、それ以外のダメージは入らない。
そんな彼らは、呪われた者たちとも呼ばれている。
太陽の下を出歩けないこともあるだろうが、死なないってことをみんな一種の呪いとして扱っているんだ。
そんな存在になったってことだ。
(だって、相棒が死なないとお互いに死にませんもの。不可能でしょう? 竜を殺すなんて。)
「……じゃあ世の理を外れるってのは?」
(それは単純に強くなるからです。時が経つにつれ竜様から引き出せる力が増えていきますし、竜様自身が成長とともに強くなっていく。)
んー、イマイチわからん。
(先程言いましたように、普通、竜を殺すことは不可能です。そして、時が経つほど強くなる。分かりましたか?)
「……なにそれ最強じゃん」
(竜とはそもそも神の如き存在なのだから当然です。それに、そこまでしないと災禍には抗えませんから。)
災禍怖すぎ!
「ん? ならルビアスの親とか、今まで選ばれた人達は今どこに?」
生きてるってことだよな。
(分かりません。)
「え?」
(分からないのです。)