① 信頼は少しずつ育つもの
この十一年間を振り返ると、私は人を信頼することについて考えるようになった。
私は最初から人を信じることが得意だったわけではない。
相手が何を考えているのか分からず、不安になることもあった。
自分の言葉がきちんと伝わっているのか分からず、何度も考えてしまうこともあった。
人との距離感が分からず、近づきすぎてしまったり、反対にうまく踏み出せなかったりすることもあった。
だから信頼というものは、私にとって簡単なものではなかった。
しかし振り返れば、信頼は一度に生まれるものではなかったのだと思う。
一回の言葉。
一つの返事。
一緒に過ごした時間。
何気ないやり取り。
そうした小さな積み重ねの中で、少しずつ育っていくものだった。
家庭教師との一年間も、彼との三年間も、彼女との八年間も、最初から特別な意味を持っていたわけではない。
関わりが続く中で、少しずつ自分の中に残るものが増えていった。
そして気づけば、その人たちは私にとって大切な存在になっていた。
信頼とは、相手を完全に理解することではないのかもしれない。
不安がまったくなくなることでもない。
それでも関わり続ける中で、この人の言葉を受け取ってみようと思えること。
自分の言葉を少しだけ渡してみようと思えること。
そうした積み重ねが、信頼と呼ばれるものなのではないかと思う。
二十八歳になろうとしている今、私はようやくそのことを少しだけ理解できるようになった。
人を信頼することは、簡単ではない。
しかし信頼は、時間をかけて少しずつ育っていく。
それが、この十一年間で私が学んだことの一つである。




