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第十五話 みらいのカタチ


 模型を作り始めて、5日が経とうとしていた。間もなく完成する。リアンは暇があれば、桐谷の手伝いをするために彼が経営する模型店に立ち寄っては色塗りなどの作業を共にしていた。パーツの組立はもっぱら作業に慣れている桐谷がしてくれていた。


「リアンさん!もうすぐ完成ですよ!やりましたね!」


 リアンはうっすらと涙を浮かべていた。リアンの目の前にはリアンの夢が詰まっていた。思い描いていた理想の畑が今、模型として見て取れるような形で姿を現したことに、色々な感情があふれ出ていた。

 リアンは小さく頷きながら、桐谷と喜びを分かち合い、これからの商店街について、考えを話し合っていた。


「私はこの畑を起点に商店街に人が増え、そして、食べ物屋さん、若い子向けの服屋さんなども商店街に取り入れていきたいんです。そうすれば、必然とここに訪れる目的も増えて、もっともっと、魅力を伝えていけると思うんです。新しいものだけではなく、昔ながらのお店ももちろん大切にしながら、新旧の融合が私の目標です。今手掛けている畑はその架け橋になればいいと思っています。」


 リアンは熱く語った。将来像を頭の中で描きながら夢に溢れている。真剣な眼差しで桐谷に話していた。


「リアンさん、あなたなら、絶対に出来ますよ。不思議ですね。リアンさんの言葉は不可能なことさえも絶対に叶うような気になってしまう。自然と背中を押してくれるような力強さというか、、。前向きな言葉に、言霊が宿っているのかもしれませんね。」


 最後にニコッと笑顔を浮かべて、桐谷はリアンに微笑んだ。その姿を見ていたリアンはなんだか恥ずかしくなっていた。熱く語りすぎてしまった自分自身を俯瞰してみた時、妙に力が入り、身振り手振りで伝えようとしていて、必死な姿が頭をよぎった。


 完成した模型を壊さないようにそっと屋根の部分を外し、内装部分を確かめる。ほぼ、リアンの思い通りの内装となり、体育館も半分は残す事が出来るようだ。畑の面積もおおよそ200平方メートル作れる予定だ。この広さなら色々な野菜が大量に作れ、農業体験も行うことが出来る広さだ。畑の深さは50cmを想定している。水が抜ける工夫も散りばめられたこの模型はリアンにとって夢の形となった。


 玄関は二重扉となっている。入口に入ると、左右に下駄箱が備えられていて、沢山のお客さんが来ても対応できるぐらいの大きさの下駄箱だ。そこでは、まず、スリッパへと履き替えてもらう予定だ。さらに奥へ進み、扉を開けると受付となっている。予約や長靴の貸し出しを行う。体育館と畑を囲うようにそれぞれ休憩室が設けられており、六畳の和室をいくつか公民館の名残で残してある。そこで子供連れの家族でも休めるような工夫を取り入れた。入口から一番遠い和室は改装して、プランター畑にした。ここではハーブ系の栽培が中心となる。入り口付近にはトイレとシャワー室もあり、土汚れを落とすために作った。今後、ボランティアや従業員で畑作業をしてもらうための、更衣室も設けている。


 道具入れやボイラー室、育苗室、堆肥室など細かい部屋割りも決めていた。洗い場やキッチンも備え付け、とれたて野菜を調理できるようにした。今後、販売するかはまだ決めてはいない。販売するとなると営業許可を保健所に取りにいかなくてはならない。追々考えるとして、リアンの理想が形になりつつあることを実感していた。


(畑も水が抜けるシステムにして、タンクにたまった水をまた再利用して、使えるようにしたいな。それに、自然の雨もタンクにためてポンプで地上にあげれば、再利用できるかもしれない。フィルターでゴミや不純物を取り除いたら野菜にも影響がないくらいには出来るかも。)


 リアンの頭の中のアイデアが膨らんでいた。公民館の屋根にはもともと備え付けられていたソーラーパネルを活用し、電気を補給。畑には日の光が入るように天窓と防虫ネットを取り付け、虫は外へ逃げることを防ぐようにする。ひかり観音の住職の要望もクリアしていかなければならなかった。


 これから、さらにリアンは忙しくなる。どんどん建築士さんとの打ち合わせをして、リアンの要望と実際の建築と法律の間で苦しむことになるだろう。それでも、リアンは喜びが勝ち、不安は何もなかった。


「リアンさん、明日には模型の接着剤も固まりますし、明後日の話し合いには間に合いますね。僕も楽しみです。」

「ありがとうございました。私の夢がここに詰まっていると思ったら、嬉しくなってしまいました。今度の話し合いも楽しみで仕方ありません。」


 2人はニコリと笑って、誇らしげな顔でお互いを称えあった。

 リアンの畑はやっと序章を抜けたのかもしれない。


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