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えーっと、過分な評価をありがとうございます

「えーっと、過分な評価をありがとうございます。でも、絶対無理です。私がテレビにでる?!何かの冗談ですよね。テレビに出る人は私みたいな一般人じゃなくて、後光オーラが射すような特別な人ですよね」


「薬師寺さんは間違いなくそういうカテゴリーの人ですよ。中々自覚できる人は少ないですけどね」


 ディレクターだと言う人が口火を開くと、工藤さんと二人で、再び褒め殺しが始まった。でも、私は自信がない。私は誰かがそばにいて支えてくれないと駄目な人なのだ。


 それなのに、ディレクターだと名乗ったおじさんは、ちょっとしつこい。私が説得されて「うん」と云うのが当たり前だという余裕が憎らしい。そうとうの自信家のようだ。


 私もその圧に折れそうになるけど……。自分のふがいなさは自分が一番よく知っている。曖昧な返事は結局後で自分の首を絞めることになる。


 何とかしてほしい。そんな気持ちで工藤さんを見たのに……。このオヤジは何か勘違いをしたみたいだ。


「工藤、俺は約束があるから席を外す。ここまでお膳立てしたんだから、後は工藤に任せるから」


 そう云って会議室を出ていった。

 私は不満を込めて工藤さんに言った。


「なに? あの人!」

「近藤さんはめちゃくちゃ忙しい人なんだ。OKKでもやり手でさ~。アマネも近藤さんの言う通りにしていれば上手くいくって」


 私のあげたミサンガが袖口から零れてアピールしてくる。これが工藤さんの出世の一歩?!

 でも、私の意志はどこにあるの?

「なんで、今日初めて会った人の言いなりにならなければならないの? まさか、枕営業をさせられるとか?」


 私は冗談で言ったつもりだったけど……。彼は私の瞳から目を逸らした。


「いや……、まあ、そんなことはないけど……。だけど、この業界は周りライバルだらけで、隙あらば、人気者にとって代わろう足を引っ張る人ばっかりだし……」

 

彼の返答は歯切れが悪い。やはり私を利用して成り上がるつもりなのか?

マスメディアの闇を感じた。彼は私をオヤジたちの生贄にしてまで、出世をしたいのでしょうか?


それで誰が誰の足を引っ張るって?

何を言わんとしているのか……、私はそれを追求する気はさらさらないけど……。


私と彼の間に疑心暗鬼が生じていていた。そんな会議室に飛び込んできた一人の女性。


「工藤君、スタジオにお気に入りのスイーツが無いんだけど! ケータリングはあんたの仕事でしょ! 役に立たないんだから!」


「ああっ、ごめん、ごめん すぐに買いに行くから」


「スイーツ堂のパンケーキサンドと、あと詫びに石窯堂のシーフードピザも」


「すぐ行ってくる。アマネ、悪いけど帰りはバスで帰ってくれる?」


「うん」

仕事の邪魔をしても仕方ないので、私はそう返事をして会議室を出ようとした。


「あれ、あなたは誰? 随分しょんべん臭いガキだけど……、なになに? 工藤ってこんなのを近藤さんに売り込んでいたの?

 あんたも止めた方がいいよ。ちょっと話題になったみたいだけど、所詮イロモノでしか需要は無いから!

 あっ、――えーっと、体を売り物にしようとしても、未成年はダメだからね。この業界も規制が厳しくて、どこでリークされるか分からないから未成年には手を出さないからね」


「バカ! 高校生相手に何言ってんだ?!」


「工藤、あんたは早く買い出しに行けよ! どうせ、この女も帰るし、二度とここに来ることは無いんだから!」


 一方的にまくし立てるこの女性は……、ああっ、OKK放送の人気アナの新庄寺リオンだ。


目の覚めるような美人だけど、テレビで見る清楚で控えめな印象と違って自己顕示欲が強そうだ。後、上から目線で先輩ぶっている所が何か勘違いしているようだけど、私は芸能人になるつもりなんてない。


 こんなご忠告、お門違いだ。でも、何を言い返しても言い訳にしか聞こえないのは、子供の頃から経験済みだ。


「失礼します」

「場違いだから二度と来ないで!」

 私はこれ以上ここに居るのはいたたまれない。早々に退散しようと挨拶をして、憮然とする新庄寺アナの隣を通り過ぎようとしたときに、私の方を見もしないで言い放った。

言われて新庄寺アナを睨み返す私など眼中にないのか、工藤さんに八つ当たりするように言ったのだ。


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