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それからは彼と会うと

 それからは彼と会うと、彼は今まで以上にスキンシップが激しくなった。会えばすぐに肩を抱こうとするし、人目が無くなると抱きしめてくるし、極めつけは自動車に乗ったら、キスをしてくることだ。


 迎えに来たらキス、送ってもらったらキス。もちろん舌と舌を絡ませるディープキスというやつだ。大人にはこんな風に自由に密室を手に入れることが出来るんだ。

高校生の私には想定外の空間だ。


 社会人はマイカーっていう武器がある。これに乗っていけばどこにでも行ける。


 電話で彼が卒業旅行の計画をやたら口にするのは、私とのエッチを期待しているに違いない。でも、さすがに外泊は無理だ。友達と口裏を合わせてとか言ってくるけど……。

 ユウナの両親もそういうのに厳しいし、ユウナ自身も工藤さんと付き合うことに諸手を上げて賛成というわけじゃないようだ。


「工藤さんって、誰にでも優しいでしょ。下心がありそう」

「そんなことないよ。私には特別優しいのよ。他の人には仕事柄、社交辞令だと思う」

「アマネってもう重症だね。それこそ錯覚よ。まあ、恋愛は錯覚と思い込みで成立するもんだって思っているけど……」

「なによ。その身も蓋もない言い方?」

「うん、工藤さんの凄いところは、彼自身がその錯覚を作りだせるところかな?」

「普通は周りのシチュエーションと周りが作り出す雰囲気で、恋愛って成立するの」

「なに、それ?」

「私の経験ではそう。恋愛って得体の知れないものだよ。冷静になって後から思うじゃないかな、雰囲気に流されたなって」


 うーん~、何を言っているのか分からない。私は自分の意志で人を好きになっているはずだもの


「だけど、工藤さんは別、自らそういった空気?を作り出す稀有な人。天性のナンパ師だね。アマネが後悔する前に、距離を置いて欲しいとこなんだけど……。諸手を上げて応援できないかな」


 人の彼氏を悪しざまによく言ったものだ。今から考えれば、ジュンキ君だって工藤さんと同じ穴のムジナだと思う。


 結論から云えば、まさかと思ったユウナの話も、すぐ未来の出来事だった。


 共通テストが終わって、学校の方は開店休業状態。高校の友達も予備校の大学ごとに直前講習に行ったり、私立の受験で授業に出ているのは一部なのにみんな忙しく過ごしている。


 そんな時に、工藤さんから電話があった。

いつもより真剣な様子で「直接会って話がしたい」という。私はまだ気持ちの整理も覚悟もできていない。


 ユウナの言った意味が少しならわかる。恋愛は形も定義もないもの。私は好きな人を「年上で頼りになる人」って自分でもわかるけど、その人とどうなれば恋愛となるのか分からない。


 唯一無二の存在とも思えない。もし、バージンをあげることでそんな存在に彼がなるなら……。彼にティーン雑誌にあるような快感を与えられたら、私は彼にメロメロに依存して、虜になってしまうかもしれない。


 ユウナも言っていた「処女女って重いよね。行動がそれだけで制限されるっていうか……、男にとって価値あるだけで、女には枷でしかない気がする。大学に行ったら即捨てるわ」

 いや、私はそんなこと、意識したこともない。って考えること自体が意識しているのか。恋愛うんぬんの前にそのことで駆け引き?考えることが多すぎる。

 気持ちも考えも整理されていない。


 そんな私の前に工藤さんがいる。後、ちょい悪おじさん? 場所はローカルテレビ局OKKの会議室。


 私の家に迎えに来た工藤さんは、私を乗せると「私の「今日はどこに行くの?」という問いかけにも「うん。大事な用があるから……、ただ、アマネからもらったミサンガ、もう効果が出たみたいだ」と、ほとんど説明も無しにここまで連れてこられたのだ。


「こんにちは、薬師寺天音さん。私はOKKの制作局のディレクターの近藤と言います。あなたに単刀直入に言います。テレビに出ませんか? 内容はこれから考えるんだけど、君はメディアを通してメジャーになれる」


 こんなの聞いてないよ。いきなりの発言に私は困惑して、工藤さんを見た。


「星雲祭の番組、各方面から反響が良くて……、あの生徒会長は誰だって?! ドキメンタリーなのに、女優を用意したと思われるぐらい。うちの上層部にも目を付けられてさ。とりあえず、大学生になったら、番組に出てくれないかな? 既存の番組の中で、誰かと変わるとか。他の放送局で気に入ったのがあったら、それをアレンジして番組を作るとか?

 アマネは出るだけで違う番組になるぐらいオリジナリティに溢れているし!」


 なんなのこれは? 褒め殺しですか……?



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