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グッド・ジョブ エピソード0  作者: 渡夢太郎
五章 ナチュラル・グリル
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誓い

「亮をこっちを見ておけ」

文明の三節棍は蛇のように男たちの体に絡みつき

首筋を叩き気を失わせていた。


翔記は円の動きで相手の攻撃をよけ、

棍で男ののどを突いた。

「さあ、行こう」

亮たち三人は素早く車に乗って走り出した。


「奴ら何者だったんでしょうね」

「戦闘訓練を受けていない様子だから、

暴力で支配している街のギャングだろう」

「問題はどうやって情報が漏れたかが問題だ」

翔記はそれが気になってしょうがなかった。


「とりあえず八人全員の顔写真は撮ってありますから、

警察で調べてもらいましょう」

「あはは、亮の人脈は特別だな」

文明は亮を頼もしくも、恐ろしく思っていた。


チャイナタウンに入ると文明が道案内し周りをもう一度確認した。

「そこを右、倉庫があるからそこに車を突っ込んでくれ」

「了解」


亮は倉庫に車を止めるとすばやくシャッターを下ろした。

すると十数人の男たちは現れた。

「ここまで来たら一安心だ!金を降ろすぞ」

文明はトランクを車から降ろすと男たちの間から老人が姿を現した。


「ご苦労だったな。劉文明、翔記」

「いいえ。こちらが仕事を手伝ってくれた私の友人、團亮です」

「初めまして、團亮です」

亮は翔記に習った中国語で挨拶をした。


「おお、これはこれは。王全櫂です」

王全櫂は手を差し出し亮と握手をした。

「この方がチャイナタウンのボスだ。ニューヨークで

何かあったら王さんに相談すると良い」


「はい」

亮は深く聞けなかったが、今回の取引は王全櫂の指示で文明が動いた

事が想像できた。

「さて、食事でもどうだ?」

「はい」

文明と翔記はにこやかに返事をした。

「文明、今回の取引相手は大丈夫だったんでしょうか?」

「うん、話をして今調べさせている。取引情報が漏れたのも心配だからな。

 追ってきた様子を見ると我々の金が目的だったのかもしれないな」

「そうですね」


亮は中国料理チャイニーズドラゴンで

食事をしながら文明たちと話をした。

「亮、今回の取引の手数料100万ドルが手に入る、

3分の1は分け前だ」

「いいえ、結構です」

「いや取っておけ、デビッドの会社に

出資してもいいじゃないか」

「ああ、それは良いですね」

亮はデビッドよりもロビンの生活を

安定させる必要があると感じていた。

「そうだろ。お金を大切に使えばいい事がある」


亮は尚子のいるアパートに戻るのが面倒なので

夜明けを待ちジェニファーに連絡をするつもり

で文明たちと話を続けた。

「亮は卒業したらどうするつもりだ?」

「アメリカでしばらく働こうと思っていたのですが、

製薬会社の方に問題があって

帰国するつもりです」

「僕は政治家の道を歩みトップを目指す」

翔記はこぶしを握った。


「俺は父の後を継いでユニオンチャイナグループをもっと大きくする」

亮は志の大きい二人を見て鳥肌が立った。

「よし!今日から我々は兄弟だ、互いの仕事で助け合えるように頑張ろう」

文明は亮の肩を抱いた。

「はい」

「よし、乾杯だ!」

亮は知らなかったが文明の言った兄弟は三国志の劉備、関羽、

張飛の桃源の誓い(生涯生死を共にする)を模して言ったものだった。


「亮、今何処?」

6時にジェニファーから電話がかかって来た。

「チャイナタウンを散歩しています」

「ああ、そこじゃDimsum食べよう。すぐに行くわ」

早朝のチャイナタウンは点心料理、英語でDimsumと

言って早い、安い、美味いと三拍子そろった

人気のファストフードでにぎわっているが、

夜食に中国料理を食べていた亮は気乗りがしなかった。


「はい、先に入っていますPingと言う店に入っています」

「分かったわ」

亮は菊茶と烏龍茶のブレンド茶をオーダーし

しばらくたつとジェニファーが店に入って来た。

「おはよう」

「おはようございます」

ジェニファーはDimsumに慣れた様子で

シュウマイや小籠包をオーダーした。

「なれてますね」

「うん、早くて安くて美味しくてお腹に優しいから」

「なるほど四拍子か」

「えっ、何?」


「いや、なんでも」

「ところで昨日、倉庫街で事件が起きたらしいわ」

「何の?」

「ロシアンマフィアとメキシカンマフィアか

ヒスパニック・ギャングの抗争らしわ」

「それで?」

「両方合わせて10人くらい死んだそうよ」

「そんな・・・」

亮はそれを聞いて顔の血の気が引いた。


「どうしたの?」

「い、いいえ。何でも・・・」


現在、アメリカにはさまざまな暴力集団があり

マフィアの本家イタリア、麻薬の製造、密売の行っている

メキシカンマフィア。もっと暴力的と言われている

ヒスパニック・ギャング、マネーロンダリングや

企業乗っ取り、密輸を経済の裏を仕切っている

ロシアンマフィアなど凶悪な犯罪者の巣窟である。


「アメリカは危険な所だから亮も気をつけてね」

「はい、気を付けます」

亮は昨夜その現場に居たなどとても言えず、

ロジウムがどこへ行ってしまったかはなおさら聞けなかった。


「ジェニファー、食事が終わったらボストンに帰りましょう」

「日曜日までいる予定じゃなかったの?調べ事は終わったの?」

「はい、何か落ち着かなくて。それに早く

櫨場俊夫さんと鈴木妙子さんのインタビューの

レポートを書きたいし」

亮は昨夜の抗争の事を考えると恐ろしくて早くボストンに戻りたかった。

「そう、じゃあ戻りましょう」

ジェニファーはもう少し亮と仕事をしたかったので残念だった。


「おはよう、亮」

劉文明から電話がかかって来た。

「おはようございます」

「元気ないなあ。昨日の件か?」

「ええ、まあ」

「安心しろ。襲ってきたのはヒスパニック系の

若造で組織とは無関係だった。

取引情報が漏れたのが気になるが、

我々からじゃ無いのは確かだ」


「そうですか。良かった。

お金ありがとうございました」

「また、儲かる話があったら連絡する」

「はあ・・・」

亮はホッとした脱力感でもう二度と遭遇したくない出来事だった。


~~~~~

「どうしたの?亮。大丈夫?」

店を出て隣を歩いていたジェニファーは

心配そうに亮の顔を覗き込んだ。

「大丈夫です」

亮の顔に人懐っこい笑顔が戻った。

「ジェニファー、格闘技もっと教えてくれますか?」

亮はマフィアの抗争を目の当たりにして怯えていた自分が情けなかった。

今回は幸い棍が有ったから戦えたのだが、もしも素手だったら

訓練を受けていた男たちだったら

三人で八人を倒す事は出来なかっただろう。


警官が犯人に毅然と立ち向かって行けるのは

毎日の鍛錬の成果であり、

今までの自分の行動はただ無謀に近い事に気づいていた。


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