推理
「うん、人間同士は嘘をつきあうが、
コンピューターは嘘をつかない
だからこっちの世界に来たんだ」
「確かにそうだけど、たまには人間と付き合えば。
嘘をつかない人間もいるわよ、そこに」
パティは必死に画面を見ている亮を指差した。
「確かに・・・」
ロビンは次第に亮が好きになって言った。
「じゃあ、生活大変だったでしょう?」
「うん、デビッドにBigGrillで飯を
ずいぶんただで食べさせてもらっていた」
「なるほど」
パティはロビンがデビッドに対して素直な理由がわかった。
「ロビンすみません」
亮が突然立ち上がって頭を下げた。
「何?!」
ロビンが驚くと亮はすまなそうに言った。
「高校生科学選手権で優勝すると奨学金が貰えたんです」
「うん、でももう気にするな。亮が優勝したのは事実なんだから」
「亮聞いていたの?」
突然話しをした亮にパティは聞いて驚いた。
「はい、映像をチェックしていても耳は
暇でしたから。それに終わったし」
「なんだって?もう終わったのか?」
ロビンは驚いて聞いた。
「はい、飛行場の到着ロビー4日間で2日
フレッドが女性に声を掛けていました」
「旅行者相手のナンパかしら」
パティは腕を組んで言った。
「はい、日本人女性だけを狙っていたようです。おそらくガイドをするとか
何とか誘っているんでしょう」
亮は外国人に弱い日本人女性を考えるとため息が出た。
「でもどうして1日おきに?」
パティは顔をかしげると亮は嫌な顔をした。
「1日おきという事は仕事が成功している事です」
「あはは、なるほど」
ロビンが笑っていた。
「それで、殺されたアツコは?」
ロビンが聞くと亮は手を広げて答えた。
「彼女はいませんでした。ただ麻薬密売の
前科者が二人、窃盗の前科者が6人
ウロウロしていましたけど」
「凄い記憶力だな。それにしても空港は危ない」
ロビンは亮の記憶力に舌を巻いた。
「でも前科者が罪を犯すとは限りませんけどね」
「まあそうだが。ところで亮は人の顔をどうやって覚えるんだ?」
ロビンは亮のコンピューター並の記憶力の秘密が知りたかった。
「はい、その事で相談があるんです」
「なんだ?」
「顔の認識システムです。僕の独自の記憶方法があるので
それをプログラム化できないかと思っているんです」
「うん、今のシステムを上回れば売れるぞ」
ロビンは亮と知り合って自分に運が向いてきたような気がしてい
嬉しかった。
「そしてこの方法を使うと顔を見ただけで本当の事を言っているか
嘘をついているかが分かるんです」
「なんだってどういう訳だ?」
「人間の目と鼻と口のバランスを数値化します」
「このバランスは笑っても泣いてもいつも
一定なんです。ところが
心のそこから笑った時、
数値がプラスになります。しかし嘘をついた時
マイナスになるんです。つまり万引き行動を
見張っていなくても顔を映し出すだけで
物を盗んだかどうかが分かるんです」
一人の顔の写真を例にとって数値を出しロビンに説明をした。
「なるほど、画像認識より100倍も早い」
「はい」
「何てやつだ」
ロビンは亮の常人では考えない理論を言ってのける
亮に感心をした。
「ロビン、このシステムを完成させて
弁護士活動に使えませんか?」
「それは依頼人の相談を受ける時利用できるだろうな、
依頼人は自分に都合の良い様に
弁護士に言うからな」
「では、そうしてください」
亮はプログラムがロビン親子の仲直りの
きっかけになれば良いと思っていた。
「お父さんに認められると良いわね」
パティが亮とロビンの話を聞いて手を叩いて言った
「別にそんな事はどうでも良い、とにかく儲かれば良い」
ロビンは困ったように返事をした。
「ところで、フレッドの方はどうするの?」
パティが聞くと亮は申し訳なさそうに答えた。
「うんそれが・・・。ロビン、
イミグレーションに入れませんか?」
「うんいいよ、どうせレベル1だから」
ロビンは簡単に答えた。
「では、この2日間の13時に到着した
日本人女性のリストを出してください」
「OK、写真は無いぞ、文字データだけで分かるのか?」
「はい」
ロビンはすぐにリストを出した。
それを見た亮は年齢と出身地を見てチェックをした。
「ロビン分かりました、該当者アリです」
「なんだって!」
「まず、フレッドが接触したのが一人と二人組、
他の日本人はツアーバッチを付けていました」
亮はモニターを指差した。
「うん、三人とも若いわね」
パティがうなずいた。
「その中の一人の女性が、ホンマと言ったんです」
「ホンマって何?」
日本語の分からないパティは聞いた。
「ホンマは本当の関西弁つまり方言の1つなんです。
という事はこの大阪出身の女性
は鈴木妙子だけなんです」
「なるほど、亮は読唇術が出来るのね」
パティは亮がどれだけの事が出来るのが聞くのが面白かった。
「亮ってまさかマジックも出来るんじゃないでしょうね」
「はい、出来ますよ。スライハンド
(道具の仕掛けに頼らない、技法)マジックが好きです」
「今度見せて」
「はい、良いですよ」
亮はそう言ってボールペンをパティの目の前で消して見せた。
「この鈴木妙子さんに聞けばフレッドが
どんな事をしているか分かるはずです」
「なるほど」
ロビンが納得すると亮は二人に聞いた。
「ボストン警察を名乗って日本に電話をしてもいいでしょうかね」
「別にいいんじゃないですか悪用するわけじゃないから」
亮はパティの一言で入国審査用の紙に
書いてある鈴木妙子の連絡先に電話をかけた。
「こんばんは、私はボストン警察のフレイザーと申します」
「妙子の母ですが、何かあったんですか?」
電話の先の女性は突然の海外の警察からの電話で
声が震えていた。
「ボストンで日本人女性の殺人事件があって目撃者を探しています」
「ああ、あの事件ですか。知っています」
妙子の母は胸を撫で下ろした。
「妙子なら今、ニューヨークのリーブホテルにいるはずです₎
「そうですか、では私の方から連絡をして
話を聞いてよろしいでしょうか?」
「は、はい・・・日本語お上手なんですね」
妙子の母は亮の流暢な日本語に驚いていた。
「あはは、祖父が日本人なので」
亮は嘘をついてはいなかった。
「そうですかあ、道理で・・・」
「急に電話を掛けて申し訳ありませんでした」
亮は丁寧に挨拶をして電話を切ろうとした。
「あっ、待ってください。妙子の携帯の電話番号をお教えします」
妙子の母親は亮の丁寧な言葉に心を許していた。
亮はすぐに妙子に電話をかけ鈴木妙子に連絡を取り
次の日に会う約束を取り付けた。
「ロビン。明日、鈴木妙子さんと会ってきます」
「そうか、ずいぶん協力的な女性だなあ」
ロビンは感心していた。
「ロビン、日本人は警察に協力的なんです」
「へえ」
パティが笑って手を叩いた。
「日本は江戸時代に江戸の町110万人の
人口で与力25人、同心140人で
合計165人の警察で治安を守っていたんです」
「すごいなあ、たった165人で」
ロビンが感心するとパティは亮に聞いた。
「亮、日本人にはどうしてそれが出来たの?」
「それは市民が警察を信じて情報を提供していたからです。
同心の下には岡っ引きと言って
ボランティアの市民警察がいました」
「なるほど、だから日本は治安がいいのか」
ロビンが納得すると亮が付け加えた。




