サムライ
周りにいた女性たちは悲鳴を上げてスタジオ飛び出して来た。
「尚子さん、携帯のメモリーに入っている
ジェニファーさんに連絡して
現状を説明してください」
亮は尚子にスマフォを渡すと男から
目を離さすに尚子の首からタオルを抜き取り
スタジオの入り口にあったモップの
柄を持って男のところへ走った。
「ヘイ」
亮が声をかけると、まさかピストルを持った
人間にかかってくるとは思わなかった
男は振り返って亮にピストルを向けた瞬間、
「籠手!面!胴!」
亮の体は数メートル飛び120cmの
モップの柄は男の手首を叩きピストルを叩き落して
続いて男の天頂部強く叩きそれを返して
男のミズオチを突いた。
男は一瞬で気を失い大の字になって
スタジオの床に倒れた。
「大丈夫ですか?」
亮はアイリーンに声をかけると尚子から借りたタオルで
気を失った男を後ろ手に縛った。
「亮、ジェニファーさんに電話を掛けたわ、
すぐに警察に連絡をするので危険な事はしないでって」
「と言ってももう捕まえちゃいました」
「うふふ、そうね」
尚子は犯人と戦う亮の2度目の姿を観て
ますます亮の事を好きになってしまった。
そこへ武装した警察隊が入ってきて
受付にいるサンドラに聞いた。
「犯人はどこですか?」
「突き当りの窓の所です」
サンドラの指差したところに亮が立っていたので
警官は亮を取り囲んだ。
「フリーズ」
警察隊は一斉に亮に銃を向けうつぶせにして
手錠をはめ両腕を掴まれ立たされた。
「違います、犯人はこっちの男です」
両腕を掴まれた亮は倒れている男をアゴで指したが
その男も気を失ったまま手錠をかけられ連れて行かれた。
「違います」
尚子は警察官にしがみついた。
アイリーンも何台もパトカーが停車している
外に出て警察官に訴えた。
「違うって言っているだろう!
このボケ!被害者は私なんだ」
アイリーンが警察官を蹴飛ばすと
刑事がアイリーンに声をかけた。
「恐れ入ります、話を聞かせていただけますか?」
刑事は身分証をアイリーンに見せた。
「コナーと申します」
「私、アイリーン・ヨーク。あの男が突然私を襲ってきたの」
「その男とはどういう関係ですか?」
「それが全然あった事も無いのに『どうして自分の所に来ない』って」
「ストーカーですかね」
「ええ、ステージに立った時
熱烈なファンレターを貰った事があるけど」
「おお、ミュージカルスターですか」
コナーはボソボソ言ってメモを取った。
「いいえ、オフブロードウェイですけど」
アイリーンは恥ずかしそうに言った。
そこへ尚子はコナーにしがみついた。
「彼は、日本人の團亮は
アイリーンを助けてくれたのよ」
「何!團亮だって」
「そうよ、連続誘拐犯のジェフ・ネルソンの事件で
ニューヨーク市警が表彰した男じゃない」
「そうか、團亮か。まずい!」
コナーは近くに止めてあった
パトカーのマイクを手に取った。
「コナーだ!日本人を連れて行った車両、
その人は犯人じゃないすぐ手錠を外して
こちらに戻ってくれ」
そこにジェニファーが来てコナーに
ボストン警察の身分証を見せた。
「すみません、私の仲間の團亮いるはずなんですが」
「申し訳ない、今戻ってくる」
「申し訳ないって?」
「犯人と間違って連れて行ってしまったんだ」
「どうして?」
ジェニファーがコナーを睨み付けると
手を広げて首をすくめた。
「まさか、警察が来る前に一般人がピストルを持った
犯人を捕まえるとは思ってもいなかったんで」
コナーとジェニファーの会話を聞いていた、
尚子がジェニファーに声をかけた。
「ジェニファーさんですか?」
「ああ、さっき電話をくれた・・・」
「白尾尚子です」
「スクールで何が起きたの?」
「はい」
尚子はジェニファーとコナーに
亮が犯人を捕まえた様子を話した。
「なんて無茶な!もし犯人が
團を撃ったら命を落としていたぞ」
コナーは亮がいくら表彰を受けた人物でも
素人である亮の無謀な行動を嘆いた。
「そうね、亮をもっと鍛えなくちゃ」
ジェニファーはコナーの言葉に反応してつぶやいた。
目の前に止まったパトカーから亮が降りてきた。
「申し訳なかった、團さん」
亮に駆け寄ってコナーが謝った。
「大丈夫です」
パトカーに中で亮を知っている警察官が間違いに気づき
手錠を外しスクールの中で起きた事を話していた。
「ありがとうございました」
アイリーンが亮の前に立って亮に礼を言った。
「いいえ、とんでもない」
亮は美人のアイリーンに見つめられ恥ずかしそうに答えた
「実は私も亮に助けられたのよ」
尚子がアイリーンに言うと
アイリーンは目を丸くして聞いた。
「本当!」
アイリーンは亮に改めて礼を言うと尚子は亮に手を振って行った。
「じゃあ、今夜ね」
「かわいい子じゃない、尚子さん」
ジェニファーが亮の肩を叩いた。
「ジェニファー、今夜は三人で食事をしましょう」
「いいけど、二人じゃなくていいの?」
「ええ、二人だと緊張しますから」
「私とじゃ緊張しないの?」
ジェニファーが亮の顔を覗き込んだ。
「さあ、事情聴取があるんでしょう。ニューヨーク市警に行きましょう」
亮はジェニファーの言葉を無視して市警に行くように誘った。
「わかったわ、15時までに片付けないとね」
「はい、すみません」
亮は犯人が運ばれたニューヨーク市警に行くとコナーが待っていた。
「今、犯人の自供を取っていたんだが、
奴の名前はベンジャミン・ストーサー32歳
トラックの運転手だ。以前からアイリーンのストーカーで
ファンレターを書いても返事をくれなかった
事が気に入らなかったらしい」
コナーはコーヒーを片手に亮とジェニファーに
顎に手を当ててリラックスして言った。
「勝手な言い分ですね」
「ここではあまり珍しい事件ではないけどな、
それでもう一度犯人を捕まえた時の
様子を教えてくれ」
コナーは笑いながらジェニファーの白い
Tシャツから見える胸の谷間を覗き込んだ。
亮はコナーのバカにしたような態度が気に入らなかったが
その時の様子を語り始めた。
「掃除用のモップありますか?」
亮はコナーが持ってきたモップの先を外し
剣道の基本、中段に構えた。
ジェニファーは背筋を伸ばした亮の姿が凛として憧れのサムライに見え
小さく手を叩いた。
亮はストーサーが休憩中にピストルを持って入ってきたので、
銃口が自分に向く瞬間、柄を持って犯人を倒し尚子のタオルで
縛り上げた事をコナーに言った。
「なるほど、しかしピストルを持っている人間にモップの柄で勝てるのか?
君とストーサーの距離は3m以上離れていたはずだ」
コナーはピストルを撃つより早く人間が3m先の
ピストルを叩き落とせる訳がないと疑っていた。
「亮、日本のサムライを見せてあげれば」
ジェニファーが亮をあおって言うと亮はコナーに確かめた
「いいですけど、大丈夫ですか?」
「いいとも、見せてもらえれば我々も納得する」
亮は中庭に出てモップの柄を持って3m先に
コナーにヘルメットをかぶらせ警棒を横向きに持たせ立たせた。
「おい、そんな遠くから届くと思うのか?」
「ここからその棒を叩きます。その後は僕に何をしても結構です」
「なんだ?この警棒を動かしたらどうするつもりだ?」
「はい、叩けます」
中庭にいる三人を見て署員が集まってきて見物を始めた。
「ダン、来い」
コナーはまだ亮を信用しておらず
署員の前で亮をはずかしめられるようにビデオをセットした。
亮は気合の声と共にジャンプしてコナーが持っている警棒を叩こうとすると
コナーはそれを避け右に動かしたが亮の柄は警棒を強く叩いた。
コナーは亮の柄の動きと強さに危うく落としそうになると
「カーン」




