↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リトライチケット  作者: アクイラ(((・・;)
PR
40/86

第四フロアは譲れない件について   好奇心



   【雨宮宅】


「さすがに几帳面ね」


 他のメンバーがログインしていない間、現実世界の動向を確かめるためにパソコンを借りていた久根は『情報統合』というファイルを開いて中を確認していた。


(エッチなのをカモフラージュしてなくてよかったわ。えっとなになに?私達の【スキル】にクリアしてきたクエストの詳細。ん?)


 何気なくゴミ箱に捨てられていたファイルが目に止まり、開封すると最近捨てられた形跡。

 好奇心から元に戻すとパスワードを打ち込む画面が出てきた。


「もしかして本当にエッチなやつ?」


(たしかに男の子だし、わざわざゴミ箱を漁るのもどうかと思うし、でもでも性癖くらい知っておいても、あーでもー)


 良心と好奇心の葛藤。 

 適当に打ち込んでエンターキー1つで開いてしまうかもしれないファイル。人差し指がわずかに抵抗する。


「あれ?久根ちゃん?」

「ひゃい!?」


 天童からの不意の呼びかけに反射的に力が籠もった人差し指がエンターキーを押す。


「あ、」

「どした?エロサイトでも見てたか?」

「天童くん、女の子にそういうこと言うとモテないわよ。でもパスワードが違ったから開かなかったけど、もし開いてたら」

「パスワード?」


 覗き込む天童。

 彼は一瞬眉根を寄せたが、すぐにあっけらかんと笑う。


「パスワードかけるってことは察してやれって。涼真だって健全な男の子なんだぜ。エロ画像やエロ動画、ちょっとアブノーマルな性癖を隠したいお年頃なんだよ」

「でも知っておきたい乙女心だってあるのよ」

「そうかい。俺も気になるからデータだけもらっとくか」


 天堂は手際よくUSBを取り出してファイルをコピーすると有無を言わさず開いていた画面を閉じる。

 するとタイミングよく全員が戻ってきた。

 憑き物が晴れたような顔の音刃と雪原。

 そして新しい問題を抱えた顔の雨宮。

 何かを掴んだ天堂。

 久根の瞳に映る彼らの姿はとても歪に繋がっていた。

 何かしらの目的や、誰かへの依存の理由で結ばれている関係。


(この中で私だけは《エンペラーオンライン》なしでは間違いなく関わることはなかったわね。生き残るために組もうとしたレインというプレイヤーがたまたま現トッププレイヤー達と繋がりがあっただけの運が良かった存在。あのとき絡んだのが彼でなければこの場にはいなかったかもしれない)


「レベリングにアイテム補充、装飾品の厳選に素材集め。やることは山積してる」

「あとは《天魔》の検証だな。どうする?付き合うか?」

「お願いしようかしら。でも流石に明日ね。疲れちゃった」

 

 時間も時間ということで雨宮宅での宿泊。

 もちろん想定していなかった久根は着替えなど用意しているわけもない。同じマンションに住んでいるという雪原に借りようとしたが、小柄な彼女のサイズでは間違いなく入らない。

 

「どうした?」

「泊まると思ってなかったから着替え持ってなくて」

「俺のでよければ貸すけど?」


 そそくさとクローゼットからダボッとした黒シャツとスボンを持ってくる。

 

(やけに慣れてない?)


「俺が使ってるやつでよければ風呂場のものは好きに使ってくれていいから」

「ありがと」


 気遣いスキルの高さに驚きつつも拝借した着替えとタオルを持って脱衣所に。

 綺麗な洗面所には簡素ながらも白と黒を基調にしたモノトーンで整えられて清潔感より若干の潔癖症を伺わせる。

 

(忍さんの私物かしら?)


 洗面台に置かれた女性用化粧品やトリートメントから雪原の威圧感が漂ってくる。

 男性用のスキンケア用品もあるのが、余計に同棲感を醸し出してしまっている。

 

「あら、」


 よく見ればタオルの中に手のひらを二回り大きくしたようなカップ型ネットが挟まっている。

 

「忍さんの気遣いスキル凄いわね」


 ドラム式洗濯機に身に着けているものとネットに入れたものを一緒に放り込んで稼働させる。

 さて、と向き直りいざ浴室へ。

 沸かされた湯船から柔らかい熱気が体を包む。


「この辺は男の子か」


 洗顔料やシャンプー、ボディソープ類は1つずつ。雪原の侵入もここまではないようだ。

 とはいえ、使っているものは女性が使っていてもおかしくないもの。

 あとは、


(髭剃りとかはないのね。私の家だとお父さんのがあるけど、洗面所にはそれらしいのなかったし)


 シャワーのお湯を出し体に当てていると、唐突に扉が開く。


「・・・ごめんね、涼真のシャンプーじゃと思って家から持ってきたけど使う?」

「忍さんか。天童くんあたりが覗きに来たかと思った。それどころか美晴さんも」

「裸の付き合いというやつでござるよ」


 男らしく衣類を脱ぎ捨てた音刃は遠慮なく浴室に足を踏み入れる。

 

「背中を流して差し上げるでござるよ」

「しょうがない。忍さんも入りましょ」

「・・・でも、」


 雪原は自身の胸元を押さえながら、久根と音刃の胸元を比較し、うなだれながらも空気を読み衣服を脱ぎだす。




「これは覗きイベントか?」

「忍に殺されたいなら行ってこいよ」

「んで?なにやってんだ?」

「ユーリからのメールのチェックと整理だ。ユーリの店に集められた情報の精査をしないとガセまであるかもしれないけど、報酬がアイテムだった場合にはユーリの【スキル】で確認できるから」

 

 必ずクリアしたプレイヤーが報告に来るという条件でのみ情報のやりとりをするユーリ。

 彼女の【スキル】は彼女の希望で公表されているため、嘘が通じないことから信憑性もあり、第2フロアでのBOSS戦から実力行使に及ぼうとする者もいない。

 『SAKURA』による検証もあるため、より安全なものとなっている。


「第4フロア以降の戦闘クエストは今までとは比べ物にならないだろうしな。あれだけの人員を動員してやっとだしな」


 天童の言うとおり偶発的なものがあってようやく掴んだ勝利。

 《星霊》の覚醒。

 《神姫》のドロップアイテム。

 《剣鬼》と《名人》の自己犠牲。

 本当に削って、削って、削って。

 

(それでも誰ひとり欠けずに勝利とはいかなかった)


「それでも美晴が来てくれたから勝てたんだよな」

「俺達じゃ《黒龍》にすら単独で勝てなかった。もう一度闘えば美晴を入れても全滅してもおかしくない。せめて自分の身を守れるだけの力を手に入れる」

「にしても3日もアップデートってやばいよな。いまどきそんなに長いのなんてないぞ」

「これだけ大きなゲームだからな事前告知のクエストとアイテムのばらまき。ついでに敵キャラの調整とかもいれてくれなきゃ」

「アイテムといえば4つ目の『EXA』をソラが手に入れたぞ」

「4つ目?3つ目は?」

「ユーリちゃんでも探査不可」


 大げさに両手を広げる天童。

 雨宮はいま聞いた話を含めてパソコンに打ち込む。

 短剣、古書、御札。

 形状も効果も関連性はない。それどころか雨宮のに関しては能力すら不透明。


「第4フロアで使えるって書いてあったんだけどな」

「そもそも『王家の威光』って名前で第4フロアには王家なんてなかったしな。もしかしてアップデート内容にこれがあるんじゃねぇか」

「可能性はあるな。それに『夜桜』は6人目が判明してないけど、【スキル】の目星がついてる」


 雨宮はいままでまとめた『夜桜』のフォルダを開き、


「羽生さんとは別系統の未来予知【スキル】か接触読心(サイコメトリー)系統じゃないかと思う」

「根拠は?」

「1つ目は美晴に対して温存という選択を取れたこと。2つ目の【スキル】は俺のことを前もって知ってたこと。俺の《賢者》に類似したものかもしれない。またあいつらと闘うことになったら勝率はかなり低い。手の内がほぼ割れてる俺らと《称号》持ち2人を加え、道連れに近い形で確実に1人を封殺するアカネ、《黒龍》ですら動きを止める小鈴に、たった1人で『白虎庵』を壊滅させたミヤビ」

「やばくね?」


 重たい溜め息。

 直接的な妨害はないにせよ、依然としてソラ達が脅威なのは変わらない。

 共闘したからこそ分かる実力。

 

「なんにせよ《称号》持ち同士がコンタクト取れてるのはありがたいよな。んで、《称号》持ちが狙われるかもっていっても《黒龍》との闘い見て挑んでくるやつがいるとは思えねぇし」


(たしかにドラの言うとおり第10位のカチュアでさえ狙われるとは思えないし、大丈夫か)


 彼の考えを他所に、3日後。

 プレイヤーは大きく分断された。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。