夜中の茶番劇1
商人家族と別行動になり、首都では隣国の公爵と侍女という体で振る舞うことにした。
慇懃無礼な態度がどうしても出るナゼルフェンは商人のフリは無理があった。
「平民のふりくらいできる!」
「どこがですか?市井見物に出た王子にしか見えませんよ」
「ぐぬ・・・」
いつもの隙のない振る舞いが板につき、紳士な所作が仇となった。
ナゼルフェンをやりこめたことに気を良くしたリモネルは「さあ参りましょう、坊ちゃま」とすっかり侍女ぶる。
「ふん。私の侍女となるからには屋台で買い食いなど、はしたない振る舞いは慎めよ?」
「むきー!」
すぐに足元を掬われ、プリプリしながら高級宿のフロントへ部屋の手配を頼むリモネル。
「3部屋とれましたわ、セミスイートは従者部屋と続きになってます」
「ご苦労、では案内いたせ」
ナゼルフェンをセミスイートへ案内し、「では明日7時に」と退室しようとした。
「2ベッドあるぞ、一緒にどうだ?」
「わたしは人妻です」真顔でピシャリ言い除けリモネルは一つ階下の部屋へ去った。
「くく、まったく可愛げがない。――おい、リモネルに4人つけ。特に窓は気をつけろ」
姿なき影等に指示を出し、己も僅かに休息をとることにした。
***
従者と共に部屋をくまなく見回り異常なしと判断する、時計は午後11時を回っていた。
「0時に念話がはじまります、隙を付いてくるならその時ですわ」
「了解しました、我らは4方より護衛いたします」
西端の島からだいぶ近づいた、当然これまでより気配はバレやすくなった。
「なにかしら接触してくる可能性があるわ」
リモネルはきゅっと唇を結ぶ、護衛付きとはいえ部屋には一人である。
さすがに緊張で眠れそうもない。
夜衣に着替えるも短刀は脇に佩く。
下は動きやすいようにキュロットを穿いた。
さて、今夜はどうくる?
いつものようにバカっぽい真似で終わるのかしら?
軽く体を解し時計の針を見る、ちっとも時が進まない気がした。
「はあ、早く平常にならないかしら?」
結婚したというのに実感もわかないまま1か月以上も夫と合っていない。
異常すぎると思う。
部屋をグルグルと歩き回り、時に紅茶を啜り・・・漸く0時になった。
「さあ、茶番劇のはじまりよ」
リモネルはそっと幻惑の魔道アクセサリーに手を伸ばした。
留め具に指がかかったその時―・・・
バァーーン!!!
荒々しく扉が開かれ、リモネルは飛び跳ねた。




