残照 ~俳句と人生、老いの旅~
最近、身の回りを整理し始めた伯父。書き貯めていた俳句とエッセイの文章も、管理が難しくなってきたので、編集してこちらへまとめることに。俳句とそれにまつわるエピソード、編集しながらふと自分も一句 ……などと考えてしまったり。
松涛の陰深々と秋を知る
2019/03/10 00:12
万緑を研ぎ洗いたる夜半の雨
2019/03/10 10:00
法華経と鳴く鶯や春便り
2019/03/10 20:00
秋刀魚船去りて市場は水を打ち
2019/03/11 06:00
捨ても得ず亡き人の想い沙魚の竿
2019/03/12 06:00
汗散らす舞姫脇窩仄暗し
2019/03/13 06:00
冬の月山重なりて海に落つ
2019/03/14 06:00
臼砲の梨地の砲身海睨む
2019/03/15 06:00
魚追う吹雪の湖上ただ一人
2019/03/16 08:00
枯れてなほ空蝉すがる二月かな
2019/03/17 08:00
つぎはいつ君送る夜半沈丁花
2019/03/18 06:00
野を焦がす華北の夕日沈みつつ
2019/03/19 06:00
南海に波頭砕けて仏桑花
2019/03/20 06:00
畑打つ鋤引く驢馬の眼は優し
2019/03/21 06:00
溢水の長江白鷺低く飛び
2019/03/22 06:00
冠雪の岩場を噛みて淵暗し
2019/03/23 08:00
友逝きぬ一期一会の独楽の芯
2019/03/24 08:00
鬼瓦桜吹雪を睨みおり
2019/03/25 06:00
秋や昔櫓下にて海苔を干す
2019/03/26 06:00
鍋の夜確か聞こえし父母の声
2019/03/27 06:00
象の墓訪ねきし旅青嵐
2019/03/28 06:00
喜寿と古希トボトボトボと秋に入る
2019/03/29 06:00
暮れなずむ佐渡の漁り火夏休み
2019/03/30 08:00
目は冴えて闇は饒舌秋の夜半
2019/03/31 08:00
病みし眼の手術のあした薄き月
2019/04/01 06:00
年越しのそば温かく洟啜る 嬉しきはいま年越しのそばを食う
2019/04/02 06:00
除夜の鐘雨音に消え酒沁みる 出来過ぎのわが人生の大晦日
2019/04/03 06:00
今は昔ふいご祭りの在りしこと
2019/04/04 06:00
百合とても移ろい無残廃り捨て
2019/04/05 06:00
春嵐墨田の川面竜登る
2019/04/06 08:00
逃げ水に浮ぶ蘇州の街を抜け
2019/04/07 08:00
満ちてきし潮が棹さす花筏
2019/04/08 06:00
冬の日や友病巣の影重し
2019/04/09 06:00
さるすべり炎昼白き肌えかな
2019/04/10 06:00
マドンナも生きとし生きて喜寿の秋
2019/04/11 06:00
夢を追い夢に酔い痴れ古希の春
2019/04/12 06:00
春嵐墨田の川面竜駆ける
2019/04/13 08:00
竹薮を揺する音なり焼夷弾
2019/04/14 08:00
孑孑の水桶金魚買いに行き
2019/04/15 06:00
背をさする妻の寝息に春惜しむ
2019/04/16 06:00
万緑や末世に阿修羅佇ち給う 六道を極めし阿修羅仏法僧
2019/04/17 06:00
鍋の底のびのび浅利あさ知らず
2019/04/18 06:00
煌めきつジェット機渡り月残る
2019/04/19 06:00
老いという未知なる旅路秋夕焼
2019/04/20 08:00
老いの路同行二人良夜かな
2019/04/21 08:00
苛々とただ苛々と老いて冬
2019/04/22 06:00
独り踏むジルバテップ五月雨
2019/04/23 06:00
雨垂れのプレリュード 聞く五月闇
2019/04/24 08:00
妻逝きぬ美しきまま夏の朝
2019/04/25 06:00
荼毘に付す妻目覚めよや百合の棺
2019/04/26 06:00
君はいま三途の川の船に揺れ
2019/04/27 08:00
散骨や山百合船を離れずに
2019/04/28 08:00
妻逝きぬ初夏あけぼのの衣着て
2019/04/29 06:00
老いの旅日陰もありて日溜まりも
2019/04/30 06:00
骨に滲むこの寂寥感や神無月
2019/05/01 06:00
聞かせてよあれからけふの冬日記
2019/05/02 06:00
春浅く病の顔は死魔の影
2019/05/03 06:00
妻逝きて今年のさくら色淡し
2019/05/04 08:00
白き月妻訪ねたし黄泉の国
2019/05/05 08:00
元日に週刊誌読む独居かな
2019/05/06 06:00
喜寿の春まだ唄いたし恋したき
2019/05/07 06:00
膝折りて咳込む夜寒む独居かな
2019/05/08 06:00
耐え難く転居したれど春霙
2019/05/09 06:00
父に似し咳払い一つ秋の暮れ
2019/05/10 06:00
床に散る髪きぬぎぬの初夏の朝
2019/05/11 08:00
足早に西日沈みゆき夏終わる
2019/05/12 08:00
蝉仆る老いたりといえただ七日 八日目の蝉本願を遂げたるや
2019/05/13 08:00
遮断機や蟷螂の鎌我を打つ
2019/05/14 08:00
じゃんだらりん三河言葉や筒花火
2019/05/15 08:00
虹の橋妻が渡って来るような
2019/05/16 08:00
夜長の灯ヴェルレーヌの雨が降る
2019/05/17 08:00
稲袈狭間あねさん被りの女おり
2019/05/18 08:00
赤錆しキュポラを囲むキリン草
2019/05/19 08:00
春の虹妻駈け降りてくるような
2019/05/20 06:00
喜寿を越し陽は傾きて影長し
2019/05/21 06:00
貨物線錆びしレールに秋の雨
2019/05/22 06:00
新緑に憂さを委ねて魚釣る
2019/05/23 06:00
死のうよと囁きし妻花火の日
2019/05/24 06:00
緑濃し荒れ果てしまま無縁墓
2019/05/25 08:00
広重の篠突く雨や橋半ば
2019/06/06 06:00
サックスの音色淋しや賀状書く
2019/06/07 06:00
窓暗し漂流人生冬独居
2019/06/08 08:00
崩れ落つ怒涛北斎音えがく
2019/06/09 08:00
いまはもう朧とぞ思う柿の里
2019/06/10 06:00
春浅しアバヨとぐらい言って逝け
2019/06/11 06:00
吾れ八十路蝉の八日に及ばざり
2019/06/12 06:00
酔うて夢亡き妻抱きし春淡く
2019/06/13 06:00
黒き海霧笛響くや大晦日
2019/06/14 06:00
寂しさにいまだ慣れずに独り酒
2019/06/15 08:00
花筏御苑の水辺渦となり 亡き妻の肩に掛けたや花ショール
2019/06/16 08:00
憂きことを桜吹雪に託せしも
2019/06/17 12:00