表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/47

45・ちょっと不穏な授業参観3

 ゲーム中でのリョウ・ミカミとの出会いは、勇者として神殿から王宮の保護下に入ったファルコとマリエルに、バアルが近衞騎士として着いたあと、学問系のコマンドを選択すると登場する。

(または学問系を一切選択せずに次の派兵を迎えると強制的に登場する。これは他の未登場キャラも同様)

 今この時空の展開とは違い、ちゃんとした教室で行う授業ではなく、青空教室のような形での講義に、通りがかりの傭兵が割り込んでくるという展開で(そういえばあのクラークと呼ばれていた傭兵、そこで割り込んで口を挟んでくる男に今思えばそっくりだったかもしれない)、それを止めてくれるのが同じ傭兵のリョウ・ミカミだった…というのが彼との出会いイベントだ。

 その時にバアル様が、彼の提げる剣に目を留めて、そこからはさっき見たのと同じ台詞で剣の説明と彼の自己紹介に続く。


 神剣『千年(ちとせ)(おう)』は、あるじが斬れと命じたものならば全てを斬り裂くと言われるが、その神剣に彼は未だあるじと認められておらず、その真の力を発揮できぬまま、現在は通常の剣として使っている。

 リョウとの交流を深めていくと、この眠れる神剣を目覚めさせていくという流れになるのだが、中途半端に恋愛度を高めてしまうと、派兵イベントの随所に彼の戦死フラグが立つ為、リョウを最後まで生き残らせたければ恋愛度を早い段階でMAXにするか、いっそ相手にしない事が推奨される。

(尚、派兵イベントに同行させなければリョウが死ぬことはない。ただ、リョウは全ての派兵イベントへの同行がクリア条件なので、その時点で攻略は不可能)


 また、リョウはストーリーを進めていくと恋のライバル?が登場するのも特徴のひとつだ。

 それは誰あろう、この国の次期女王(暫定)であるルイサ王女である。

 例の、王女を保護して身代わりになるストーリーイベントで、ファルコ以外の同行キャラがリョウであった場合に王女フラグが立つ。

 基本的には、その後の王女とリョウのストーリーが描写されることはないのだが、そこより後の派兵イベント2週前の時期に、リョウの恋愛度が足りないと、王女との関係の進展をほのめかす話を、ゴローまたはアローンから聞かされる。

 王女フラグが立った後のリョウには、その後の死亡フラグが立つことはないのだが、その噂を3回聞いた後でリョウのイベントを進めてしまうと、最終決戦の直前にリョウと王女が駆け落ちして国を出てしまう為、最終決戦のパートナーとして参加させることができなくなり、事実上攻略が不可能となる。


 そしてその王女との関係上、リョウはアローンやゴローとの同時攻略が不可能なキャラでもある。

 そんなわけで攻略的にはファルコと別な意味で、けど同じくらいめんどくさいキャラなので、当時のプレイヤーからの人気は今ひとつだったが、彼は前世の私の推しキャラだった。

 基本的にヴィジュアルが、好きだった格闘漫画の主人公にそっくりだったのが一番の理由だけど(ついでに言えば声もその漫画がアニメ化した際に主人公を演じた声優が担当していた)、神剣『千年(ちとせ)(おう)』を目覚めさせていく過程のストーリーがもどかしくも甘いと、当時の私の性癖的にくすぐられるものがあったからだ。


 ちなみにネタバレをすると神剣を目覚めさせる鍵となるのは、まあベタといえばベタだが『愛』である。

 王女との恋愛は、マリエルと恋に落ちない場合の『千年(ちとせ)(おう)』への救済策なのだと、当時のゲーム雑誌に載った製作者インタビューに書かれていた。

 勿論ゲーム中の物語には描写されなかったが、マリエルがリョウを選ばなかった時空に於いても『千年(ちとせ)(おう)』が神剣として覚醒するのは決定事項なのだ。


 そんなわけで、マリエルが舞台からさっさと退場してしまっているこの時空ならば、王女と出会って恋に落ちるのが今後の彼の運命なのだろう。

 今のリョウ・ミカミはそんな運命など知る由もなく、この国の英雄が教鞭をとる講義に、真剣に耳を傾けているのだけれど。


 ひとまず、その存在を確認する為に無理を言って押しかけた授業参観は、目的を達して終了した。

 私は一応神殿に仕事も残っているし、ファルコの事は近衞騎士団にお任せして、午後からは帰ってもいいとは思うのだが…


「ヴァーナどの。

 この後、お時間をいただけるだろうか?」

 午前の講義が終わり、お昼休憩で生徒たちが、副教官の号令で食堂に移動し始めたタイミングで、バアル様から声をかけられた。


「え?」

「ファルコどのの事で少し、お話をうかがいたいのです。

 食堂のランチでよろしければ御馳走させていただきますので、食事をしながらでも是非」

「はい、では喜んで。」

 …この状況で、ファルコのことでと言われたら断れるはずがない。

 決して近衞騎士団の食堂ランチに興味があったわけではない。

 …質素倹約を謳っている神殿の食事より、絶対ここの方が美味しいだろうなと思っただけで。


 ☆☆☆


 近衞騎士団では、騎士教室の生徒である騎士見習いは、昼食は無料で提供してもらえるシステムらしく、また万が一食中毒等の問題が生じた場合、全員が臥せる事態にならないよう、日替わりのランチメニューは3種類から選べるようになっているという。

 見習いから昇格して叙任を受けた騎士になると有料になるが、それでも外で食べるよりもはるかに格安なので、大体の騎士はこちらを利用し続けるのだそうだ。


 今日のランチは『たっぷりレタスとソーセージのサンドイッチ』『ミートボールのトマトソースパスタ(ミニサラダ付)』『薄切りポークとポテトの東風煮込み(ライスボール付)』らしい。

 ちなみにコーヒーとお茶は無料のセルフサービスとの事。


 私は比較的軽めかと思われたサンドイッチを選択したが、出てきたものを見てちょっと困惑した。

 横に切れ目を入れた25センチくらいのバゲットぽいパンに、そこからはみ出るほど長いソーセージとシャキシャキのレタス、ピリ辛のソースを挟んだそれは結構なボリュームがあり、しかもそれを丸かじりするスタイルのやつだ。

 そうか、これは育ち盛りの騎士見習いの為のメニューなのだ。

 納得はしたが、さすがにバアル様の見ている前で大口を開けてかぶりつくのは抵抗があった為、私の分は手頃な大きさにカットしてもらったけど。

 ちなみにバアル様が選択したパスタは名前の通りだったが、周囲の生徒の一部がトレイに乗せて運んでいるものを見た感じ、東風煮込みは普通に肉じゃがだった。

 しかもおにぎり付き。


 つかそんな事より。


「ファルコどのの『勇者の託宣』の事ですが…神殿としては、どこまで開示していいとお考えで?」

「え?」

「この時期に神託がおりたのは、此度の戦争に関係すると判断して間違いはなかろうと思う。

 つまりファルコどのはこの先、間違いなく戦場に立たされる。

 だが、現時点でのファルコどのの立場は、神殿から預けられた騎士見習いに過ぎぬゆえ、いきなり『神託の勇者』などと広めても、要らぬ混乱を招くことになろう。

 だが、秘してしまえば騎士見習いでしかない青年を戦場に送り出す事になり、ひどく不自然な状況になってしまうだろう。

 その辺をどう落とすか、貴女の意見をうかがいたかったのだが…」

 ……そうだった。

 本来の流れであれば、アンダリアス将軍を倒して、占拠されていた王城を解放したあの時の戦果で、ファルコは大々的に『勇者』として認められていた筈だった。

 その戦果が(主に私のせいで)なくなってしまい、彼は対外的には、未だに神殿の騎士見習いの身分でしかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ! 奇跡的に、更新に気付きましたよ! わぁい。すっごくリョウを語るなぁと思ったら、推しでしたか。大丈夫です? 修羅場展開?(わくわく たぶん違う) しかし、攻略が面倒なキャラですね。攻略見…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ