第9話 店舗を建てよう!
次は日用品や寝具、食器、家具、食料などなど、あと店の備品なんかを買うために王都内のお店を巡っている。
サリアは孤児院に許可を取らせる為に一旦帰らせた。明日教会に挨拶しに行く予定だ。
何軒か回ってそれなりに揃えたんだが、異世界の商売を知って愕然としている。
彼奴ら客の足元見やがる。商人としては許せない。態度も横柄、逆に金を持ってる事が分かればヘコヘコしやがる。舐めてたよな、おい。
商品の展示は雑、売る気あるのか?埃乗ってるぞ?俗に言う5Kだ。臭い、汚い、危険、キツイ、暗い。商売は逆5Kを目指すべきだ。臭わない、綺麗、安全、楽しい、明るい。だから清掃ってのは大切にする。特に食品の棚の奥に虫の死骸とかあったらどうよ?誰も買わないだろホント。【清掃】って生活魔法があるんだろう?おっさんイリムから聞いて知ってんだぞ!商売舐めんなよ、こら!
特に店前!雑草!あと暗い!遠目に見たら営業してるのかしてないのか分からないから!電灯ないし、ガラスが高いのは分かるけど、壁を取り外せるようにするとか、反射を考えた間取りとかあるだろうが!雑草は論外。
店に入ったら野太く低く小さく「いらっしゃい」って挨拶が微かに聞こえる。買う気を削ぎたいのか?誰がそんな挨拶で気持ちよく買い物出来るんだ?酷いところは何も喋らねぇ!カウンター辞めろやお前!挨拶は明るく!元気よく!声の語尾をワントーン上げる!
商品の値段はいいよ。何分価値が分からないからボッてるのかも判断できない。しかし、此れだけ悪条件がそろうと信用できないね!あ〜ストレスだ!
何軒かは対応の良い店もあった。気持ちのいい挨拶、綺麗な店頭、整然と陳列された商品。気持ちの良い挨拶。うん、これがスタンダードだよな。
まぁストレスたまる店どももこんなのが競合店と考えたら気楽なもんだ。負ける気がしない。
買い物を終えて店舗の場所に帰る。では店舗の改装を始めよう。
イヴをポケットから取り出した。
「イヴ、元々ある店舗をダンジョンに取り込めるか?」
「問題ありません」
「じゃあ、頼む。それで予定より敷地面積が狭くなってしまったので、三階建に変更しよう。一階はポーションとイヴの作る雑貨類。二階はアテナの服、三階は空テナントだ。後々武器防具をやりたいと思う。一、ニ、三階のバックヤードと地下を階段で繋げて居住スペースにする。一階はLDKとお風呂、二階、三階は各人の部屋を、地下にはアテナ、リリスの作業部屋と、フリースペースをお願い」
「畏まりました。内装や備品は昨日の通りで構いませんか?」
「問題ない」
まだ日が出ているが、魔法で作るフリすればいいとの事なので、リリスとアテナにそれっぽいポーズを取らせる。
店舗が輝き出しニョキニョキと形が変わっていく。
ゴゴゴゴォっと言う地鳴りが響く、地下が出来ているのだろう。
あっと言う前に三階建の店舗が完成する。
「さぁ中に入ろうか」
皆んなで店舗の中に入る。
入ってすぐにレジカウンターがある。入り口付近にカウンターが有るのは盗難防止の意味合いがある。
出入りするお客様が良く見えるからだ。見えれば当然挨拶をする。気持ちの良い挨拶は来てくれたお客様に感謝を込めて言う。されるほうは意外と悪い気はしないもんだ。ムスって見られるよりずっといいと思う。
また、やましい気持ちがある人なら臆してしまうものだ。見られてると思うから悪い事は出来ないと思い込む。挨拶はプラスしか生まないな。
そうそう異世界初であろうPOSレジを導入した。POSレジとは販売時情報管理機能を持ったレジスターの事だ。俺は勘で商売をやるタイプじゃない。情報とは武器である。イヴいなかった時には諦めてたけど、イヴのお陰で実現できた。販売した商品の情報はバックヤードのパソコンに転送される。
電気はどうしてるかだって?DPで代用しましたよ。そんなに維持費かからないみたいだったし。何より劣化しないのがいいね。修繕費って結構馬鹿にならないから。
バーコードないだろって?なにをおっしゃってますか、レジ登録した商品のバーコードを印刷するタイプのPOSレジもあるんだぜ。これにより、店頭の在庫量、ジャンル売り上げ、ポーションの賞味期限や回転率、交差比率なんか簡単に出せるようになった。イヴ様様だな。
こう言った経理関係を管理出来るのが俺とイヴだけだから、POSレジは本当にありがたい。イヴがいなかったら手書きの伝票を一枚一枚俺が見て計算して管理するんだろ?ぶっちゃけしんどい。紙媒体はがさばるからデータちょーありがたい。
長くなったけど次に行こう。
一階はポーションと雑貨類の売り場にする。店の入り口側から奥にかけてが雑貨コーナー。コンビニでいうお弁当やパン、カップ麺コーナーにポーションを置く。
コンビニのあの配置はかなり計算されて出されている。
外から見える窓際に本を置くのは立ち読み客で外から見てもお客さんがいる事をアピールする為だ。だから立ち読みを追い払う店員さん、貴方少し間違ってますよ。まぁ何時間も立ち読みして何も買わずに帰る奴は追い払ってよし!そいつは客じゃねぇ!
お弁当コーナーが奥にあるのは一番売れるからだ。お客様が取り敢えず一番奥まで入る。一番奥まで行くとなると途中の商品も目に入る。衝動買い誘発を狙ってます。あと、動線によるお客様の誘導だね。混雑した時にもスムーズになるように工夫されてるよ。
ウチはそこまで購入頻度が高い商品とは思ってないから、ポーションを入り口側で日光に当てるのは良くないと思ったのと、イヴに作ってもらう異世界雑貨を目玉にしようと思ったからだ。多分売れる。
続いて二階は衣類コーナーだ。アテナに頑張ってもらう。今のところ白いTシャツみたいなのかローブくらいしかないが、アラクネ糸の防御性能はピカイチ。一般でも手が出るレベルで販売する予定だけど、貴族から冒険者にも好評なはずだ。
三階は空きスペースなのでパスして居住スペースにいく、二階、三階は個人部屋がそれぞれ四部屋ある。二部屋あまるけど、来客用とか増員用とする。部屋には寝具と机を置いていく。クローゼットは備え付けで作った。イメージはお風呂がない分広くなったけどビジネスホテルだな。
一階にはDLKとお風呂だ。ウチはアテナでも余裕ですれ違える広々間取りにした。LDKに区切りはなくオープンキッチンで25畳はある。買ってきた食器を並べる。あ!ガスレンジ、冷蔵庫、電子レンジ、オーブンを完備してます!食洗機も考えたけど、あれって対応してない皿もあるらしく、逆に異世界対応してる皿なんてないと思ったからやめといた。lHにしなかったのも同じ理由。鉄なら反応するらしいんだけど一応ね。
あと、お風呂!お風呂なんて貴族しか入らないとか言われたけど、販売員が汗臭いとかあり得ないだろ。地球の一般家庭が一坪のお風呂に対してアテナも余裕で入る二坪お風呂を作った!大人三人でも入れるぜ!脱衣所には洗面台と洗濯機をつけた!
次は地下だ。主にアテナとリリスの作業部屋がある。地下に作ったのは外から覗かれないようにだ。一応ウチの主力だから秘匿する。従属強化でぶっちゃけ凄いのが出来るんじゃないかと思ってる。
アテナとリリスの作業部屋にそれぞれ織り機などの機材を置いていく。
ふぅまぁこんなもんかな?
「改めて出来たけど、皆んなどうだい?」
皆んなに感想を求める。
「なんと言うかよく分からない物が多いな」
「面白そうだよね。織り機もイヴちゃんの力で凄くならないかな?」
「私にレジとやらが使えるのでしょうか?」
「まぁ俺の世界の物は明日使い方を教えるよ。で、明日から一週間は準備期間にしようと思う。イリムとサリアは俺とレジ、接客について学んでくれ。リリスとアテナ、イヴは商品を準備だな。棚を三回は埋める分の在庫量が欲しい。特にアテナ、最初は他の商店が買い占めにくると思う。かなりの在庫量を確保してくれ。イヴ、DPはどうだろ?足りそうか?」
「ギリギリです。補充が可能ならばしたいところですね」
「分かった。リリス、明日冒険者ギルドに薬草採取と魔物の討伐依頼をしてくれ、魔物の種類は問わない強い魔物ほど報酬を多く払うが、遺体は引き取る。素材の傷破損は問わない。依頼料の設定は任せた。俺はよく分からないからな」
「承った」
「さぁ明日から忙しいぞ!皆んなよろしく!」
「「「はい!」」」
「で、誰か料理できる?」
「「「………」」」
マジ?