第9話フィンネの優しさ
魔法が発動した。それはいいが、コップの上からジョウロでを使って注ぐようなイメージをしたのに、それをはるかに超える量と勢いで水ぼ塊が現れた。水から意識を話すと、落下してコップを粉々にくだいてしまった。
(え?なんでこんなことに?)
水が床に広がり、靴を濡らす。丈夫なブーツなので水がしみることはないが、部屋の脱水は難しいだろう。一応水が出たのなら成功はしてるのか?その判断を仰ぐためにフィンネの方に顔を向ける。そこには、感極まった様子のフィンネがいた。
「〜すごいわ!魔法をいきなり成功させたうえに、あの魔法陣でこんな量の水を出すなんて!あなたやっぱり天才よ!剣士なんてやめて、私と一緒に魔の道を進みましょう!」
そう言って俺の手を取り、ぶんぶんと振り回す。俺の魔法はなかなかだったらしい。
「そうなのか?でも全部俺の力ってわけじゃないからなー」
「?何言ってるのよ!魔法陣を書いたのは私でも、それを実行できるかは別よ!しかも、魔法陣は複数の魔法を使えるようにすると効率が落ちるの、その状態でノータイムであの量の水を出せるのはあなたの力の以外の何者でもないわ!」
そういうわけではないのだが、まあ俺の魔力は与えられたものだと言っても信じてくれないだろう。それに魔法が発動したとき、俺は他人の事ように感じてしまった。魔法が発動したという実感がない。血管の中に管を通す治療をした時のように、魔力が流れているのを感じるが、管のように異物感を拭えない。
「でも、なんか魔法が発動したとき自分のこととは思えなかったんだ。だから自分の力とは思えなくて。」
「薬で魔力を感じてるから当たり前よ!」
…そういえばそうだった。今の俺の悩みはなんだったのだろうか。薬を使ってるのは自分の力に入るのか?でも、フィンネの笑顔を見てると、急にどうでも良くなってきた。
「ありがとうフィンネ。君のおかげで魔法が使えたよ。」
俺はお礼の言葉を言った。本当は最初に言うべきだった。
「お礼なんていいわよ…私がやりたいことやっただけだし…」
とても顔が赤い。褒められ慣れていないのだろうか?俺も人のことが言えないが。正直さっきからフィンネに褒められまくって俺も顔が赤い。知らないけど。
「…そ、そういえば実験なんだけどどうする?俺魔法使えたけど。」
俺が来ないとできない実験があって、俺は魔法が使えない。だから教えてくれたのだろうと俺は思っていた。だけど、
「実験なんていつでもできるわ。だから今はあなたに魔法を教えたい。最低でも今日中に適正魔法を全部使えるようになってもらうわ!」
「本当に!でもこれじゃお世話になりすぎて困るんだけど…」
「あ〜もう、わかった、依頼変更するわ。私は魔法を教える練習をしたい。あなたはその練習台。OK?」
「そ、それなら問題ないけど。」
「じゃあ早速やるわ。次は風ね、チェックのために紐を垂らすから待っててね。」
フィンネの優しさが嬉しい。俺はそれに応えるために今日は魔法を一生懸命に覚えなければ。
(いつか、フィンネやショニさんのために役立てる人間になりたい。いや、ショニさんとフィンネ、だけじゃなくまだ会ってない誰かにもだ!)
そしてフィンネが紐を持ってくる。俺はフィンネの言葉を待った。
授業は夕方まで続いた。ガラスを割ったり、部屋の本を台無しにしたりと色々あったが、水と風と無の魔法が使えるようになった。闇は結局合成魔法だから、まだ俺が扱えるレベルではないらしい。
『合成魔法を使えるようになりたかったら、今使える魔法をもっと使うことね。いくら素質があっても経験がなければ暴走の可能性があるんだから。』
と言われ、闇はとりあえず諦めた。
結局依頼は達成した扱いになった。お金はもらえないといったが、依頼は依頼よ!達成したんだから正当な報酬よ!と突っぱねられて、結局受け取ることにした。それに、明日からは出かけるから会えないらしい。それまでに魔法を練習しておこう。
「すいませーん。依頼達成したんですけどー」
「お疲れー、これで初の依頼達成ね!で、どんな実験だったの?」
「実験というか、俺に対する授業でした…。俺、魔法使えなかったし。」
「あらあら、魔法使えないから教えてくれるなんて…その子本当にフィンネちゃんかしら?」
…なんてことを言うんだこの人は。でも、俺は笑ってるフィンネしか知らない。きっと、受付のお姉さんしか知らない顔のフィンネもいるのだろう。
「まあいいわ。はい、報酬の7000Cとギルドカードよ。」
ヤマト は 7000C を 入手した。正直、これがどのくらいの金額かわからない。ショニさんが置いていったお金もまだ見てないし、帰りに商店街によって、モノの値段を見ていこう。俺は受付のお姉さんに礼を言って、ギルドから出た。夕日が赤い。
俺は泊まってる宿の近くの商店街にいた。さすが商業の街とだけあって、人が多い。昨日はまっすぐ宿に帰ったので全く気付かなかった。とりあえず俺は【薬屋】と書かれた店に向かう事にした。
「おじさん、飲むと傷がすぐに治る薬とかない?」
「何言ってんだ?飲むと直ぐに治るとか、そんなのは伝説の中だけだ。消毒薬や痛み止めならあるが…」
「そうですか…ありがとうございます。消毒薬ください…」
どうやらファンタジーの定番。回復薬やポーションはないらしい。俺はかなりのショックを受けた。消毒薬を選んだのは依頼次第では怪我をするからと思ったからだ。
「あいよ、600Cになるよ。」
しまった。俺は元の世界の相場もわからないんだった。日給7000Cの600C…まあ高いもんじゃないだろう。だからお金を出した。。
「あいよ、毎度ありー」
消毒薬は小さいフラスコのような瓶に入っていた。俺の中のポーションのイメージにぴったしだったのでなんか悔しかった。どんな味か飲んでみたかったのに…。俺は商店街をふらふらと歩いた。
物の値段を見ていると、サンドイッチのような料理が400C、丼物は500C、服は2000Cから3000Cカバンは1500C正直、値段がわからない。けど、飯だけ考えれば、7000Cあれば一回500で14食は食える。宿の期間は残り6日。それまでに次の宿とかも探さなきゃいけないのか…。フィンネに聞いとけばよかったかな。そんなことを考えつつも、俺は宿に帰ることにした。。魔法の使いすぎかどっと疲れた。今日はもう寝よう。俺は夕食も食べずに寝た。簡易ベッドはまた片付けられていた。
俺は明日、あんな事件が起こるなら晩飯を食べておくべきだった、と後悔することになる。
物語が動かない…




