↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
15/15

スローライフはまだ始まらない

 スライム幼生を採ってきて、三か月ほど経った。ダンジョンの外では夏も盛りが過ぎようとしていた。


 その頃、俺とジャックは毎日ニコニコしていた。


 やはりスライム幼生は十倍に育ってくれていた。しかも最初から栄養状態がいいから、C級がほとんどいない。A級とB級が半々ぐらい。これは笑いが止まらない。


「そろそろ売りに行くわ」


 俺はジャックを置いてドラゴン牧場に行った。


 俺は比較的自由になったが、ジャックと二人で外に出ることができない。


「もう一人雇わないといけないかな……」


 俺はぼんやりと考えていた。いや、思い切って二人雇ってもいいかも知れない。


「そして俺は楽隠居でもしようかな……」


 ふと呟いた。元手もあるし、そろそろ辞めてもいいかなと本気で思っている。


 ドラゴン牧場に着いた。いつも通り柵はどこかが壊れている。1年ほど前に俺、ここで修繕作業をしてたんだよな。まさか今、養殖したスライムを売りに来てるとはな。


「今日はどうした?」


「養殖スライムを持ってきました」


 すぐにオーナーさんに大桶を見せた。オーナーさんはしばらく大桶の中を見つめている。厳しい視線で値踏みしているのだ。しかしすぐに驚きの表情に変わった。


「はーっ!」


 オーナーさんが叫んだ。


「はーっ!」


 驚きが止まらないのか、何度も声を出している。


「こんなにA級ができるのか!?」


「ええ。どうですか?」


 俺が尋ねると、まだ信じ切れないと言いたげだ。


「いやもう、驚いたとしか言いようがない……」


「お買い上げいただけますか?」


「もちろんだ!」


 オーナーさん、かなり乗り気だ。


「ただ、今回は試験なので、半額をお支払い下さればと……」


 オーナーさんは、少し止まった。それから「あー」と得心した表情を見せながら言った。


「今でもエドワードさんの弟子なんだな」


「そうですね」


 俺はうなずいた。


 * * *


 いつものようにスライムにエサを与えているとき、知らない足音が背後から聞こえた。


 誰だいったい?


「誰だいったい?」


 俺じゃない、ジャックが怒鳴っていた。


「ああ、邪魔したか」


 その声を聴いて驚いた。そして振り返った。


「エドワードさん!」


 ずいぶんと日に焼けたエドワードさんが立っていた。


「気づかなかったか?」


 エドワードさんに聞かれた。確かに分からなかった。何でかは分からない。エドワードさんの足音を忘れていたんだろうな。


「俺の靴が変わったからだろうな」


 エドワードさんが右足を上げて指さした。


 そうだ。以前はもっと柔らかい足音だった。さっき聞いたのは厚めの靴底の音だったんだ。


「野生のゴブリンを狩るには、結構歩かないといけないんだ」


 そうなんですか。なるほど……。


「それはともかく!」


 エドワードさんが俺の肩を何度も叩いた。


「聞いたぞ!養殖に成功したんだってな!」


「ええ!成功しました!」


 俺は何度もうなずいて答えた。


「それもこれもエドワードさんと出会えたからです。それと……ジャック、ちょっとこっち来て」


「承知しました」


 ジャックは丁寧な返事をして、俺のそばに来た。


「ジャックが頑張ってくれたお陰です」


「そうか、そうか」


 エドワードさんは笑顔でうなずいた。


「そうだそうだ」


 エドワードさんが何かに気づいた。バッグの中をまさぐって、何かを取り出した。


「食ってみな?」


 受け取ったものを見ると硬い肉のようなものだ。だいたい想像はついている。ゴブリンの干し肉だろう。もう一度言う、ゴブリンだ。俺はあからさまに嫌な顔をした。


「肉、嫌いですか?」


 ジャックが不思議そうな表情で尋ねてきた。俺は静かにうなずいた。


「じゃあ俺が食べていいっすか?」


 俺はエドワードさんの方を向いた。


「いいんですか?」


「いいぞ」


 ジャックはしっかり噛んで、しっかり引っ張ってちぎって、ゴブリンの干し肉の破片を口の中で咀嚼し続けた。


「ああ、うまいっすねこれ!」


 ジャックは喜んでいる。それを見てエドワードさんも喜んでいる。こうなると俺も食わざるを得ない。俺はジャックから返してもらって、噛みちぎった。


――クチャクチャクチャ。


「あ、うまいな」


 エドワードさんがニヤリとした。


「だろう?初めから逃げるのはいけない。まずは試す。いいな?」


「……はい」


 エドワードさんとは一晩中話をした。分かれて数か月しか経っていなかったが、お互いに話すことは山ほどあった。ゴブリン猟の苦労話を聞いたり、スライム幼生を見た話をしたり。いくら時間があっても足りないんじゃないかと思った。


 次の日、三人とも徹夜明けで目がくぼんでいた。


「これからどうするんだ?」


 エドワードさんが俺に聞いていた。


 そりゃもうここまで来たら、待ちに待ったスローライフ生活ですよ……。


「次は光るスライムを養殖したいです!」


 ジャックが言い放った。そうだ、確か雇ったときにそういうこと言ってたな。すっかり忘れてた。って言うか付き合わないといけないか?


「おおそうか!頑張れよ!」


 エドワードさんがジャックの肩を叩いた。


「はい!」


 ジャックも元気よく答えた。


「お前も頑張れよ!」


 俺の肩も叩かれた。


「……はい」


 まだ俺のスローライフは始まらないようだ。


お読み頂きありがとうございます。


全15話の最終話でした。


養殖は大成功でした。

結局「S級」の話は出てきませんでした。ジャックがやりたがってるので、きっと「俺」は巻き込まれるでしょう。

お金を儲けて、あとはスローライフ生活に入れるはずなんだけど、もう少し先になりそうです。

エドワードさんが最後に、ゴブリンの干し肉を持ってお祝いに来てくれました。ゴブリン猟で元気にやっています。


ここまで本当にありがとうございました。

また別の作品でお会い出来たらうれしいです。


よろしければブックマークや評価やコメントなどを頂けると喜びます。(しつこかったですね)


ありがとうございました。

これからもよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。