6-2回想5 15TH アニバーサリーライブ
裏返したペラペラのレシートみたいな紙きれに私の今日の運命が印字されているのだ。
神席か、糞席か。
このグループは特攻もレーザーもまたスクリーンに映し出される映像による演出ともに素晴らしく、天井席からの眺めが素晴らしい、天井席こそ神席とい人たちもたくさんいる。
それは私も把握している。
だけど、もちろん反論とかたくさんあると思う。それは承知で、私はファンサ厨なんだ。
紛れもなくファンサ大好きなファンサ厨。だからアリーナ最善列か、センターステージ前か、花道横通路側遮るものなし、ムビステ通過場所、スタンド1列目とかじゃなくては、満足できないというか、
全体みるだけなら、ブルーレイを見ればいいでしょ。ってなる。
ただ、スタンド後列でも天井でも、爆音や、足の下から突き上げるような会場の熱気の揺れとかの臨場感はやはり、いくら大画面テレビで見てもブルーレイの画質が良くてもかなわないし、やはり会場に足を運ぶ意味はあると思うけど。
ただ、ファンサがもらえる、最前列と豆粒にすらみえない米粒くらいにしか推しが見えない天井席と同じ料金設定はおかしいんではないだろうかとかねがね思ってはいるけど。
そして、私の紙切れは、
印字されていたのは、
【アリーナA5 7番】
だった。
神席である。
アリーナA
最前列きたあ。
しかもブロックが真ん中のブロック。
最前列ど真ん中である。
よかった。メニエール発作起こして、片頭痛起こして倒れて会社休んでよかった。
仕事してたらこのチケットわからなかったし、こんな良いお席で目立つとこ空席にしてしまうところだった。
来てよかったよお。
息もしないような気分で移動、アリーナに降りていく入口の係員にチケットを拝見しますと言われて見せて、すたすたと歩く。もうたくさんの人が入場して着席している中、どんどん降りていき、アリーナの後ろの方から前にずんずん進んでいく。間違いないかとチケットの番号を確認。間違えていない。到着し、椅子の後ろの数字と自分のチケットの番号を確認。放心したように座る。信じられないが、前には柵があって、柵を抑えたりする係のお兄さん。そしてステージしかなかった。
遮るのものが何もない。
最前列に私は座って、ライブが始まるのを待っていた。
SEが流れ、ドライアイスの冷たい冷気を靄が会場に充満し始め、
お客様に注意のアナウンスが流れ、
会場内では撮影は禁止ですの看板を持ったお兄さんたちが歩いていたのがはけはじめ、
私は気を取り直して、バッグの中の化粧ポーチから鏡を取り出し、鼻の頭がてかってたからお粉をちょっとだけ叩き、グロスを塗り、目薬を挿した。
はあ、意味もなくため息をつき、ペンライトといつもの癖で双眼鏡を出して首にかけた。それは使われることは無かったが最終的には持っていたことがよかったことになるんだけど。そのときはそんなこと知る由もなかったが。
私の隣に着席した二人ずれが、キャーっと抱き合って喜んでいる。
納得である。席についてみなくちゃわからない感動がそこにはあった。
多分これ最前列だよね?って思っても、来てみないとその圧巻の素晴らしさはわからない。
息を止めて目をみはるほどの圧倒的なステータス感がそこにはあった。
近い。
豆粒でも米粒でもなく
推しがみれる。
ヤバい。やばすぎる。これはしっかりと脳内に記憶して保存しないと。後で思い返せるように。
しかし、素敵な楽しい時間ほど、素敵で忘れたくない記憶ほど、覚えてなくて、頭の中の記憶領域から、
儚く消えて行ってしまう。いやな記憶は覚えているのに。忘れたくても忘れられず頭の中にこびりついているのに、素敵な記憶は零れ落ちて行ってしまう。キラキラとした金色の砂金のようにさらさらと記憶の波から零れ落ちて行ってしまう。
だからしっかりと目に焼き付けなくては。
そう思って、万全を期して目薬を挿した。
うおーっつ。
メンバーが円陣を組んで気合をいれている声が聞こえた。
ライブ前に円陣を組んでるとこDVDで観たことある。
円陣の声が近くのヲタにも聞こえたのか、キャーって歓声が上がる。
そして、幕はあがった。
メンバーの登場、歌とダンス。
ノリノリでペンライトを振るヲタ。
私ももうほぼ感動で涙ぐみながらペンライトを振った。
近い、大きく見える。
昨日もまあまあ席が良かったけど最前列は違う。
私の推しの京也が私に気づいてくれて何度もちらちらと視線が飛んでくる。
ヤバい。なんか胸の奥が暖かいもので満たされていく。
ドキドキとなんか変な安堵感、干されてなくて良かった。
最前列で干されたら悲しすぎる。
やっぱり京也が今日も優しい。幸せすぎる。
それに、今日めちゃくちゃ声出てるし、音程も安定してるし、京也が調子いい。ビジュアルも完璧だ。最高。はあ。素敵すぎて腰が抜けそうだ。最初からヤバい。
ヘブンズゲイトの15THアニバーサリーライブ。デビューして15周年。デビュー前からファンだった私にとって記念すべきライブツアーなので、もうこれは本当に初日だった昨日も感動して泣いてしまったが今日も胸にぐっとくるものがあった。
ああ、やっぱり。この曲いい。
京也が私にウインクして、投げチューしてくれた。