7森の中で 2
そう、幸せなライブ空間にいたんだった。
そして私はこの人を見つめてキュンキュンしていたんだった。
「ドームライブに行って、ライブ観てました。さっきまで」
「早瀬 成子」
「さんでしょ?」
?
「びっくりした?さすがに名前くらい覚えてる。成子さん。成子ちゃんかな?」
「・・・・」絶句する私。
「あ、あの。」言葉が出てこない。
だってドームライブやってるグループのセンターを張る人だよ。なんで私の名前とか。って普通思うじゃない。
「舞台とか来てくれてたでしょ?お手紙毎回くれてたの覚えてたけど、間違ってましたか?」
行っていた。毎年毎年劇場で行われるミュージカル観に行ってお手紙渡してた、けど、けど。
私京也が怪我したりしないようにっていつも心配で、アクロバットとかすごかったから、もう15年以上もデビュー前からファンだけど、劇場で出待ちの人たちに混ざって私もお手紙渡していたけど、でも、名前と顔の一致とか、そんなこと夢のまた夢というか期待すらしたことなかったのに。ずばりと名前を言ってくるとか、
ああ、これやっぱり夢だ。
「成子さんじゃなかった?ごめんなさい。」
「いえ、成子です。早瀬成子です。ありがとうございます。あの、信じられなくて、だって。」
「ま、色々種明かしはあるんだけどね。いつも見に来てくれてたし。有難いと思ってましたから。」
「それより、二人しかいないみたいだし、なんかわからないけど飛ばされちゃったみたいだから、とりあえず一緒に協力していかないといけないと思うんだけど、俺のことは、京也って呼んでくれていいけど、なんて呼んだらいいかな。あなたのこと。」
「成子でいいです。ナリコって呼んでください。」
「呼び捨てでいいの?」
わあ、憧れのナリコ呼び。呼び捨てだ。もちろんです。それでお願いします。と喉から声がでかかったが、私はこくりと頷いた。緊張して声が出なかったのもある。
「ナリコもドームにいた。俺と同じに。そして、いまどこだかわからない場所にいて、勇者だのなんだのステータスとやらが出てきたりしている。そもそもここがどこか、わからない。東京どころか日本かどうかも。」
「私はこれは夢だと思ってます。」
「夢の可能性ありと、」
「ってか、疲れちゃった、敬語とかで話すの。二人しかいないし、タメ口で話したら嫌かな?」
「あ、大丈夫です。むしろ、普通に話してくれたらうれしいです。」
とは言えいくらタメでと言われても私からは慣れないよ。こんなに緊張してるのに。と思いつつ一応返事をした。
「それじゃ、そうさせてもらうね。」
にこっと笑う。その笑顔を見たら余計にドキドキして顔が赤くなって来るのだった。
そんな、ほわほわした時間を、ああ、こんな夢見れて神様ありがとう、せっかくの神席なのに、もしかしたら、気絶して救護室とかに運ばれて人に迷惑とかかけているんだろうか、それでこんな夢見てたら本当に申し訳ないなあとか、こっそり思う。
そんなほわほわ空間は長くは続かなかった。
遠くからなんか激しい叫びやバタバタとした音、悲鳴やらが聞こえてきたからだ。
なんか、たくさんの人が争っているような、人とは限らないが、戦いみたいな音が聞こえてきたからだ。
二人で顔を見合わせる。
この場を離れて遠くに離れた方がいいのか、それとも様子を見に行った方がいいのか、どう考えても様子を見に行くには危険が伴うし、だからといって、この森にずっといるわけにもいかない。危険な生物がいるかもしれないし、夜になったら危険は増すだろう。もし人里みたいなものがあるなら、そこに向かって行ってみた方がいい。何か文明みたいなものがあれば何かわかるかもしれないし。
そうこうしているうちに争いの物音は止んだ。
二人で話し合って、とりあえず、音のしていた方に行ってみることにした。




