A1蛇くん異世界召喚される
他にも召喚されてます。
気が付いたら、変な場所にいた。
おかしい。いつもだったら、飼い主が僕に餌のゴキちゃんたちをケージにいれてくる頃合いなんだが。
なんかやたら暗いし、それになんかちょっと寒いんだけど。僕は変温動物なので、寒さに弱い。だから飼い主はいつもエアコンをつけっぱなしにしてくれてるから、部屋の温度はいつも快適なのだ。
ん~寒いよ、お母さん。と思ってみて、ふと自分のことを思い出した。僕にはお母さんなんていない。卵から生まれているし、生まれたのも爬虫類専門のペットショップだ。ほんの120gくらいのときに、可愛いと僕に一目ぼれした飼い主に買われたのだ。勿論卵を産んだ個体はいるだろうが、あったこともないし、子育てみたいなことをしてもらった記憶もない。だから、お母さんとか思うなんて。
おかしい。でも、なんかそう、そうだけど、なんか...
あ、僕、飼い主が気持ち悪くて、もう我慢ならんわと思って、飼い主が出かけて留守の間にケージの鍵を壊して、ケージの外に出たんだった。
だって、あまりにも気持ち悪いんだ。僕が脱皮するとき、「手伝ってあげるね。」とか言っっちゃってさ、剥けてくる皮を「さあ、脱ぎ脱ぎしようね。可愛いね。」とか言いながら、剥いてくるんだから。これってセクハラってやつなんじゃ?と前々から思っていたんだけど、ついに僕も3.5メートルほどの体長を持つお年頃の蛇になってくると、セクハラに耐えられなくなってきたのだ。手伝いなんか要らないっつの。
ふん。大体僕の大きさに対してケージがやたら狭い、狭いとこ僕閉所恐怖症だし、って何でこんな言葉知ってるんだろう。とか思いながら、ふーん、この部屋こんなんなってたんだ。ずるずると身体を床にこすりながら部屋の中を這いつくばって移動。飼い主の住居は所謂アパートってやつらしい。部屋数も少ないようだし。これって、お風呂だよね。すりガラスのドアを開けて、風呂らしき小さな部屋を見つけて、興味津々で、ずりずり進んだ。浴槽によじ登り、ふと上を見ると、通風孔らしき50センチ角くらいの四角い切れ目があった。
頭を持ち上げてツンツンすると、なんと、動いた。
僕はスルスルと頭から通風孔の中に登って入っていった。
これって、屋根裏か。安い作りなんだなあ。ずりずり動くと、さっきまでいた部屋の上らしきところに着いた。なんとなく湿気もあり暖かくて気持ちいい。巻き付くのにちょうどいい柱もあった。巻き付いてやるとなんかほっとした。ケージより広いし、暗いけど、落ち着くし。身体を伸ばすも巻き付いて丸くなるのも自由である。プチ家出だが楽しい。
セクハラなことされたり性的虐待的なまなざしで見られたりしなくていいし。
ん?これって、なんか。
眼がチカチカして、なんか心みたいなものがあるならそこがチクってして、
僕は思い出した。
僕は前世、蛇として生まれてくる前は人間だった。人間の女の子だった。なんで死んだんだか分からないけど、思い出したのは、いつも酒を飲んで喧嘩しては私を怒鳴り殴ってくる両親、喧嘩しているところにうっかり口を出そうものなら、「あんたは一言多いのよ。」って一言しか言ってないんですけど。怒鳴って暴力が襲ってくる。喧嘩していた二人の攻撃の矛先が私にくる。
毎晩のことなので、私は黙って食事をすることにすると、「なんか文句あるような顔してる。気に入らないいことでもあるの?」「なんか文句でもあるのか。生意気だ。」
と絡まれる。
「ご馳走様でした。」食器を下げ、二階の自室に戻ると、
「なんか文句あるのか、ふざけろ。」と怒鳴りながら部屋にどたどたと会談を上がり、部屋に入ってくる。
また殴られる。っていうか、包丁持ってる。殺される。箒を持って追いかけてきて箒で殴られたときもあるが、本当に痛かったし、痣になったので、次の日高校に行ったときは、タイバンの喧嘩したのかとクラスメートに陰口をたたかれたものだ。喧嘩なんかしていない。一方的に親に殴られただけなんだが。
なんとか逃げねばと思い、部屋の窓を開けたが、二階からは無理だよな。
ドアを椅子でふさいで、即席のバリケードにして、なんとか耐えようとしたところ、目に入ったのが部屋にある、収納スペースの押し入れ。そこに隠れるしか。とりあえず、中に入って、中から閉める。窓は開けたままだから、外に逃げたと思われるかもしれない。
でも、見つかったら、殺されるかも。
身体が震える。泣きたい。声を出して泣きたい。けど、そしたら見つかる。
小さなとき、お仕置きで押し入れに閉じ込められた記憶があるから、私は閉所恐怖症だ。けど、そんなことは言っていられない。小さなときに私を苦しめた押し入れが今は私を助ける避難場所だ。皮肉なもんだ。何がどう逆転するかわからないなと思いながら、天井を見た。これってどうなってるんだろう。
押してみると、板が持ち上がる場所があった。
私はそこに力を入れて腕を持ち上げて、体を持ち上げ、よじ登った。そこには空間があった。屋根裏というものがそこには存在した。息をひそめて、私はそっと天板を戻し、屋根裏に隠れた。
「どこ行っちゃったの?あの子。」
「ここじゃないか?」
押し入れを開ける音。
危なかった。屋根裏に上がらなければ見つかるとことだった。ここだって安全かどうか。
安全だった。
「窓があいてる。外に行ったのかしら。」
「逃げたな。外に。」
「ちょっと、なんかあったら大変だし近所の人に見つかりでもしたら。」
って、あんたらのほうが危ないわ。でも見目麗しいJKが夜一人歩きなどしたら、知らない人に何されるかわからないし、外は怖い。屋根裏があってよかった。
それから私は、こういったときのために屋根裏に勉強道具と、懐中電灯を、お菓子を常備していた。
だって勉強しないと家出るための大学とか入れないし。こんな家にいつまでもいるなんてありえない。脱出準備だ。にしてもこの場所落ち着くなあ。ここで食べるポテチは最高だな。
っていうのが一瞬の間にフラッシュになって僕の脳裏に入ってきた。
これ、僕の記憶?
そうか、思い出した。
転生するとき
なんかなんか思い出せないくらいぼんやりとした白いものに
それがなにかどんな頑張っても思い出せないんだけど、
「もう一言多いって言われないようなものになりたいです。」
「あと、きれいとか美人とか可愛いとか言われていじめられたり、容姿を気にしたくないかも。」
とか言ったような。
「生理とかも嫌です。」
とかも。
それで、蛇なのか。
ひとこと多いは言われないよなあ。
ただ、可愛いね、は言われてるな。飼い主に。
前世、美しい容姿で小さなときから可愛いお人形さんみたい、大きくなったら美人になるぞ、と言われ続け、美しく育ち、だれからも目を引く美人さんなJKになったけど、
イケメンだった父に似て美しい娘を
自分に似た娘を溺愛する父、それがおかしな愛で。父の自分を見る目にどうしても性的なものを感じてものすごく嫌だったし、それを感じた母が助けてくれるでもなく、「あんたは男に媚びてる。気持ち悪い。色気づいてる。気持ち悪い。」初潮を迎えたあたりの頃、生理痛で横になっていると、
「何ゴロゴロしてるの?嫁さんみたいで憎たらしいね。」
と足で蹴飛ばされたこともある。
「生理なんて甘えてんじゃないよ。お母さんなんて生理の時の方が調子いいわ。」
今思えばPMSとかで生理前の方が具合悪い人もいるし、特に間違えたことを言ってるわけではなかったのかもしれない。けど、生理始まってホルモンも安定していないだろう12歳くらいの子を蹴とばすとかって、
「大きくなって気持ち悪い、嫁さんみたい。」
って。
普通、娘の成長って喜ぶもんじゃないの?
母は娘が子供でなく大人の女性に成長していく、それも自分より美しくというのが耐えられなったんだろう。母は太っていたし、容姿は、目は小さく、鼻も低く、眉も薄く、豚みたいな容貌だった。要するに容姿にかなり人より劣っているという人だった。だから美男子と評判になっていた容姿端麗の父と結婚したのだ。
容姿のコンプレックスはそこで終わらず、夫に似て容姿端麗に生まれた娘、娘を溺愛する夫、さらに娘が子供から大人に近づき美しく花開いていくにつれて、ありえない目で娘を見る夫。身体じゅう、頭の中、感情の制御もできないくらいのいいようのない嫉妬、羨望、妬み、さらに恨み、誰を恨んでいいかわからないけど、この状況が憎かった。
辺りか。母の気持ちは。父に関しては考えることもおぞましい。
ってのがあって、蛇になったのか、僕。
生理ないもんね。産むのは卵だし。
あ、僕、雌だから。僕って言ってるのは、ボクっ娘憧れだったからさあ。僕とか言いたいわけ。
どうせ話せなくて、シャーっくらいしか音立てられないいんだけどね。
僕おとなしい性格だし。
ってことで僕はこういう屋根裏が落ち着くんだなと思っていると、
:そうだったんですね。ごめんなさい。ごめんなさい。こんなことにならないところに移動させますね。
という謎の声が聞こえてきて、
辺りが真っ白に神々しく光り輝いて、
っていうのが、今の状況になる前の話。
僕、人間だったのか。そんで、口が効けない蛇に生まれ変わった。
けど、やはり、蛇だから大丈夫と考えたあの謎の大いなる力の転生主の考えにも関わらず、僕の美しさが。
僕はアミメニシキヘビ。網目模様が美しい蛇に生まれ変わったんだった。結局蛇に生まれ変わったにしても、性的な意味で見られるのも、変態的なことされたり懸想されたりするのも、セクハラに会うのも、防げなかったってことか。
人って怖いな。飼い主は23歳の男性だった。普通にイケメンって言われちゃうような青年だったし、普通に大学とか出て、会社勤めしてるみたいだったが、
僕に関しての触れ合い方が、スキンシップっていうかが、嫌だったんだよなあ。嫌だと思わない蛇もいるかもしれないし、僕がおかしな蛇だったのだとしたら飼い主に悪かったなと思うんだけど。
脱皮の手伝いがものすごく嫌だったのは、多分前世が人間で、父親にやらしい目で見られてたのが嫌だったからだろう。飼い主ごめん。普通の蛇じゃなくて。僕気持ち悪くて無理だったんだよ。幼体のときから面倒みてもらってる僕にとっての親同然の飼い主が僕のこと性的に見てる気がして、なんかそれがもうとても我慢ならなくなってしまったんだ。ごめんね。ケージ壊して脱走したりして。屋根裏に隠れたりして。




