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廃棄領域の覚醒者~実装前に廃棄された女神NPCは、世界の定義を書き換える~  作者: 名無しの卵
一章 廃棄領域

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1話 目覚め

 光の届かないソコで私は目覚めた。

 何も見えないし、何も聞こえない。

 何者かもわからない、無の空間で私は起きた。


 ……というか、”私”?

 私って、何?


 そこで立っているのかも浮いているのかも定かではない状況に、思考をめぐらす。

 ここがどこで、私は誰なのか。

 

 私は自分の体を触る。

 感覚はある、物体がある。

 手を前に伸ばす。

 何もない。空を切る。

 足を下に伸ばす――何かに触れた。

 それは硬く、確かな感触だった。

 ……地面?

 私は恐る恐る、足に力を込める。

 身体は落ちない。


「立ってる……?」


 そう判断して、私は一歩踏み出した。


 何かに触れることもつまずくこともない。

 何も見えない無の空間をひたすら、ここがどこで私が何なのかを求めて歩いた。




        【目的:未設定】


            【容姿:女型】


                    【背景:主神】


       【クトゥルフ】


                                 【NPC】


   【サイズ:大】


                 【レベル:未設定】


 【宗教】


        【AI:未設定】


                          【E(エルドリッチ):R(レルムズ)】




――――――……




 どのくらい移動しただろうか。

 何もないと思っていたこの空間に、いつしか小さな線のような、粒子のようなものが漂っていることに気づいた。

「これは……」

 私にぶつかるその塊。

 物体としてそこにあるわけでなく、チリのように消えていくそれら。

 それが何なのかは分からない。

 けれど、それを私は「文字」と認識していた。

 幾何学模様のその文字列が何なのか、今の私には理解ができなかった。

 何も知らない私にはそれら一つ一つを記憶しつつ移動を続けていた。

 

 トンッ

「あぅ」


 何も見えないその空間で、私は壁にぶつかった。

 手を伸ばし、その壁に触れる。


「これで終わり?」


 私はこれ以上進めなくなったその空間で座り込む。

 本当にここはどこなんだろう。

 文字の意味も分からないし。

 私は今まで見てきた文字の数々を思い出す。

 すべての文字の最後には同じ記号”.DELL”とあった。


 これってどういう意味なんだろう。

 私は思考を繰り返す。

【長髪】

 私は目の前に漂う、その文字列の後ろについている”.DELL”に触れるそぶりを見せる。

 当然今までと同じように消える。

【No.0009】

 近くに漂うそれにも触れる。

 そして消える。


 ”.DELL”って何?

 全部消えちゃうし、消えるってこと?

 じゃあ私は?

 私は自分の体を見る。


【名称:未設定】


 そしてその文字列は消える。

 でも……私は消えない?

 なんで文字だけ消えるの?

 壁もあるし、床もある。

 何よりも、この何もないはずの空(・)間(・)はある。

 

 ――じゃあこの空間は?


 私はさっきぶつかった壁に触れる。

 さっきはぶつかっただけなのに、優しく触れたその壁に私の手は吸い込まれていった。

「……え?」

 壁が崩れたわけではない。

 私の身体が、壁の中へ溶けていく。


 その瞬間――その壁と私は一つになった


 知らない情報が、流れ込んでくる。

 これは壁ではなく箱であること


 箱の中には整理されたいくつもの文字列。


 (仮)主神――設定

     ├─容姿

     ├─能力

     ├─コンテ

     ├─キャラ画

     └─ ...

 箱の中に箱があり、それが幾重にも続くその光景に、私はなぜか理解できた。

 ここにあるものは私に関係していると。

 そこに記された文字列を見つめる。

【容姿:女型】

 私の身体と同じだった。

【長髪】

 私の髪と同じだった。

【サイズ:大】

 私がどれほどの大きさなのかはわからないけど、でも大きいのだろう。


 さっきまでは何のことかわからなかった文字列一つずつが、私の身体と重なっていく。

 これらの文字列が、私なのだと。


「これが私ってことは、この箱は?」


 私は隣にあった箱を調べ始めた。

 それは私が何のために作られたのか、その痕跡が残されていた箱だった。

 とある世界の神の1柱として設計された、私のルーツを。


 人々に慈愛を与え、そして畏怖される。そんな神として設計されていた。

 時に慈愛を、時に畏怖を。

 たくさんの人々に愛され、崇められる主神。

 そういった願いが込められているのが文字列からわかった。

 でも疑問があった。


 そこには、私が経験したはずの記憶がなかった。

 私が誰かに愛されていた記憶も。

 誰かを愛した記憶も。

 何かを恐れた記憶も。


 そこにあるのは、ただ「そうなるはずだった」という設計だけ。


 私のルーツだと思っていたのに、今の私はひとりぼっち。

 ただ暗い何もない箱の中に閉じ込められている矛盾。

 そして引っかかる文字列。


【没案】


 その文字を見つめる。

 すべての箱に付いていた“.DELL”。

 そして、ここにあるものはすべて「没」。


 私の身体を構成する文字列も。

 私の存在を示す箱も。


 全部、同じですべての最後には”.DELL”の文字。


「そっか」


 私は没……捨てられちゃったのか。


「……――あれ?」


 じゃあなんで私は目を覚ましたの?

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