第74話〜感謝〜
「おはよう花音」
司は眠っている花音に言葉をかける。これは、司の日課のようなものだ。司の問いかけに花音は答えない。司は少し微笑むと部屋から出ていく。
そのまま王城を出て、城下に向かって歩いていく。その手には一枚の紙が握られていた。
目的地につき足を止める。そこはカフェののような、綺麗な店だった。扉を開けて中にはいる。中には酒類も置いてある。昼間はカフェ。夜は居酒屋のような店なのだろう。朝から酒を飲んでいる騎士も数名いる。
「おはようございます。いらっしゃいませ」
声が聞こえてくる。声の主は女性のエルフだった。エルフは司の顔を見て、ハッとした表情をする。
「いらしてくださったっんですね。少し待ってください。すぐに呼んできますから」
エルフが中に入っていってすぐに、少女のエルフが現れた。そう、司の持っていた紙の差出人は誘拐されたエルフの少女だった。
「おはようございます」
元気な挨拶。あの時とは、全く違う様子だ。
「どうぞ座ってください」
カウンター席に促されて座る。
二人がカウンターから出てきて、司の横までくる。
「この度は娘を救っていただきありがとうございました。そして、わざわざ出向いてもらってありがとうございます」
エルフは深々とお辞儀をしながら感謝を口にする。おって、少女のエルフもお辞儀をする。
「いいですよ。気にしないでください」
「本当に感謝しかありません。私はこのエルフの母 ハナ そして、娘の アナ です」
「僕は、藤井司と言います」
司の言葉に対して、二人は疑問の表情だ。
「こっちが本当の名前なんですよ。あっちはあだ名のようなものなんです」
「そうなんですね」
二人とも驚きを隠せていない。本当の名があったこと。なぜ、自分たちに本当の名を口にしたのか。司にもそれはわかっていなかった。なぜか、ここでモンブランと名乗るのはいけない気がしたのだ。
「美味しいものを振る舞いますから、楽しみにしていてくださいね」
ハナは厨房に戻っていくが、アナは司の横から動かない。
「あの時は、失礼なことを言ってすいませんでした」
とても大きな声だ。決意が籠っているよな、強い声。
「大丈夫だよ。僕は気にしてないから」
「本当ですか? あの時は私も動転していて」
「大丈夫。本当に辛かったんだよね」
「本当に気にしてませんか?」
「本当だ。だから、頭を上げて。可愛い顔がもったいないよ」
「かっか・・・」
顔をあげたアナは耳まで真っ赤になっていた。その光景に司は微笑む。アナはさらに赤みをまし、素早く中に消えていった。




