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第75話〜食事〜

「お待たせしました」


 司の目の前には、とても豪華な料理が並べられていく。当日急にできるようなものではない。事前に準備していたからこそ、出てくる料理である。


「いただきますね」


 料理を口に運んでいく。


「とても美味しいです」


「お口に合ってよかったです。アナも一生懸命下準備していたんですよ」


「そうなんですか。本当に美味しいですよ」


 料理を半分ぐらい食べたぐらいで、不穏な影が司に近寄ってくる。


「おいおい。美味そうなもの食べてるじゃないか。そんなもんメニューに載ってないよな。

お前みたいな小僧にはもったいないだろう?」


 近づいてきたのは、司よりも先に店にいた騎士だった。その口からする酒臭さに、司は思わず顔を背ける。


「なんだ? 人の顔も見れないか? 礼儀のなってないやつだな」


「いい加減にしてください。その人は私の特別なお客様です」


 声を発したのはハナだった。


「そんなこと言わないでくださよ。俺たちだって常連なんだから、特別ですよね?」


「昨日初めていらしていただいただけですよ? 朝からまた酒を飲んで。少し酔いすぎなのではないですか?」


「酷い言い草だな。お客様は神様なんじゃないのか?」


「私の客人に失礼をするような人は神様なわけがないでしょう」


「こんなにキッパリ言われると傷つくね。そうだろう。お前ら?」


「そうですね。とても傷つきました」

「幸いよいものをお持ちですから。この傷はすぐに癒してもらえそうですね」

「楽しみですね」


 同じテーブルについていた三名がニヤニヤと笑いながら立ち上がる。


「いい加減しろ!」


 怒声が店のなかに響き渡る。その声は司ではなく。中から出てきたアナのものだった。


「あなた達は私たちのやりとりを見ていなかったんですか? この方は命の恩人なんですよ。今すぐ出ていってください」


 大きなこえに少し怯んだ騎士だったが、すぐに調子を取り戻す。


「だから、傷を癒してもらったらすぐに出ていくから」

「自分から出てきて健気だね。探しにいく手間が省けたよ」


 ニヤニヤとする騎士達に、アナは嫌悪感をあらわにする。


「最低」


 騎士の一人がアナに近づいていく。


「そういうことだ小僧。後はこっちで楽しむから、出ていっていいぞ。誰かに言ったらわかってるだろうな? 顔は覚えたからな」


 司は肩を叩かれながら、外に出るのを促される。


「来ないでください」


「やめなさい。こんなことをして許されると思っているんですか」


 アナを庇うようにハナが立ち塞がる。


「まずは私からってか? いい態度だな」


 バンッ


 ハナの手に男の手が触れそうになった時、テーブルを叩いて司が立ち上がる。


「ごちそうさまでした。とても、とても美味しかったです」


 出された料理は綺麗に完食されていた。司はゆっくりと男の方に歩いていく。


「なんだ? 小僧も仲間に入れてほいいのか? だが、ダメだな。これは小僧には早すぎる」


 司は動かない。


「見逃してやるっていったんだぞ? 行かないならお前から殺すぞ」


「おもてに・・・」


「なんだって?」


 司がボソボソと呟いた言葉を騎士達は聞き取れない。


「おもてに出ろ!」


 ありったけの怒りの感情を込めた咆哮だ。


「ただの冗談かと思っていたが、限界だ」


「舐めやがって。殺してやる」


 強い言葉を使う騎士だが、その足はガクガクと震えている。


「すいません。迷惑をかけて。ありがとうございました」


 司は二人にお辞儀をすると、外に向かって歩いてく。


「来い」


 呟いた司は扉を開けて外に出ていく。つづいて、騎士達は剣を持って外にゆっくりと出ていく。


 外に出ない。という選択肢もあったかもしれない。だが、騎士達はその選択をしなかった。その選択をしたらどうなるのか。なぜか、理解できていた。外に出る方が、可能性は高いと本能は理解していた。

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