16.5 閑話
寒くて目が覚めた。
ぶるっと身を震わせて、薄目を開ける。カーテンの隙間から入ってくる柔い光のおかげで、部屋の中はぼんやりと明るい。
何時だろう、と枕元に置いた目覚まし時計に手を伸ばそうとして、気づく。
身体の上には、薄い毛布しか掛かっていなかった。羽毛布団が無い。
その理由は、すぐにわかった。
私の隣に、こんもりと布団の山ができている。
山の裾には、広がる長い髪と幼さを残す妹の莉緒の顔があった。
一定のリズムで動く山に、懐かしさを覚える。そういえば、昔もこういうことがあったなと思い出して、唇が綻んだ。
中学生の頃まで、妹は怖い話を聞いたり怖い映画を見たりした後だけでなく、落ち込んだり淋しかったりするときには、よく私の布団に潜り込んできた。
甘えんぼだね、と言ってからかうと、唇を尖らせながらも布団から出ようとしない。そして結局寝ている間に布団を奪われ、寒さで目が覚めたものだ。
変わらないなぁ、と苦笑すれば、毛布に包まれた脚に重さがかかった。
のし、という重みと同時に、温かさを感じる。
薄暗い部屋の中、足元でゆったりと揺れるのは雪尾の白いしっぽだ。
のし、のし、ぽす、と胸元まで重みが掛かる。どうやら、布団代わりになってくれるらしい。
見えない姿に、感じる温かさ。
「……もう少し、寝よっか」
今日はせっかくの休日なのだ。
二度寝しても大丈夫。
布団の山に寄り添うようにして、私は毛布と雪尾を布団代わりに目を閉じた。
くぁふ、と小さな欠伸が耳元で聞こえた。




