シェアハウス
義兄が高校を卒業して数年が経ったある日のことだった。
「悠真、シェアハウスをしてみないか?」
そう言ったのは義兄だった。
僕のことをわかっているはずなのに、どうしてそんなことを言うのかわからなかった。
「シェアハウス……」
義兄の本気のその目を見て嫌だ、とは言えなかった。僕は、シェアハウスを見てから判断することにした。
そして、今日。シェアハウスを見る日だった。第一印象はでかい。…でもなんだか悪い気はしなかった。
「多分…今の時間なら…まだいるかな…ま、行こっか。」
義兄のその言葉に頷いた。
義兄は扉を開けた。そこに見えたのは、…凌……だと感じた。
「いらっしゃい。まぁ住人になるかもしれねぇ人にいらっしゃい、もおかしいか?」
「いいんじゃない?別に。」
猟賀さんと義兄は喋っていたけど、凌は喋らず黙って遠くを見ていた。
「あ…ごめんな…凌、今喋れねぇんだわ。…まじ…後悔してる、どんだけ我慢し続けたんだろってさ。」
猟賀さんが僕に全てを説明してくれた。そのすべてを聞き、僕は、自分がまだ恵まれていたことに気づかされた。
そして、僕はシェアハウスの住人になることを決めた。
後から聞いた話、凌を見る人がいなくて困っていたらしい。猟賀さんも義兄も社会人だから。