イーサンの発熱
「うぅ、おねえちゃん、、あついよお、、」
これから太陽が昇り始めようとしている早朝の時間、隣で寝ているイーサンが苦しそうに唸っている声でアクアは目が覚めた。
寝ぼけ眼で首だけ横を向けるとイーサンが顔をしかめ、ハアハアと肩で息をしていた。
額には大きな汗が流れ黄色がかったふわふわの髪はぺたりとおでこに貼り付いていた。
「イ、イーサン?!大丈夫??」
アクアは布団からガバッと起き上がりイーサンの肩を軽く揺らす。
シャツは汗でじんわりと湿っており、服の上からでも分かるくらい体温は高かった。
連日の猛暑で寝苦しい日々が続いているこの頃、幼いイーサンは熱を繰り返していた。
「のどかわいたよお」
絞り出すかのようにかすれた声を出すイーサンに「ちょっと待っててね」と言って優しく頭を撫でる。
他の子供達を起こさないようにそっと立ち上がり、全開になっている大きな窓から身を乗り出し外に出た。幸いにもアクアの寝てる位置は窓辺に面した位置だったため、誰も起こすことなく外に出ることができた。
砂の上に静かに着地する。足の裏が少しひんやりして心地がよかった。
アクアは早足で家畜小屋の一角にある牛小屋を目指して向かう。
水がなかなか手に入らない状況である今、水分といったら牛からとれるミルクだった。
家畜小屋は修道院に併設されており、薄暗い中でも迷うことなくすぐ行ける距離にある。
キイィと音を鳴らしながら立て付けの悪い扉を開けると獣臭とワラの香りが混じった匂いがした。
牛たちは皆寝静まっており、時折いびき音が低く響いた。
「ごめんね、こんな時間に起こしちゃって」
1番手前の牛(モモと書かれた白い首輪を付けている)をアクアは優しく叩く。
そして、入り口近くの棚からとった小瓶をモモに当て慣れた手つきでミルクを絞る。
モモは少し気だるげな表情を見せたが、抵抗することなくじっとしていた。
「よしこれでいいかな、ありがとモモ」
モモの体温で生温かいミルクが小瓶に半分ほど溜まったのを見届けてアクアは言った。
眠そうなモモの頬を軽く撫で、ミルク瓶を持ったアクアは牛小屋を後にした。
小屋から出る際にちらっと後ろを振り向いたときには、モモはすでに丸まって眠っていた。




