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最終話「赤子時計」

 一


 それは赤子時計と呼ばれ、歴史の中に葬られた、あまりにおぞましく、また悲しい記憶であった。


 明治時代末の東京。さる華族の娘が使用人と許されざる恋をし、生まれた子供は死産だった。未来に絶望した二人は心中することにし、ある懇意の時計屋に息子のなきがらをあずけ、ある奇妙なお願いをした。二人がこの世で契りを結んだ証しとして、この子の頭蓋骨をくりぬいて中に機械を埋め、置時計にしてくれ、というのである。あまりの依頼であったが、娘の幼少から親しくしていた時計屋は二人の想いを無下にできず、了解した。


 彼は切断した赤子の骸骨の顔面を割って、中にぜんまいやら歯車などの機械を入れ、表面に秒針、分針、時針の三本の針のついた時計の文字盤をはめた。そしてその上にガラスをはめ込んで窓にし、両手に収まるほどの大きさの小さな置時計にした。全体を赤茶色に塗られた「赤子時計」なる奇っ怪な品は、こうして誕生した。むろん売り物にはせず、店頭に飾り続けるつもりだった。


 ところが、後ろのぜんまいのネジを巻いて動かしてみた時計屋は、腰を抜かした。普通ならねじを巻けば秒針が動き出して、コチコチと無機質な音を立てるはずなのだが、この赤子時計は、針が動きだすや、中から甲高い「ケケケケケ!」という声が発されたのだ。それは完全に赤ん坊の泣き声だった。


 あまりの恐ろしさに「これは祟りだ」と真っ蒼になり、蔵にしまいこんで二度と触るまいとした。いくら娘さんの頼みでも、赤ん坊のむくろを時計にするなどという冒涜をすれば、呪われるのは当然。あの二人は自分たちのためとはいえ、悪意だったわけではなく、むしろこの子の供養になろうという気遣いで自分に託したのだが、天のことわりはこれを許さなかったのだ。といって、二人はもうこの世にいないので、彼らに返すわけにもいかない。

 さようなわけでこの時計屋は、この恐ろしい時計を自宅の奥にしまい、ないふりをした。

 だがその後、店は不審火により全焼し、時計屋は家族と共に焼死体で発見された。商品もあらかた黒焦げになり、赤子時計も炭と化して消えたはずだった。


 ところが、時を経て二十一世紀から二十五年以上たつ今も、その赤茶けた時計が、東京都心にまだ存在するという。





「……で、それを我々は探しに、ここへ来たわけだが――」

 いつもの背広姿の霧島譲葉(きりしま ゆずは)が、眉間にしわを寄せて流し目を送りつつ言うと、その先には目にする誰もが思わずガン見せざるを得ないほどの超絶ビジュアルがいた。譲葉もかなりのイケメンだが、これの破壊力の前には月とスッポン、富豪と無職、神と悪魔ほどの違いである。


 彼がさっき黒の軽自動車で路肩に乗りつけたところを、その相棒たる少年が待ってましたと現れたのだが、遠巻きでも驚いたのに、降りてまじまじと見た彼は、ますます言葉を失った次第。それでもやっとひり出た言葉は、

「闇介、なんだその格好は」



 彼の相棒たる闇介(やみすけ)イチロウは、ピンクの花びらがそこかしこにひらきまくった薄ピンクの浴衣に身を包み、腹にはこれも濃いピンクの帯をしめ、足元は白い鼻緒のつっかけ、という完全なお祭り気分。さらに小柄で顔が壮絶にかわいいせいで、たったいま空から降りてきた、ものすごい美天女様にしか見えない。頭にはいつものピンクの花柄の髪留めをしていて、そのたたずまいは、通る者は誰もが振り返らざるを得ない超激萌えルックである。


 さきほど「月とスッポン」とか言ったが、地味な背広で大人クール系の譲葉のルックスの良さとは種類が違うので、実は比べるのは無意味と言える。また見慣れているのもあって、彼は萌えよりはむしろ、「なんじゃそりゃ感」の方が強く出てしまった。



 闇介は時代劇の町娘のように袖をきゃいきゃいと振りつつ、渋い顔の相棒にはしゃぎながら言った。

「だって浅草だよ?! 観光しなきゃ嘘じゃん! 雷門とかさぁ。あとなんかおいしいもの食べて、あ、スカイツリーも見たいなぁ」

「遊びに来たんじゃないんだぞ」

「わかってるって!」と横から肩をぽんと叩いて笑う。「仕事終わってからだよ、当然じゃん。あー楽しみだなぁ」


 連れまわす気満々のようで、譲葉は眉間に指をあててため息をついたが、「まあ終わってからなら、いいか」と思いなおした。このあと他に仕事があるでもなし、彼はなんだかんだでこの美少年のことは好きだったから、付き合うのはむしろ歓迎である。キレかけたのは、てっきり先に遊んでから仕事のつもりかと思ったからだが、相棒の男の娘は思った以上にプロフェッショナルだった。


 しかし、彼も高校生だから立派なティーンなわけだが、ここまで子供っぽい姿は初めてだ。普段は冷静で何事にも斜に構えているふうなのに、町の雰囲気が祭りっぽいというだけで(今日なにか祭りとかイベントがあるわけではない)、こうもぶっ壊れてしまうとは。浅草おそるべし。


 だが、確かに浅草は地元でもない限り、普段はまず来ない場所である。目指すはにぎやかな表通りではなく、裏路地の奥。その一軒に、あの伝説の赤子時計があるとの情報がある。もし見つけて有害であれば封印する、というのが今回のミッションである。


 二人はひょんなことで出会ってから、いつの間にかコンビで霊的事件を解決するフリーの社員みたいになっているが、霊能力があるのは高校生の闇介だけで、社会人の霧島譲葉(きりしま ゆずは)は自分の車で現場へ連れて行く運転手のような役目だった。しかし、これがかなり便利で、相方に重宝されている。






 疑惑の家は笑うほどあっさり見つかった。といっても完全に廃屋だが、周囲が竹林で人通りがなく、勝手に入るのは簡単そうだ。竹林の前に車を停めて降りた。


 入る前からはしゃぐ闇介。

「あー、とっととなんにもないとわかって、遊びに行きたいなぁ」

「思ってても言うなよ……」

 などと、また額をおさえたが、譲葉はふと、会ったころには自分のほうが彼に激メロだったのを思い出し、笑みがこぼれた。それが付き合ううちに慣れてしまい、今では相手が甘えん坊の弟で、自分が小うるさい兄みたいになっているが、「最初は本当に惚れていたなぁ」と感慨深かく思った。

 それに気づいた闇介が、「なんだ、譲葉も遊ぶ気満面の笑みじゃないか」と白い歯をむいて笑った。「遊ぶ気満々」に引っかけたんだろうが、「遊ぶ気満面」ってなんだよ。

 しかし突っ込む間もなく、開け放しの入り口から勝手に入られたので、あわててあとを追うしかなかった。



 木造平屋で元は店だったような感じだが、そんなに経っているように見えない。情報では明治時代からあるらしいのだが、こんなボロ家が持つとも思えない。床も壁も朽ちて赤茶けてはいるが、どう見ても築二、三十年はそこらだ。壁に茶だんすと思しき出っ張りがほこりだらけでデンと突き出ていて、当時は商品が乗っていたのだろうが、当然ながら今はなにもない。


 そう広くない部屋をあらかた調べて、譲葉は「こりゃハズレだな」と言ったが、相棒のうれしがる声がしないので不審に思った。遊べるのに「やったー!」とか言わないということは、まだ仕事が終わりじゃない、ということだ。

 見れば、彼は奥の壁際の床を四つん這いで調べていた。汚れるからか、すそを腰までたくし上げ、むき出しの太ももがガラスのない窓からの陽をうけて、きらきらと光っている。譲葉は、ふとえらくきれいだと思った。


「なんだ、どうした?」

 譲葉が近づくいて聞くと、闇介は彼を振り返り、薄笑いで言った。

「あるよ……地下室」



 二


 床板は簡単に外れ、大人一人が入れるほどの穴が現れた。懐中電灯で照らすと、中は石の階段が降りている。闇介から先頭に入ったが、それは譲葉は大人とはいえ霊能者ではないので、彼のほうが急な事態にも対応できるからだった。いつものことである。

 それでも大人としては、未成年を行かすのは内心不服だったが、仕方がない。彼は、ただの会社員。お化けが襲い掛かっても、相方のように吹き矢で倒すようなわけにはいかない。



 長いこと誰も入っていないのか、空気は重くよどんでいた。深さは一階ぶんのようで、すぐ地階についた。トンネルを掘って作った感じで、天井は高く、広さは二部屋ぶん程度のようだった。地下室にはちがいなかったが、床は土間で周りの壁も岩と泥でしかなく、部屋というより、ただの洞窟である。


「どうも、急いで作って、すぐふさいだ感じだね」

 奥まで照らしながら闇介がつぶやくと、隣で譲葉も周りを照らしつつ言った。

「こんなところが明治時代からあるとは思えん。やっぱりハズレじゃないか?」

「ずっと見つからなかったんだよ。封印されてたんだ」

「えっそれじゃ、さっき見つけたとき、封印を解いたのか?」


 闇介はうなずき、さらに進んで最奥を照らすと、岩の壁際に四角い棚のようなものがあった。幅はざっと一メートル四方、高さは学校机くらいで全体が黒ずんでおり、かなりの年季もののようだ。だが、二人の目はその真ん中に乗っているものに集中した。両手に収まるほどのサイズの丸い置時計。赤茶色で丸いガラスの中に、それぞれがてんでを向いた三つの針があり、なんの音もせず、動いてはいないようだった。

「赤子時計か?!」と叫ぶ譲葉。「まさか、本当に?!」

「……」

 興奮する相方と逆に、闇介はただ眉をひそめ、時計をじっと見つめていた。



 ふと出会ったときのことを思い出した。

 あのときは、譲葉が少女の霊に操られてマンションの屋上から飛び降りようとしたが、すんでのところで阻止できた。だが、それは予感のおかげで先回りできていたからだった。

 しかし、今回はまるで違う事態になった。完全に不意打ちだった。


 譲葉はあっという間に走り出し、時計をひっつかむと、後ろのネジをぐるぐる巻いた。

「あっ、よせ!」

 闇介が叫んだ直後、時計は甲高い声をあげだした。

「ケケケケケケケ!」

 まがまがしい赤子の泣き声が、部屋じゅうに響き渡った。



 譲葉は左手に時計をつかんだまま、うつぶせに倒れた。時計から黒煙が噴き出し、むくむくと黒い人型になって浮かんだ。電灯を地面に置き、闇介はその揺らめく影をにらんだ。頭と胴体だけのそれは、放たれる濃厚な邪気からして、明らかに何十年もの長きにわたり怨念をため込んできた大悪霊だった。


「動くと、こいつがどうなるか分かってるな?」

 低くよどんではいるが、明らかに子供の声で影が言った。

「言わなくてもわかるか。おまえは普通の人間じゃないようだし」

 相方は、いつ取り出したのか、右手に握る鋭いナイフを自分の首筋にあてて気絶している。


「君は時計に憑いている……」 と言いかける闇介。「にしては、少々おかしいな」

「ガキの霊能者にしちゃ、鋭いな」と笑うように言う。「そう、その時計にされた奴は、とうに極楽浄土へ行っている。母の愛を受け、時計が墓標となり、めでたく供養されてな。

 だが――」

 子供の霊の声は、いっそう低く気味悪い響きになった。

「もう一方の奴は、成仏などできなかった。俺は、そいつが母から引き出されたとき、一緒に死んだ胎児だ。ほとんど双子だが、数時間先に生まれたから、そいつの兄だ。


 俺は出産のとき、そいつの裏に張り付いていたんだが、気づかれずにはがれ、テーブルの後ろの闇に落ちて、そこで苦しみながらゴミとして死んだ。本当なら、とうに死んでいたそいつのかわりに、俺が生きるはずだった。それを不用意な親たちのせいで無残に殺されたのだ。

 だから、この時計にとり憑いた。関わる全てのものたちを呪い殺して地獄へ送り、ついにはここへ封印されたわけだ。

 感謝するよ、お前らのおかげで、こうして再びよみがえることができた」


「それは……」

 一瞬言葉を失い、闇介は悲し気に眉を寄せた。

「さぞ、つらかったろうね……」

「それがなんだ。おまえなんぞに何がわかる」と、あざけるように、「俺はこの恨みをどこまでも背負い、俺を捨てて愛する者と安らかに死にやがった母と同じく、安楽にこの世に生きていやがる全ての者どもを、永劫に呪い続けてやるのだ」


「時計の中にいたって、なにもできないんじゃないの?」

「そうだ。だからこの男の体を乗っ取る。魂を食って入れ替われば、俺は時計をもって自由に動けるようになる。

 だが、お前は特殊な能力があるだろう? 邪魔しないで帰れば、お前のことは見逃す。だが、手出しするなら、この男を殺してお前もやる」


「待ってくれ。そいつよりぼくのほうが若いから、君と波長が合うはずだ。それに霊能者だから、君の力も増大するよ。彼は見逃して、ぼくを殺してくれないか?」

「そんなことを言って、なにかする気だろう」

「ぼくの小細工なんて、全部お見通しなんでしょ? 明治からいる大悪霊の君なら」

 悪霊は、ふふんと笑うように言った。

「確かに、魂を取るなら、お前のほうが良さそうだな。よし、この男は見逃してやろう。こっちへ来い。何かしたら、こいつを殺すからな」

「良かった」


 だが前に出ようとするその肩を、後ろからきゃしゃな指が押さえた。見れば、顔じゅう包帯でぐるぐる巻きの女。

「君は、いいところに出てくるね」

「やめなさい」とクノッソス。「なにか策があるはずよ。なにも犠牲になることなんか――」

「だって、譲葉が死ぬんだよ?」とうっすら笑う。「ぼくが代わりになって当然じゃないか」

 すると、相手は珍しくイラついた口調になった。

「彼が起きてあなたが死んでたら、どう思うかしら? 自分のせいだと知ったら? 絶望して死ぬわよ」

「君が説得して。そのくらいやってよ。友達じゃん」

「と……」

 顔はないが、困惑しているのが明らかに分かった。

「大丈夫、譲葉はそんなに弱くないよ」と闇介。「それに、ぼくのことを思ってくれるから、自分を粗末になんか絶対にしない。それは、ぼくが一番嫌がることだから」



 手が弱まったので前を向き、歩き出す。目の前まで来ると、影は嬉しそうに言った。

「入るから、口をあけろ」

 だが、あんぐりあいたそこから覗くあるものに気づき、後ずさった。

「なっ――?!」

 叫ぶや、闇介の口から吹き矢がひゅんと飛び、影の頭のど真ん中に命中した。たちまち溶解し、崩れ落ちていくさなか、彼はあることを知ってうめいた。

「お、おまえ――人間じゃ……!」

 そして黒い塗料のような小さな塊になって棚の上に落ちた。闇介は、ただちに譲葉の手から時計とナイフををもぎ取り、彼を棚から引き離した。



「まあ、なんかやらかすとは思ってたわ」

 そう肩をすくめるクノッソスに、少年は笑って言った。

「本気でビビってたくせに」



 三


 譲葉が気づくと、あおむけに寝ている彼の顔を、淡いピンクの浴衣姿の美少年がしゃがんで見ていた。あわてて起き上がると額が痛み、触るとあざがある。

「転んで顔を打って気絶したんだよ」と闇介。

「いてて、ダサいなこりゃ」と顔をしかめ、「あっ、赤子時計は?!」


「これ」と渡され、ネジを巻こうとしたが、さびきってまるで動かず、あきらめた。

「そりゃダメだよな、年代物すぎる」

 だが、言ってとんと棚に置いたとたん、歯車が動き出し、「ギッ、ギッ」と鈍い音を立てて秒針が動いた。もちろん赤子の泣き声ではない。針はすぐに止まり、それきりだった。


「巻かれてあったのが動いたんだね」と闇介。「最後の一声だったんだね、きっと」

 妙に感慨深く言ったが、譲葉は気づかず頭をかいた。

「やれやれ、やっぱり完全に外れだったな」

「霊気のかけらもないしね」


 クノッソスはとうに姿を消していた。悪霊を閉じ込めたビンを持って行ったが、譲葉への説明がめんどくさいからと、闇介が彼女の手柄にしてやったのである。だが実は、ほかにも理由があった。ビンの納品だのとうだうだやって、これからの楽しい時間に水を差されたくない。


「さあ、仕事終わりだから、遊びに行こうよ!」

 闇介が嬉しそうに言って手を引くと、譲葉はあきれと困惑の混じった顔で、

「おまえ、相棒が怪我してるのに、少しは心配とかなぁ」

「かすり傷以下じゃん。それに、つまずいて倒れた君の自業自得じゃないかなぁ?」

 意地の悪い笑みで言うので、観念した。

「わかったわかった、これから行こう」

「やったあ!」





 時計はそのままにし、地下室の入り口も元通り封印した。廃屋を出て、竹林の前に停めてある車に向かって歩き出しかけた闇介の足が、ふと止まった。


「……なんだ、どうした?」

 譲葉が聞くと、浴衣美少年は彼のほうを見ずに、ぽつりと言った。

「さっき一瞬、譲葉が死んだと思った」

「なにをバカな」と苦笑し、「俺が死んでも、おまえならどうせ、あの世まで追いかけてくるだろ?」

「まあね。

 でも、逆だったら、どう?」

 真顔で彼を向き、続ける。

「もし、ぼくが死んだとしても、譲葉がぼくを追うのは無理だよね? 普通の人間だし」


 すると譲葉は、いきなりしゃがんで彼の肩に腕をまわすと、微笑して言った。

「なに言ってんだ。普通だろうがなんだろうが、どんな手を使ってでも、おまえをこの世に連れ戻すよ。俺の人生に、お前がいなくてどうする。闇介あっての霧島譲葉だ」

 言われたとたんに体温が上がり、顔がかーっと赤くなった。


「なに、それ。なんか怖いよ?」

 横目で照れ隠しに言うと、男はさらににんまりした。

「闇介だって、そうとう怖いぞ?」

「お互いさま、ってことだね」

 言って彼も笑った。


 そうだ。

 マンションで初めて会ったあのときに、譲葉も自分と同じ、闇の隙間に落ちたのだ。今の彼は、ぼくを失わないためなら、きっとどんなことでもする。それが確たる証拠だ。

 確かにきっかけはぼくだが、ぼくのせいだと言えば、彼は否定するだろう。これは彼自身が選んだ道なんだと。

 そうだ。今や彼もぼくと同じ、闇の住人なのだ……。

 決して良いことではないとわかっていながら、そう思うと、胸がぽかぽかと幸せいっぱいになってしまう。




 闇介は彼から離れて、一歩ジャンプするとこっちを向き、両腕を広げて満面の笑みで言った。

「じゃあ怖いもの同志、二人で今から、華やかな浅草の街をビビらせに行こう! 平和ボケしたこのニッポンを、肝胆(かんたん)寒からしめに!」

「盗賊が荒らすんじゃないんだぞ?」 

「似たようなもんだよ」

 言って闇介が腕につかまると、譲葉は笑い、「そうだな」と青い空を見上げた。




 裏通りを行く二人の足取りは軽かった。二人には、この道が、このまま永遠に果てしなく続いていくように思われた。(「闇の隙間」終)

ネタが尽きましたので、ここで終わらせていただきます。ここまでお読みくださいまして、ありがとうございます。

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