29 第四章 ……最近、本当に思うんです。ずっと昔から思っていたことだけど、あなたに会えて、本当に良かったって、……本当に思うんです。
第四章
……最近、本当に思うんです。ずっと昔から思っていたことだけど、あなたに会えて、本当に良かったって、……本当に思うんです。
草子が自分が記憶喪失であるということを夕子ちゃんに話すと、夕子ちゃんはまた、腹を抱えて爆笑した。
「そんなに笑うことないでしょ!?」顔を真っ赤にしながら草子は言う。
「……ご、ごめん。ごめんなさい。でも、だって、……草子ちゃん。君、面白すぎるよ。ここがどこだかわからない。なんで自分がこんな場所に一人でいるのかもわからない。おまけに弱虫さんだし、ぼんやりさんだし、さっきまで全然笑わないし、さらに、『記憶喪失』なんだって。……本当に草子ちゃん。君は最高に面白いよ。……もう、ちょっと待ってよ。それ私のことからかっているわけじゃないんだよね? 本当のことなんだよね?」
と笑いながら、夕子ちゃんは言った。
「本当だよ。全部本当のことだよ!」と夕子ちゃんの背中を追いながら、森の中を歩いている草子は言う。
するとまた、夕子ちゃんは腹を抱えて爆笑した。
「ちょっと待って。『死ぬ。死んじゃう。……笑い死にしちゃう。……本当に死んじゃう』」
と笑いながら夕子ちゃんは言った。
顔を真っ赤にしたままの草子は、「もう! そんなに笑わないでよ。私は本当に困っているんだよ!」と力一杯、夕子ちゃんに文句を言った。
「ごめん。ごめんなさい。……でもさ、そんなことってある? ふふ。草子ちゃん。最高だね。君は本当にさ」と夕子ちゃんは言った。
そんな夕子ちゃんのことを見て、草子は(二人が初めて出会ったときのように、また)内心、すごくむっとした。(こんなに怒ったことは久しぶり、というくらいには怒っていた)




