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主役は僕(ワタシ)  作者: ティる
主役は僕(ワタシ) 1
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秘密2

その後は何度か挑戦するものの一度も魔術が展開されることはなかった。

同じように残りの属性も試したもののどれも展開されなかった。

「やっぱり私には魔術の才能なんかないのかな」

「そ、そんなこと…ないと思うけど…」

事実、魔力制御だけで見れば瑞樹をもしのぐほどの実力者なのだ。

それだけの魔力制御ができればコツさえ掴めればたやすく展開することが出来るだろう。

問題は彼女の魔力属性だった。こんな原始的な方法ではやはり無理がある。

やはり専用の測定器を使わなければ…

その時、入り口のドアが勢いよく開きそこから多くの生徒たちが入ってきた

「うぉ!?マジだ!!マジでいた!!」

「学園のトップ10(見た目ランキング)の二人がこんな間近に!!」

「きゃー、二人ともこっち向いてー!!」

一体どこからそんな情報が漏れていたのか、土曜日にも関わらず多くの生徒が端末を片手に迫ってきた。

「なに?一体どうなってるの?」

あまりにも突然の出来事に瑞姫も栞も戸惑っていると奥の方に学園の長、黒江の姿が見えた。

とりあえず黒江に向かって睨みつけると申し訳なさそうな顔をこちらに向け一つの魔術を展開した。

『すまなかった。どうもうちの学園の新聞部がいたらしく先の火球について聞かれてしまってな。うっかり喋ってしまった。頑張って逃げてくれ』

黒江の特殊魔術、テレパスによって脳内に直接語りかけられた二人。

瞬間、二人の考えは一致する。

おい、黒江(柊学園長)あとで覚えてろよ、と。

ひとまず二人はそれぞれ飛行魔術を展開。あっという間に浮かび上がりギャラリーにある窓の一つを栞が右手に持ったデバイスで魔力弾マジックバレットを展開させ割る。

悪いのは黒江なのだからこの程度のことは許されるだろう。

ひとまず外に出た二人は全速力で逃げ回ることにした。

「どこまで逃げましょう?この学園にいる間はみんな追ってきますよ」

「それなら学園外に逃げればいい!ひとまず校門まで飛んで校門を出たらすぐにまた飛ぼう!」

校則で飛行したまま校外に出ることは禁止されている。

そのため必ず校門を通らなければいけないのだが流石にそこに人が全くいないなんてことはなく10人ほどすでに待機していた。

そして先陣切って立っていたのは…

「待ってたぜ、瑞姫さんよ」

「綾人…くん」

瑞樹の親友の獅子原綾人だった。

「ふふふ、悪いね。ここは通すわけには行かないんだよ。『瑞姫、栞だいすきっ子クラブ会長』としてな!!」

—はい?

瑞姫は耳を疑った。

えっと、だいすきっ子クラブって…おニャン子クラブみたいな名前で言われても。

それと同時に寒気がする。

まさか自分のファンクラブが作られるなんて、しかも目の前にいる男子生徒が全員そうなのだとしたら…

そう考えるだけで気分が悪くなる。

「とりあえず写メ撮ろうぜ、今の内だぜこの二人のツーショット」

「馬鹿野郎、自分も映らないとダメじゃないか!!」

「サインとかって言ったらくれるだろうか」

栞はもう涙目。

男がただでさえ苦手なのだ。そんな彼女がこんな変た…変態に囲まれたら恐怖以外の何物でもない。

さらに後ろからは先ほどの生徒たちも迫ってくる。

流石に同じ学園の生徒に殺傷系の魔術を使うわけには行かない。

瑞姫は即座にそう判断し栞に近づき囁く。

「今から一瞬だけ彼らを無力化してそのうちに走り抜ける。栞は私の合図に合わせて走って」

栞が頷くのを確認しタイミングを計る。

(今だ!)

栞にそう伝えると同時に魔術を展開。

デパートで使ったのと同じ眩い光によって周りの者の視界を奪う。

今回は自分たちも巻き込んでしまうのである程度加減はしているがそれでも目を閉じなければ十分の威力だ。

あらかじめ見つけておいた隙間に向かって目を閉じたまま全力で走り抜けそのまま校門を通り過ぎる。

二人はその勢いのまま飛行魔術で一気に飛び去って行った。


「栞、大丈夫?」

瑞姫しか知らない山の山頂に飛んできた二人はそこで休息をとっていたのだが栞の顔色が優れない。

それもそうだろう、あれだけの人数の男が襲ってきたのだ。

男性恐怖症な栞にとっては地獄だっただろう。

「は…はぃ。大丈夫れす」

呂律も回らないほど疲弊している栞の背中をさすりながら思う。

瑞姫じぶんも男なんだけど…今はまだ黙っていよう―と。

「そ、そりぇにしても…鹿島せぇんぱいは…すごいです」

「へ?どうして…」

「あれだけの大人数の人が一度に来ても慌てることなく落ち着いて…魔術を使って突破していたから」

そこまで言われてから気が付く。

確かにあの時大勢の人の目があった。

普段なら間違いなくトラウマで魔術なんてうまく展開できないだろう。

だが実際はそんなことはなく無事逃げ切ることが出来ていた。

しかし今それを思い出すとやはり辛い思い出も蘇ってくる。

なんとかそれを表に出さないようにして返事をする

「ちょっと昔にいろいろあったからその経験が生きただけだよ」

「羨ましいです、鹿島先輩…」

「どうしてそう思うの?」

「それだけの強さを持っていることが羨ましいんです。私にもそれだけの強さがあったら…」

そう呟いて彼女はどこか遠くを見た。

それからしばらくただ風の流れる音を聞いていると再び栞が口を開く。

「鹿島先輩には…話してもいいかな。私の秘密…」

「栞がしゃべりたいと思うのなら黙って聞いててあげる」

「ありがとう、先輩」

そういうと彼女は語りだした。自らの過去を。どうして男性が恐怖の対象になったのかを…

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