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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~  作者: さとう
第五章 雷の国イスズ

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対面

 ソウジに案内され、トウマとアシェは屋敷の奥へ。

 畳張り、座布団が敷かれた部屋で、テーブルも立派な木造りだ。

 トウマは「ほぉ~」と感心し、ソウジに進められ座布団に座る。

 アシェも座るが、どこか落ち着かないようだった。


「どした、アシェ」

「落ち着かないのよ……椅子じゃないし、靴脱いで座るなんて部屋でもあまりしないから」

「ふーん。俺はこっちのが落ち着くけど」


 コソコソ喋っていたアシェだが、対面に座るソウジは「ははは」と笑った。


「イスズの文化だからね。外国人であるキミが大変なのも無理はないよ。ところで、ヴィンセントは元気にしているかい?」

「え、あ……はい、元気です」


 アシェは、ソウジが父ヴィンセントと同級生ということを忘れていた。

 そもそも、ソウジとヴィンセントは違いがありすぎる。


「ヴィンセントはオッサン顔だったけど、ソウジは若いなー、シロガネの兄貴でも通じそうだぞ」

「あのね、アタシの父親をオッサン顔とか言うな」

「お、おお。悪い悪い」


 ちなみに、アシェも似たようなことを考えたが声には出さなかった。そもそも出せない。

 アシェはソウジを見るが……やはり、相当な美形である。

 微笑みかけられ、思わず目を反らしてしまう。すると、襖が開いた。


「お茶をお持ちしました」

「ああ、ありがとう」

「お? なんだシロガネじゃん。着替えたのか」

「……おお」


 シロガネは、着物だった。

 アシェは思わず唸る。それくらい、シロガネの着物は似合っていた。

 薄い灰色の着物、長い髪をまとめ、簪で止めている。薄く化粧もしているのか、普段のシロガネとは全く違って見えた。

 シロガネは言う。


「自宅で部屋着に着替えるのは普通のことだろう」

「てかアンタ……すごい似合ってるわね」

「ふ、そうか。アシェ……興味があるなら着てみるか?」

「え!? あ、アタシも? いやいや、外国人のアタシが似合うわけないって」

「そんなことはない。町では、お土産用の着物も売っている。まあ、鎖国状態だから買う人は少ないがな……」

「ははは。シロガネにもいい友人ができたようで嬉しいよ。お嬢さん、よければ付き合ってあげてくれないかな?」

「え、えと……はい」

「おお、アシェの着物かあ。楽しみだな」

「う、うっさい。ああもう、わかったわよ!!」


 アシェは、シロガネと一緒に退室。

 トウマはお茶を啜り、茶菓子のヨウカンをもぐもぐ食べる。


「んで、話あるんだろ?」

「……さすがだね。トウマくん、でいいかな?」

「ああ。で、なんだ?」


 ヨウカンを完食し、お茶を啜って湯飲みを置くと、ソウジは言う。


「……ミドリ様に、鎖国を解除するよう進言してほしい」

「へ? そんだけ?」

「ああ。キミがここに呼ばれたのは、七曜月下討伐についてだ。イスズの鎖国については関係ない」

「そうなのか。で……なんで鎖国してるんだ?」


 食べたりないのか、トウマはソウジのヨウカンをジッと見る。

 ソウジは苦笑し、トウマにヨウカンの皿を渡す。トウマは「これ美味いよな」と言い、再び食べ始めた。


「鎖国は、ミドリ様の意向なんだ……七曜月下討伐も、イスズの戦力だけで行うつもりらしい。トウマくん、キミがここに呼ばれたのは、キミがハバキリ家の関係者だからだ」

「そうなのか? 七曜月下討伐すんのに、外に協力求めないんだな」

「ああ……もともと、ミドリ様は閉鎖的なお方でね。外国に対しいい感情を持っていない」

「ふーん。なんで?」

「わからない。こちらとしても、深く聞くことはできないんだ。この国の女皇に対し、真意を深堀するのは無礼に当たる。武士の教示というものだ」

「めんどくさいな」

「……何も言えないね」


 トウマはヨウカンを食べ終える。


「とりあえず、七曜月下討伐と、鎖国解除をお願いすればいいんだな」

「ああ。とりあえず、今日は酒宴を開くから楽しんでくれ。明日、女皇に謁見してもらう」

「おう。あ、酒よりメシ重視で!! 俺、めちゃくちゃ食うぞ」

「ははは、わかっているよ」


 トウマは、ソウジと何気ない話で盛り上がった。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 その日の夜、酒宴が開かれた。

 豪華な料理が並び、酒も並んだ。

 着物に着替えたアシェが登場。赤面している姿をトウマがからかい、頭にゲンコツを喰らったり、酒を飲んで酔ったり、芸者たちの演奏や踊りを見て笑ったりと……楽しい時間が過ぎた。

 あっという間に夜は更けた。

 部屋に戻ると、部屋に紙があった。


「『風呂湧いてます』か……行きますかねぇ」


 用意されていた着替えを手に風呂へ。

 風呂は温泉で、脱衣所で服を脱ぎ、手ぬぐい片手に洗い場へ。

 髪と身体をパパっと洗い、浴槽に浸かる。


「あぁぁぁ~~~……最高。自宅に温泉とか最高。シロガネ……うらやましい」


 空を見上げると、綺麗な星空……そして、満月が見えた。

 満月に向かって手を伸ばす。


「まだまだ遠いなあ……でも」


 必ず、斬る。

 トウマは伸ばした手を握りしめた。

 すると、脱衣所のドアが開く。


「お~、広いじゃん」

「我が家の自慢だ。遠慮するな」

「ありがと。ん~、最高かも」


 アシェ、シロガネだった。

 アシェは腰にタオルを巻いて上はそのまま、シロガネは片手にタオルを持ち一切隠していない。トウマはその姿を見て「おおー」と声を出す。

 すると、アシェが気付いた。


「え、あ、アンタ……なんで」

「いや、フツーに入ってたけど」

「うむ。部屋に『温泉どうぞ』と置いておいたからな。トウマ様、お背中お流しします」

「ん、頼むわ」

「ぎゃああああああ!! たた、立ち上がるなああああああああああ!!」


 アシェが顔を反らして蹲る。

 トウマは気にせず立ち上がり、そのまま椅子に座った。


「アシェ。我が家は混浴だ。混浴というのはイスズの文化だぞ」

「でで、でもでも、ううう」


 アシェは蹲ったまま、耳まで真っ赤になっていた。

 背中しか見えないが、トウマは気にしない。

 シロガネは、羞恥心ゼロでゴシゴシ背中を洗い始める。


「大きい背中ですね。父を思いだします」

「ははは、鍛えてるからな」

「そこ!! フツーにしてんな!! てかトウマこっち見んな!!」

「アシェ、いい加減に諦めろ。ほら、私と一緒に」

「ええええええ!? てか、ううう」


 アシェはゆっくりトウマの背中に近づき、スポンジを取る。

 普段なら怒鳴りつけるが、冷静さを失っているのかトウマの背中を洗い出す。


「ううう、なんでこんなこと」

「気持ちいいぞ。あ、次は俺が洗ってやるから」

「イヤ!!」


 身体を洗い、トウマは湯舟へ。

 アシェ、シロガネも身体を洗って湯舟へ……トウマと距離を取る。


「ったく……なんでアンタと風呂に」

「イスズの文化と言ったろう」

「はっはっは。俺は嬉しいけどな」

「……はあ、こっち見なきゃいいわよ」


 濁り湯なので、身体は見えない。

 アシェは湯舟を満喫しはじめたのか、顔をほころばせる。


「はぁぁ……戦いの前に、リラックスねぇ。ねえシロガネ、城下町で買い物とかしたいかも」

「もちろん、案内しよう。いい店はいくつもある」

「俺も俺も。楽しみだ~」


 三人は温泉で、観光について話すのだった。

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