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燎が世界を照らすとき  作者: コンパス定規
1章 『灯火』
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15話 『成長が早いのも一種の才能』

その後の約二週間、シレーヌさんとの特訓が続いた。

 僕は何か能力を使えるわけではないので、主に剣の使い方、モンスター雑学を中心に指導した。

 その中で彼女は剣技というよりは魔法の方に才があるように感じた。

 モンスターに対する恐怖がなくなってくるにつれて、その才を発揮していった。


「はぁぁぁぁあ!」


 シレーヌさんの身体が青く輝く。魔力が溜まっていっている証拠だ。

 魔法の発動条件は身体全体に流れている魔力を集中させること。

 この時に隙ができることは言うまでもないことであり、その間に待機してくるほどモンスターも優しくない。

 むしろ魔力が集中していく相手を警戒し、攻撃がより一層激しくなる。

 一流の戦士であれば戦いながらも魔力を集中させることができるが、それをなり立てのシレーヌさんに求めるのは間違いであろう。

 だからその間は僕が相手を引き付ける。

 シレーヌさんの身体の輝きが頂点に達する。


「カルナさん!いきますっ!」


 蓄積された魔力が引き付けていたモンスターに向けられる。


《アクア・ベネデッタ!》


 そう言い放たれると物凄い勢いで水が放たれる。

 いや、水というよりも何かの光線のようだった。

 相手にしていたハイウルフ三体を一度にすべて倒してしまった。


「何回見てもすごいな。普通よりも威力が数倍あると思うんだけど。」


 おそらく威力だけならDランクのモンスターでも倒せるだろう。まぁそれには別の問題があるんだけど…。


「ありがとうございます!それもこれもカルナさんが敵を引き付けてくれてるおかげです。」


 そう言いながらシレーヌさんは嬉しそうにしている。


「じゃあそのまま自衛の特訓をしようか。魔法はかなりいい感じだからあとは自分を守れるようになれば完璧だ。」

「分かりました!お願いします!」


 そう言い、僕とシレーヌさんは向かい合う。

 さっきまでモンスターを倒し、浮かれていた顔はそこにはなく、シレーヌさんは真剣な表情になっていた。


「じゃあ、いくよ!」


 そうして僕とシレーヌさんとの戦闘が始まる。

 自衛の特訓は一対一の模擬戦。もちろん魔法の使用はなし。

 特訓を始めたばかりの頃は僕に一撃も与えられなかったシレーヌさんであったが、今では僕と同じくらい戦えている。

 それどころか力、速度は僕を凌駕していた。

 神様に能力を授かっているのだから当たり前と言えば当たり前かもしれないが、その力は強大であるためになかなか使いこなせないというのを聞いたことがある。

 おそらく彼女のその感覚のずれが徐々に直ってきたのだろう。

 一回、一回、戦うたびに動きにキレが増していく。

 カンッ、カンッと剣と剣がぶつかり合う音がする。その音だけで両者の実力が均衡していることが分かった。

 まだ負けられない!

 そう強く心の中で叫ぶ。僕は彼女の師であるのだ。

 僕も同じように師匠と何度も対戦し、その度にボコボコにされた。

 そして、最後の最後まで勝つことができなかった。

 その悔しさとその時の師匠の背中は今でも鮮明に覚えている。

 その記憶が僕を強くしてくれている。

 そうであるならば、僕も彼女に示さなければならない。

その強さを。

 その悔しさを。

 彼女の指標となる姿を。

 だから負けるわけにはいかない。格上との戦いなら何度も経験してきた。

 能力を授かっている彼女は身体能力が飛躍的に向上されており、いくら魔法を使わないといっても個体値だけなら彼女の方が格上であることには変わりなかった。

 そのうえで僕が彼女に勝っているもの。

 剣技と経験。

 師匠に鍛え上げられた剣技と、幾度となく殺されかけた経験を駆使して彼女と戦う。


「はぁぁぁぁぁあ!」


 彼女の動きはモンスターとの戦いで癖は掴んでいる。

 それを瞬時に見極め、動きを先読みする。

 しかし、なかなか攻撃が決まらない。

 まさか、シレーヌさんも僕の動きを予測している?

 シレーヌさんにはモンスターの動きを観察し、次の攻撃を予想するようには伝えた。

 だが、そんなに早くできるようになるほど簡単ではない。

 そうか、身体能力が上がるということは、目の良さ、反射神経も上がるのか…!


「くっ!」


 厳しい戦いが続く。

 おしているのは僕の方。それでも攻めきれない。

 互いの間が一定になり、両者が向き合う。二人とも真剣な表情だ。

 戦いの中で訪れる間。互いが、互いの動きを予測することで出来る間。

 両者は互いの様子をうかがっている。

 こうなったら、やるしかない…!

 短剣を持ち直し、深く息を吸う。

 先に動き出したのは僕。勢いよく走り出す。

 それを予測していたようにシレーヌさんも守りの態勢に入る。

 そして、攻撃を受け流す。

 しかし、僕の攻撃はここでは終わらなかった。

 一回目の攻撃の後も剣速が落ちることなく二回目、三回目の攻撃が繰り出される。

 守られては、攻撃、守られては攻撃の繰り返し。

そして繰り返すほどにその速度は増していった。


『連撃』


 能力に頼ることが出来ない僕が出せる技。

 攻撃後に反転を繰り返すことによって次の攻撃にそのままつなげる技。

 これによりシレーヌさんの動きが崩れ始める。

 相手に予測され、攻撃が通らないのなら、相手の予測を上回ればいい。

 一気に畳みかける。

 その後は一度崩れた動きをシレーヌさんが立て直すことが出来ず、あっさりと勝敗が決まった。


「ま、まいりました…。」


 シレーヌさんがうなだれる。

 なんとか勝利。でも本当にギリギリだった。次やったら負けるかもしれない。


「いい勝負でしたね。」


 シレーヌさんに手を差し出し、起き上がらせる。


「今回は行けると思ったのに…。」


 シレーヌさんは心底悔しそうにしている。


「まだまだ、負けられませんよ。」


 そういい、今日の修行は終了した。




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