第65話 だからオレは大魔術師なんだって
お久しぶりです…
<65話>
やあ、オレの名前はANDREW!
芋焼酎はお湯割りがジャスティスなほう、アンドリューです!
香りが苦手って人もよく見るんだけどね。
オレはあの香りが大好きなんだぜ。
ビールみたいにゴクゴク飲めるのもいいけど、ちびちびやるのも好きだぜ?
さて、日本酒の魔力により偉い爺さんたちを籠絡したあと。
「しかし、酒も美味いがこの料理も美味いのう!!」
「本当にのう。今まで生きてきて、こんな料理は食ったことも見たこともないわい」
シンプルだが綺麗な揃いの器に盛りつけられたソラの料理の数々。
正直言って、この世界の料理の水準は低い。
低いんだ。
大事なことなので二度言いました。
その世界に、居酒屋メニュー風とはいえ、現代日本の技術をソラが再現しているのだ。まずい訳がない。
「この『ザンギ』か。こんな美味い鶏肉料理は食ったことがないわい」
「うむ。酒によく合うのう」
「お前はさっきからそればっかりじゃ」
「なんじゃな、くるくる回って飛び上がった挙げ句に地面に頭を叩きつけそうな名前じゃのう」
吸い込むんかい。
「酒に美味いつまみ。幸せの極地ではないか?」
「それには賛成じゃ」
ただの飲兵衛爺さんじゃねえか、お前ら。
「この料理は誰が作っておるのよ?」
「おお、それは気になっておった。ワシが召し抱えてやっても・・・」
「抜け駆けはゆるさんぞ?」
「お前らにはやんねーよ、爺さんたち」
誰がやるか。
「なんじゃとう?」
「いずれここで披露した料理は、アーレイン王国のスタンダードになるさ。それまで我慢しろって言ってんだよ」
「なんじゃ、お主のお抱え料理人なのか?」
「そういうわけじゃねえよ。事情ってもんがあんだよ」
この世界の人間じゃねえのに、就職なんかさせられるかよ。
まあ、今回はインパクトさえ十分ならいいんだ。
あとはこうした料理が広まるのを待つだけでいい。
そうか、ソラの弟子的な奴らを育成して、そいつらを各領地に派遣すりゃいいのか。
我ながら名案だぜ。
こっちで調理師専門学校みたいのをソラに作らせるか。
「姿くらい見せてくれても良かろうよ」
「あー、それくらいならいけるかもな。後で聞いてみるよ」
ソラも別に極度の恥ずかしがり屋ってわけでもねえしな。
見た目はいいんだから。
エルフ並にどっかがちょっと不自由なだけで・・・。
「ふむ。まあ、待つのには慣れておるよ」
「そうじゃな。ワシらが死ぬ前にそうなってくれれば良しとするかのう」
お前らがくたばるのはあと20年は先に思えるんだけどな!?
「なに、せいぜいがあと1,2年だ。楽しみに待っててくれ。ついでに、今回の事業について後押し頼むわ」
「よかろうよ。アーレイン王国がさらなる発展を遂げるのであれば文句はないわい」
「うむ。少なくとも隣国より生活に潤いが持てるようになるじゃろうて」
食生活の改善は生活レベルを押し上げるからな。
ましてや美味いものだけじゃなく、米や芋類、豆を持ち込んだから収量や品質も一気に上がってくれるだろうし。
隣国なんて今だって追いついてねえかもしれねえのに、更に差が開くわ。
「それは請け負うぜ」
「お主がそう言うんじゃから大丈夫なんじゃろうがのう」
なんせオレは大魔術師だからな!
「ただ、オレも忙しいんでな。オレがいないときは【迷宮】のゴルドに任せてあるから、ロバートを通じて連絡してくれ」
「そのゴルドというのは何者だ?」
「【迷宮】の管理人だ。吸血鬼の王だよ」
爺さんたちが一様に押し黙ってしまう。
むう、あまりにも有名な名前にびびっちまったのか?
大魔術師であるオレがそのへんの不死者や魔神ごときに劣るわけねえのになあ。
あ、別にゴルドをディスったわけじゃねえから誤解すんなよ?
「お主はほんに規格外なのじゃなあ・・・」
「褒めてもなにも出ねえぞ。酒ぐらいだな」
「それでええわい」
まだまだ宴会は続くようだ。
さて、その頃。
「はい、炒め物あがったわよ」
「ソラ様、こちらの揚げ物も出来ましたわ!」
「ソラ様、仕上げのあんかけお願いします!」
調理服を着たソラが厨房で忙しく動き回っている。
アシスタントの夢魔やエルフ、獣人たちも皆忙しそうだ。
簡単な調理や下ごしらえなら任せることもできるが、料理によってはソラが仕上げとチェックをしなくてはいけないものもあるのだ。
こんな事なら大量に冷凍食品を買い込んでくるようにトラに言っておくんだった・・・とソラは後悔していた。
ちなみに電子レンジは魔法によって再現が可能である。
とは言え、全てをチンして済ませるのもソラとしては許しがたい部分があるのは、料理をする者としては当然の考えであろう。
「まだ食べるのかしらね?」
「宴会は一向に終わる気配を見せませんが・・・」
アシスタントのエルフ娘が申し訳なさそうな顔で頭を下げる。
別に彼女のせいではないのに。
「宴会料理はまた別の技術なんだけどねえ・・・」
額の汗を拭うと、次の鍋に取りかかるソラ。
「これは本気でアシスタントというか、料理人をこっちの世界で育成する必要があるわね・・・」
奇しくもトラと同じようなことを考えていたソラであった。
後にアーレイン王国のみならず、こちらの世界中にソラ調理師専門学校が出来上がることになるのだが、それはまた別のお話である。
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