第47話 大事なことです
皆様、いろいろ思うところはおありかと思いますが、生温かく見守っていただければ幸いですm(_ _)m
<第47話>
やあ、オレの名前はANDREW!
スニーカーならアディダスが好きなほう、アンドリューです!
デザインとかもあるけど、足の形に合うかどうかが一番重要だと思うんだ。
服なんかもそうだよな。
「さて、そろそろ終わった頃合いかな」
「かもしれないわね。もう夕方だし」
徐々に日が長くなってきているとはいえ、まだ北国の日暮れは早い。
すでに辺りは暗くなり始めていた。
ソラにだっこされたまま階段を上ってアンバーに戻ると、サキが相変わらずのにやにやとした笑いを張り付かせてカウンターのスツールに腰掛けていた。
「お帰り、トラちゃん」
「おう。その顔は、上手くいったのかい?」
「それは見てのお楽しみね」
どうやら、人化の秘法を習得するのには成功したようだ。
やるな、浅黄。
「浅黄ちゃん、いらっしゃい」
サキに声をかけられて、浅黄がしずしずとカウンターの裏から現れる。
心なしか得意げな顔だ。
「私の特訓の成果をとくとご覧あれ!」
そう言って浅黄は精神を集中し始めた。
何やら魔力的なモノが浅黄に集まっていくのが見て取れる。
ふむ。
妖怪だとか妖術だとか色々言われるモノは、やっぱり魔力を扱う現象なんだな。それならばこの世界に数多く残る伝承や神話の類も頷けるってもんだ。
「きゃっ!!」
思わず驚きの声を上げるソラ。
然もありなん。
微かに音を立て、煙に包まれた浅黄が人型に変身していたのだから。
「ま、まだ完璧にマスターしたわけではありませんのよ」
そう言って頬を赤らめる浅黄。
「か、可愛いわ、浅黄ちゃん!!」
ソラは大興奮だ。
輝く青みがかった銀髪。
真っ白い雪のような肌に美しいブルーアイ。
当然の如く両サイドに流れる縦ロール。
身長150cmほどのスラリと引き締まった体躯。
何故か衣裳はフリルたっぷりのパフスリーブワンピース。
うむ、ロシアンブルー的な高貴さを上手く表現していると言えよう。
やや幼い感じはするが、100人に聞けば99人は可愛いというだろうな。
では、どこが完璧では無いのか?
「猫耳美少女キター!!!」
「頭悪そうな発言だな、オイ」
サキが叫んだ通り、頭から生えた猫耳、そして腰から伸びた尻尾が完璧では無い部分なのだろう。
完全に変身しきるほどには習熟出来なかったと言うことか。
「これはこれでアリじゃないかしら?」
「そうでしょう!」
ソラの言う通り、これくらいなら誤魔化しはきくだろう。
明らかに日本人ではない容姿と相まって、コスプレ好きのヨーロッパ系美少女にみえるしな。
大地ならきっと放っておくまい。
今頃執拗にカメラのシャッターを切っていることだろう。
オレはそんなことしないけどな。
「浅黄ちゃん、ちょっと一枚いいかしら?」
「ソラ・・・」
「ソラ様でしたら構いませんけど・・・」
ソラがスマホを取り出してぱちりと。やはり大地の妹か。
浅黄もさりげなくポーズを取ったりしている。
「ふむ。確かに可愛いこと『は』認めよう」
「でしょう。完全に変身しきってはいませんが、かなり自信ありですわ」
ふふんと得意げに胸を反らす浅黄。
そこなんだよな・・・。
「ところで、トラさん。可愛いこと『は』とおっしゃいましたね?」
「ああ。ちょっとばかり残念でな」
「何がですの?」
さて、ストレートに言ってしまっていいものか。
いや、隠すようなことでもあるまい。
「もうちょっと、こう、胸と尻が無いとなあ・・・」
「・・・何ですって?」
浅黄の台詞に何か名状しがたいモノが乗っている。
あれ、地雷踏んだ?
「もう一度言っていただけますかしら?」
「いやな、オレはどっちかって言うと、ボンキュッボンとしたセクシー系のほうが好み・・・って、うわ、やめろ、何をする!?」
「そ、そのような不埒な発言は許せませんわ! 見損ないましてよ!」
「いや、見損なったって言われてもな!?」
ヤバイ、迂闊な発言だった。
「有罪」
「有罪」
ソラとサキが揃ってジト目で見る。
「いやー、ここでその発言はないよ、トラちゃん」
「男としてどうなの、それ」
「オレの偽らざる気持ちだ。後悔はしていない」
「開き直ったよ」
「そ、そこまでおっしゃるのでしたら、トラさんも人間になって下さいまし!」
「おう。いいだろう」
オレも人間変身する。
「どうだ?」
「おお、トラちゃん、実はナイスミドルなんだね。エキゾチックでいいじゃないか」
「だろ。大人の魅力ってヤツよ」
「普通自分で言わないでしょ、トラ・・・」
ソラに呆れた目で見られた。
「そ、そんな・・・」
浅黄が何かを呟きながら一歩後ずさる。
「どうした、浅黄?」
「トラさんが・・・まさか・・・」
そこで浅黄は一度言葉を切り、爆弾を投下した。
「オジサンだったなんて!!」
「ああ!?」
「詐欺ですわ! 私より年下の頼れる体育会系男子かと思っていましたのに。そんな優男風のおじさんだったなんて! 私の純情返して下さいまし!!」
「おっさんおっさん連呼すんな。それに何だよ、その『年下の頼れる体育会系男子』ってのは。まさか年下趣味か?」
「オスは若い方がいいに決まってますわよね!?」
そういってソラとサキを見る浅黄だったが、二人は「人によるわよね」と顔を見合わせて苦笑するばかり。
まあ、なんだ。
要するに、
「お互い好みじゃなかったってことだな」
「ですわね」
まさかホントに「好みじゃない」って結論になるとは・・・。
いくらコメディタグでもそれってどうよ!? (←メタ発言
「まあ、何だ。今回はお互いの性格不一致ってことでいいのかしらね?」
「そうなりますわね」
「そうなるな」
サキが可笑しそうに笑っている。
「せっかく必死で覚えた人化の秘法も無駄になってしまったかしら。とはいえ、今さら全てを無かったことにしてしまうのもいささか勿体ないわよね」
「そうですわ。せっかく学んだものを無駄にしてしまうのは勿体ないですわ」
「でしょう。というわけで、浅黄君もトラも、とりあえずはウチの互助会に入ってくれたまえよ。浅黄君がもっとグラマーに成長する可能性もゼロではないでしょう?」
そりゃそうかもしれねえが。
何だか今さらそういう風にも思えなくなっちまったんだが。
「互助会?」
「うん、その辺は後から説明してあげましょう。特に人化可能になった浅黄君には必要な話になるでしょうからね」
「オレはもうその予定だから別に構わんけどな」
約束だしな。
「ああ、そうだった。これをトラには渡しておかなくてはね」
そう言ってサキが取り出したのは、住民票と運転免許証、帯広信金の通帳とキャッシュカード、そして最新式のスマホだった。
「住所は私たちが所有している実際の建物を登録してあるから問題ないわ。免許もね。
スマホの支払いはその口座から引き落としにしてあるから、後で必要なだけ入金しておいてちょうだい。印鑑はなくさないでね。『安藤虎吉』であってるわよね?」
「ああ、合ってる。大丈夫だ」
どれも本物だ。
これでオレも人間として活動することも出来るようになった訳だ。
ううむ、互助会あなどれんな。
「さて、不幸なすれ違いもあったけど、私としてはウチの互助会に二人も新人さんを迎えることが出来てラッキーだわ。これからも仲良くしましょうね?」
そう言ってニコニコと笑うサキ。
オレは曖昧に微笑むしかなかった。
「で、結局、トラと浅黄ちゃんは破局って事でいいのね?」
ソラの台詞に思わず顔を見合わせるオレと浅黄。
「そうなるかな」
「そうなりますわね」
「ま、猫のお見合いなんてそんなもんよねー」
そう言って苦笑するソラ。
ま、性格の不一致ってことで。
お読みいただきありがとうございました。
良ければ各種ポチッとしていただければ幸いです。




