変わる環境
「そういえば、お前たちこれから宿を決めるんだろ? またホテルに泊まるか?」
話が一段落して、ギルドマスターに尋ねられた。
今まで泊まっていたホテルは、討伐依頼に向かうときにチェックアウトしているんだ。
「レスタール王国は、冒険者ギルドからの突き上げや国際会議の準備に追われてると思う。
ここでトーマに手を出すのは、よっぽどの馬鹿だ」
そうだよな。もう、俺の身柄さえ押さえておけば誤魔化せるとか、そんな段階じゃない。
「フォンの妖精の国の話だが、こっちの問い合わせに対して動きが鈍い。だから国家的に捕縛命令が出ているとか、そういう雰囲気じゃない気がする。
チンピラを寄越したのが一個人なら、次々と追っ手を出せる資金力はないんじゃないかと思うんだよ」
ギルドマスターは、あくまで推測だがと付け加えた。
「資金力があるなら、もっとまともな冒険者を選ぶだろう」
ルナが別方面から指摘する。
「違ぇねぇ。他国でわざわざもめ事を起こして、とっ捕まってたら世話ぁねぇやな」
ギルドマスターが豪快に笑った。
「危険がないなら、いつもの宿屋がいいにゃ」
サァラがすこしモジモジしながら、希望を出した。
「サービスが行き届いてるってことは、観察されてるってことでしょ。気配がまとわりついて、うっとうしいにゃ」
今まで口にしなかったが、そういう点が気になっていたのか。
「ただ、冒険者街だと外部の奴らも出入りするからなぁ。
警戒レベルを下げてもいいとは思うんだが、攫われたりするのは勘弁して欲しいし」
ギルドマスターが腕を組んで考え込む。
「冒険者街だと、トラブルに見せかけて怪我をさせることも容易ですからね」
フォンもいい案が浮かばない様子だ。
「怪我」という言い方をしたが、はっきり言うなら「死人に口なし」を狙う連中がいてもおかしくないってこと。
「ここの職人街は、どこにあります?」
俺はこの街に来てから、ずっと冒険者のエリアで活動していた。「花猫風月」のメンバーと行動を共にしていたからな。
だが、以前の「鮮血の深淵」に所属していたときは、メンバーとは別行動で職人街に宿を取っていた。
「職人街にも短期貸しの宿がありますし、見慣れない人間がいると目立つんですよ」
出入りするのは職人と商人くらい。
たまに冒険者が来るから、閉鎖的とまではいかない。俺には、丁度いい距離感だった。
「なるほどな。それもいいかもしれん。
職人ギルドに、気の利いた宿を紹介させる。
警戒措置として出してた宿代の補助は、ここで打ち切るが構わないな?」
ギルドマスターの言葉に、職員が俺たちの反応を真剣に見ている。
ああ、ホテル代が結構かさんでるよな。俺の件が一段落しそうなところでフォンの件が出てきて、延泊してたから。
「それでいいよな?」
ルナに訊かれて、俺たちは了承した。
「んじゃ、しばらく冒険者ギルド内にいてくれ。
宿が決まったら呼び出すから」
そう言われて、俺たちはギルドマスターの部屋を出た。




