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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十六章 ハーレムの行方

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番外編 再会、そして再スタート

 フォンは一度王都に戻ってから、サァラの家を訪ねた。

 ちょうど井戸に水を汲みに来ていたルナを見つけられたのは、運が良かった。


「……フォン」

 ルナは桶を足元に置いて、フォンに駆け寄った。

「フォン。戻って来たんだね」

 ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。

 密かにビキニアーマーの硬さに閉口しつつ、ルナを抱きしめ返した。


 肉親よりもずっと情を感じるのは、なぜだろう。

 ともかく、自分は人の心がなくなったのか――という不安が消えていった。


「まあ、ずいぶんとお腹が大きくなったのね」

 サァラがお腹をさすりながら出迎えてくれた。


「よくここがわかったね」

 サァラはフォンに椅子を勧め。自分も「よっこいしょ」と座った。


「途中まで人に道を訊いて、その後は風魔法で人のいる方角を調べたの」


 ルナがお湯を沸かし、薬草茶の準備を始めた。

「私も手伝うことあるかしら?」

「とりあえず今日はお客さんだから、座ってていいよ」

 ルナはそう言って、かまどに薪をくべた。


「フォンは相変わらず気遣い屋さんで、優しいにゃ」

 サァラは、瓶から木の実を皿に出した。


「私、前ほど優しくないわよ」

 フォンは少しだけ後ろめたい気持ちで、そう口にした。彼女たちが知っているフォンとは、ある意味、別人なのだ。


「……しゃべり方がソフトなだけで、きつい性格なのは知ってるけど」

 ルナがそう言った。

「クールぶってるけど、意外と正義感強いのもにゃ」

 サァラが笑い飛ばす。


「でも、前の私は……もっと空気を読んで、間を取り持っていた記憶があるわ。人の和を大切にするというか……」

 フォンが何かを思い出しながら、言う。


 ルナは、薬草茶を三つのカップに注ぎ分けた。

「そうだったね。フォンがいてくれれば――って思うことはよくあったよ。ね?」


 ルナは椅子に座りながら、サァラに同意を求めた。

「あった、あった。

 でも、フォンのは優しさ半分、あとの半分は面倒くさいから喧嘩を早く終わらせたい――みたいな感じもあるじゃん?」

 サァラが、からかうようにフォンの顔をのぞき込んだ。


「……そうだったかしら」

「少なくとも、私はそう思ってたにゃ」

「そ、そう……?」

 あっけらかんと言われ、フォンは戸惑った。


「――あの、子どもの父親は何て言っているの? 結婚は?」

 フォンはここに留まるか、何泊かして帰るか迷っていた。その父親が同居しているかは大きな問題だ。


「結婚はしな~い。けど、子育ては手伝わせるにゃ」

「そうなの?」

 先ほどから驚いてばかりだ。


「ねー、びっくりしちゃうよね。人族だったら、責任取って結婚しろって言うところだけど」

 そう言ってから、ルナは薬草茶を飲んだ。


「そう? 子どもの世話はいいけど、夫の世話とか面倒くさくない?」

「あ、そういう……?」

 サァラの発言に、フォンは目から鱗が落ちるような気持ちになった。


「どうせ、子育ての当事者意識が薄くて、お手伝い感覚だろうからさ。

 既婚者の話を聞いていて、そう思ったんにゃ。初めから期待しなければ、イライラしないで済む」

 サァラは堂々と言い切った。


 フォンは、トーマとの関係をどうするのかも、迷っていた。

 フォンはときどき「風の魔法使いの集い」の名目で、宗教団体の妖精族たちに呼びつけられていた。

 そこで洗脳の重ね掛けをされ、性的な奉仕をさせられていた。


 思い出すと嫌悪感に襲われ、冷たい泉に飛び込んで全身を洗いたくなる。


 何かをうやむやにしようとするときに、身体を使うという行動パターンが植え付けられていた。

 それを自覚したときの、(おぞ)ましさといったら――


 いわゆるハーレム状態だった私たち。

 今後の関係性をどう再構築していくか。この機会に解散するか。

 ここに来るまでの道中で、様々なことを考えた。


 両親の墓参りが再スタートの象徴だったように、この二人との関係が今後の人生の方向性を決めると思っていた。

 だから、覚悟を決めて、訪ねてきたのだけれど……。


 あっけらかんとしているサァラ。

 戸惑いながらも、優しく寄り添うルナ。


 過去の距離感とは関係なく、今、ここにいるのが心地いい。

 あまり、難しく考えなくてもいいのかもしれない。



 フォンが山小屋の暮らしに加わってから数日後、サァラの子どもの父親が顔を出した。

「お、色とりどりの美人が揃ってるじゃん。

 良かったら、お相手しようか?

 つーか、俺、ハーレムの王様になれる?」


 ああ、こういう人は論外だ。

 トーマだから許された。


「馬鹿言ってないで、水汲んできてよ」

 サァラは、彼を単なる労働力として扱うつもりらしい。


 フォンは、出産時に立派な戦力となれるよう、「梟のばあちゃん」に教えを請おうと決意した。


300話目です。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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