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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十五章 王都の冒険者

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帰宅

 馬車がクランハウスに到着した。ロビーに人が集まって、賑やかだ。

 俺たちを出迎えるためかと一瞬思ったが、違った。


 サァラたちが戻ってきたんだ。

 鳥の獣人たちが体をほぐしているのが、群がる人たちの頭の上から見えていた。サァラは背が低いため、姿が見えない。


「あ、バスラさんたちもお帰りなさい」

 人混みの中から、声が上がる。

「おう、穏便に話をつけてきたぜ」

 バスラがニカッと笑った。「本当かよ」と混ぜっ返す声もする。


「そっちの首尾はどうだ?」

 バスラは旅から帰ってきた人たちに話しかけた。

「概ね順調に」

 代表格の鳥獣人が答える。

「急ぎがないなら、一休みしてから報告を聞く」

「急ぎはありません」

「それは重畳。じゃあ、夕飯の後に」

 とても短い、手慣れたやり取りだ。


 一人二人と散っていき、サァラの姿が見えた。うつむき加減で、元気がない。

「サァラ、お帰り」

 腰をかがめて、サァラの顔色を確認するようにのぞき込む。


「――うん。ただいま」

 飛びつかれてハグされる様子もない。旅の間に何があったんだ?

 ルナの顔を見たら、「よくわからない」と手のひらを上に向けている。


 サァラはそそくさと部屋に戻ってしまった。熱烈なハグに応えようと思っていたのに、なんか寂しいぞ。

 サァラを見送っていると、背中からオンが抱きついてきた。

「サァラに何かあったのか?」

 首だけ振り向く形で、オンを見る。

「あたしの心配より、そっちですか?」

「あ、ごめん。オンは元気そうだな」

 オンは目を細め、歯を見せて笑った。



 食後の話し合いにサァラは来なかった。

「疲れ果てて、寝ちゃってる。道案内しただけだから自分がいなくても問題ないだろうって」

 ルナがそう説明した。

「あとでサァラの具合を見に行っていいか?」

 空の旅は想像以上に過酷だったのかもしれない。

「女子部屋だし、他の子がいるからちょっと……。あたしがしっかり見ておくからさ」

「そっか。じゃあ、頼んだ」

 寝入ってなければ、ルナにマッサージしてもらうといいと思うんだけど……それを言ったら口出ししすぎか。


 そんな会話をしていたら、バスラが会議室に入ってきた。



「岩モグラの体内時計に干渉してきました。動く速さが半分に落ちるので、この後三日から四日ほど猶予ができました。短かったですか?」

 オンがそう言って、バスラを見た。

「思ったよりは時間の余裕がないが、のんびりしていて国から横槍が入ってもな。備える時間があるだけ、ありがたい。

 もしかしたら、岩モグラを討伐するか、テイムしてくるかと思ったが?」

 バスラが挑発するように尋ねた。


「危険を回避するのではなく、宗教団体と戦う準備をするのが目的ですよね?」

 オンが人差し指を頬に当てる。

「ああ、わかってきたじゃないか」

「日々、学んでいますので」

 オンが嬉しそうに胸を張って答えた。


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