帰宅
馬車がクランハウスに到着した。ロビーに人が集まって、賑やかだ。
俺たちを出迎えるためかと一瞬思ったが、違った。
サァラたちが戻ってきたんだ。
鳥の獣人たちが体をほぐしているのが、群がる人たちの頭の上から見えていた。サァラは背が低いため、姿が見えない。
「あ、バスラさんたちもお帰りなさい」
人混みの中から、声が上がる。
「おう、穏便に話をつけてきたぜ」
バスラがニカッと笑った。「本当かよ」と混ぜっ返す声もする。
「そっちの首尾はどうだ?」
バスラは旅から帰ってきた人たちに話しかけた。
「概ね順調に」
代表格の鳥獣人が答える。
「急ぎがないなら、一休みしてから報告を聞く」
「急ぎはありません」
「それは重畳。じゃあ、夕飯の後に」
とても短い、手慣れたやり取りだ。
一人二人と散っていき、サァラの姿が見えた。うつむき加減で、元気がない。
「サァラ、お帰り」
腰をかがめて、サァラの顔色を確認するようにのぞき込む。
「――うん。ただいま」
飛びつかれてハグされる様子もない。旅の間に何があったんだ?
ルナの顔を見たら、「よくわからない」と手のひらを上に向けている。
サァラはそそくさと部屋に戻ってしまった。熱烈なハグに応えようと思っていたのに、なんか寂しいぞ。
サァラを見送っていると、背中からオンが抱きついてきた。
「サァラに何かあったのか?」
首だけ振り向く形で、オンを見る。
「あたしの心配より、そっちですか?」
「あ、ごめん。オンは元気そうだな」
オンは目を細め、歯を見せて笑った。
食後の話し合いにサァラは来なかった。
「疲れ果てて、寝ちゃってる。道案内しただけだから自分がいなくても問題ないだろうって」
ルナがそう説明した。
「あとでサァラの具合を見に行っていいか?」
空の旅は想像以上に過酷だったのかもしれない。
「女子部屋だし、他の子がいるからちょっと……。あたしがしっかり見ておくからさ」
「そっか。じゃあ、頼んだ」
寝入ってなければ、ルナにマッサージしてもらうといいと思うんだけど……それを言ったら口出ししすぎか。
そんな会話をしていたら、バスラが会議室に入ってきた。
「岩モグラの体内時計に干渉してきました。動く速さが半分に落ちるので、この後三日から四日ほど猶予ができました。短かったですか?」
オンがそう言って、バスラを見た。
「思ったよりは時間の余裕がないが、のんびりしていて国から横槍が入ってもな。備える時間があるだけ、ありがたい。
もしかしたら、岩モグラを討伐するか、テイムしてくるかと思ったが?」
バスラが挑発するように尋ねた。
「危険を回避するのではなく、宗教団体と戦う準備をするのが目的ですよね?」
オンが人差し指を頬に当てる。
「ああ、わかってきたじゃないか」
「日々、学んでいますので」
オンが嬉しそうに胸を張って答えた。




